正月
今回はちょっとすいせいの暗い部分が明るくなるイメージで作りました。多分こう言う人多いと思います。自分では別に傷ついてると思ってなくてもいつ間にか傷ついてて何かの拍子に崩れてしまう人。まあうまく表現できてるかは知りませんが。
正月
「あ!ソリットくん」
「明けましておめでとうございます」
ソリットくんが私の世界にきた。
「そんなに堅くなくても良いんじゃない?」
「一応やっておくべきかなって。あと最近日付が出るようになったから」
「最近流行りの設定変更?」
「まああった方がこっち側としては何かと楽だし」
「それ管理してる側も便利なやつじゃない?」
「それはそうだと思う」
そこ否定しないんだ…
「今日は何しに来たの?」
「一緒に…その、おせち作ったから食べない?」
珍しくソリットくんが恥ずかしがりながら言う。
「おせち作ったの?すごいじゃん!」
「やった。褒めてもらった」
やっぱり可愛い…
「あ!ソリット、すいせいちゃん!ちょうど良い」
その時ルナお姉ちゃんが来た。
「何?ルナお姉ちゃん。どうしたの?」
「娘2人も引き連れてるし」
「2人とも遊びたいって言ってるんだけど私たち全員予定があって」
「なるほどね。わかった!私たちに任せて」
「ありがとー!助かる!」
そう言ってルナお姉ちゃんは帰った。
「さて、ルナはどういう状態でこっちに置いてきたのか」
「お腹すいた!」
「ゼールも」
「じゃあおせち食べようか」
「おせち?」
「おせち」
「おせち…」
「まあ見た方が早いかも」
そう言ってソリットくんは箱を出した。
「何これ!華やか!」
「知らない料理がいっぱい」
箱の中には9枠のマス目があり真ん中が空いていて周りの8マスにおせちが入っていた。
「真ん中は開けたんだね」
「昨日超特急で作ったから9品も思い浮かばなかった」
「1日で作ったんだ…」
「早く食べよ!」
「その前に…」
「その前に?」
「お雑煮作ろ」
「オゾウニ…」
「僕やすいせいが居た国のスープにお餅っていう食べ物を入れた料理だよ」
野菜とかを言わないところその家のスタイルが出てきてるな…
「まあ百聞は一見どころか一作業にしかず。作ってみようか。エプロン用意して」
「はーい!」
「わかった」
「OK」
「うん…」
ソリットくんがこっちを見ている。
…なんか恥ずかしい。
「よし、じゃあ早速作っていこうか」
そう言ってソリットくんは材料を取り出した。
「にんじん、玉ねぎ、ネギ、お餅、鰹節、味噌。毎回思うけどその食材たちってどこから出てくるの?」
「僕の魔力食料生産所から何でも出てくるから」
「すごい…」
「いいなー…」
「みんなにも機会があったら食材渡すね」
「やった!」
「ありがとう、ソリットくん」
「じゃあメナー、ゼール。そこのお鍋の中の水がグツグツ!ってなったらこの鰹節を入れて」
「うん、わかった…」
「じゃあその間に僕とすいせいは野菜を切ろうか」
「わかった」
トン トトン トン
あたりに2つの包丁の音が響き渡る。誰も喋らずに黙々と自分のことをやっていて…なんか静かだとソリットくんの一つの動作に注目しちゃうな。
「んー…」
隣から声が聞こえてくる。
「ソリットくん、どうしたの?」
「玉ねぎ切るのつらい…」
「大丈夫?変わる?」
私は笑いながら聞く。
「ごめん、お願い」
「はーい」
そしてまた静かな時間が訪れる。
なんかこう…緊張するな。
そんなことを考えて注意力が散漫になってきた時だった。
「危ない!」
ソリットくんの忠告も虚しく私の手は振り下ろされる。
「ひゃ!」
「すいせいお姉ちゃん!」
包丁で指に切り傷が!
「えぇっと…どど、どうしよう」
「すいせい」
「な、何?」
「手、見せて」
「えっと…これで良い?」
初めてソリットくんが大きい声出すところ見たから何というかちょっと怖い。
その時、不登校時代の記憶が一気に蘇る。あの時感じた自分自身の無力感…自分は何もできずに周りに迷惑だけをかけてないか。それで周りの人が自分から離れていかないか…それがずっと怖い。あの心臓と頭がぐるぐるして、落ち着かない感覚。何でこんな時に思い出すんだろう。
ソリットくんは私の様子を見ながらメナーとゼールに指示を出していた。けど私の耳にはあまり入らない。
「えっと…その」
私は頭が真っ白になり何も言えなくなってしまった。
その時ソリットくんは私の目をじっと見つめてる。
「ソリットくん…」
「大丈夫だよ?」
「え…?」
「その…別に迷惑だとも思ってないし、それに、僕のほうこそもっとすいせいと一緒にいろんなことしたいから…気にしなくて良いよ」
「…ありがと」
何というか…いやわかんないから気にしないでおこう。
「よし…じゃあ材料入れてって。すいせいは指の治療したら手伝える?」
「うん、頑張る…」
その後も何とか頑張ろうとしたが結局私は何もできずに部屋で休むことになった。
コンコンコン
「…!いいよ、入って」
私は起き上がりベッドに座る。
「すいせい、大丈夫?」
「ちょっと楽になったかな」
嘘。本当はまだまだ落ち着いてない。けどソリットくんの前で弱いところは…見せられない。
「とりあえずお雑煮食べる?」
「うん、もらおうかな」
正直そんなに食べれないだろうなと思いつつ口に運ぶ。
「…!」
何でだろう…単純な味付け。だけど何か…どこかに優しさを感じる。
「どう?」
何かを言いたい。でも言葉が出てこない。
私はお椀を落とさないように近くの机に置く。
「何か言いたい?」
「んっと…うん」
全然言葉が出てこない。
「落ち着いてからで良いよ」
「…じゃあその、落ち着かせて?」
私はその時、泣きそうな声で言った。
無理難題だったかな…
「…!」
ソリットくんが私を抱きしめてくれくれた。
「無理しちゃダメだよ?すいせい」
「ずるいよ……」
私は静かに泣いた。それに気付いたのかソリットくんがさらに優しく、力強く抱きしめてくれた。
「しばらくこのままでいい?」
「良いよ」
ダメだなぁ…年下に気を遣われるなんて。
私はひとしきり泣いた後にソリットくんに大丈夫と言って、離れてもらった。
「すいせいに抱きしめてもらったからどこかで返さないとなって思って」
「ありがとう…もう大丈夫」
「姉さん、ああ言うのをラブラブっていうのかな」
「ちょっとゼール、2人ともにバレちゃうよ」
その時ソリットくんが後ろを向いた。
「2人とも…見てた?」
「あれ?」
2人が出てきた瞬間全身が熱くなる感じした。
「バレちゃった!」
「…ごめんなさい」
「いや、いい…けどどこら辺から見てたの?」
「えっと…しばらくこのままでいい?ってぐらいから」
「あぁ…」
「うん、まあ…えっと…」
「ラブラブだね!」
「何というか…参考にしたい」
その言葉でさらに熱くなったような気がする…
「って!参考にしないで!」
「えっとじゃあとりあえず片付けてせっかくだし着物に着替えようか」
「はーい!」
全員着物に着替えた。
「どう?似合ってるでしょ!」
「ゼールもどう?」
「うん2人ともにあってる」
ソリットくんが2人を褒める。
「ねえ、私はどう?」
私は聞いてみる。
「うん、すいせいも良いよ」
「やった」
褒めてもらった。
「2人は遊びたいんだよね?」
「うん!遊びたい!」
「ゼールも…」
「すいせい、日本の遊びって何があるかな」
「うーん…」
日本の遊びか…正月らしいものがいいかも。
「百人一首とか?」
「僕わかんない」
「カルタ的なやつ」
「うーん…覚えてない」
「そっかー…」
他で言うと…
「羽付とかどう?」
「うーんと…こうでいい?」
パチン!
ソリットくんが指パッチンを鳴らした時に羽付のセットが出てきた。
「おぉすごい…」
「じゃあ外出てやってみようか」
「OK、負けないよ!」
そう意気込んで外に出たのだが…
5分後
「はぁ…はぁ…ちょっと交代」
「ゼール行くよ!」
「いいよ、姉さん」
と、こんな感じでダメダメだった。
「すいせい、大丈夫?」
ソリットくんが私を心配させないようにか笑顔で聞いてくる。
「ごめん…」
そもそもとして運動をほとんどしてなければ、ゲーム的なステータスも伸びてない。それに加えて能力なども持ってない私が今あげた3つの項目を全部を満たしている可能性のある3人についていけるわけがなかった。
「着物だししょうがないよ」
「だとしてもちょっとダメだったな…」
カン! カカン! カンカカン!
「ふぅ…私は少し休んでるからソリットくんはメナーちゃんたちと遊んできていいよ」
「…それなら僕とすいせいでやろうよ」
「本当に?ソリットくん暇じゃない?」
「そんなこと言ったらすいせいが暇になっちゃうでしょ。ほら行くよ」
「あぁわかった」
私は慌てて立ってソリットくんの方へ行く。
「せーの、ほい!」
すごくふんわりした羽がこちらの方へ飛んでくる…
感覚が麻痺してるな。これが普通ぐらいな気がしている。
「えい!」
うまく返せた!
「いいね」
そう言ってソリットくんは返してくれる。
何だろう、この感覚。別に特別今まで何かに囚われていると思っていなかった。けど今日は何か解放された感覚がある。心の天気は晴れって感じ。
「うまいよ」
ソリットくんも何というか珍しく笑ってる気がする。
「ねぇソリットお兄ちゃん!家の近くで遊ぶのもいいけどどこかに遊びに行きたい!」
「じゃあ神社でかくれんぼでもしよっか」
「神社って遊ぶところだっけ…」
「まあダメではないんじゃない?そもそも僕が魔力で作ったところに行くし」
「じゃあいっか。行こう!」
今の返事はいままでで一番透明な感じで言えた気がした。
「おお…再現性が高い」
「まあここでは無礼講だけど一応2礼2拍手1礼しておこうか」
そう言ってみんな横1列に並んだ。
カランカランカラン
礼を2回して
パン! パン!
2拍手
1礼
ファァァァァァァ
文字起こしに完全に失敗したっぽいが神々しい音共に1人の男性が現れる。
「我は神であ、やっべ。座標ミスった」
「え?何してるの?」
そう言って少しずつ地面に埋まる男性。
「ちょっと埋まる埋まる埋まる!助けて!」
「あぁあぁ、ほい」
ソリットくんの助けにより自称神は浮くことに成功した。
「やっぱ初めての場所で慣れないことはするもんじゃないな」
「まあでも失敗は経験として残るから」
「そうだよ。ある程度までなら挑戦あるのみだよ」
(すいせいが突っ込んでくれない僕が突っ込むか)
泳がせておいたけどそろそろ突っ込まないと。
「「だれ?」」
「そう仕向けたとは言えハモるのを聞くとちょっと面白いな」
「それはいいから誰なの?」
「まあこの世界を作っている神っていえば良いのかな」
「まって。神?」
その時ソリットくんが食いつく。
「神って僕の方の9話で初登場の予定だったよね?」
「そうだな?」
「先に出ていいの?」
「サテナンノコトカワカラナイナー」
「はぁ…もうちょっとちゃんとしてよ」
「ストップストップ!私たちが何もついていけない!」
「メナーたちにもわかるように説明して!」
「ゼールもわかんない」
「2人は難しいかな…でもすいせいにわかるように言えば…」
「私にもわかるよう言えば?」
「メタ発言をゴリゴリにしている状態」
「あぁ…ちょっとわかった」
「「??」」
まあ2人はわかんなくて当然かもしれない。
「じゃあちょっとこの後節分作らなきゃいけないから。よろしく」
「早くしてね」
(自分で作ったキャラにせかされている)
「おぉ…天に登って行った」
「多分神にお願いすればある程度までなら色々やってくれるよ」
「それはどう言うこと?」
「たとえばすいせいと僕の強さを入れ替えるとか」
「あぁなるほど…やってみたい」
「また今度ね」
気になるな…
「ねぇねぇかくれんぼしよ!」
メナーが言う。
「あぁうん誰が鬼?」
「…じゃあすいせい姉さん」
「お!いいよ、負けないからね!」
そのあとはかくれんぼをみんなで楽しんだ。
「あれ?起きてる。この世界だったら寝てると思ったのに」
「…ルナお姉ちゃんもそっち側なんだ」
「そっち側って何のこと?」
「あぁっと…何でもない」
「…?まあいいや。すいせいちゃん、ソリット。ありがとう!」
「いいよ、いつでも連れてきて」
「僕もそろそろ帰らないとみんなが心配する」
「私と一緒寝てもいいんだよ?」
私は少し意地悪してみる。
「…揺さぶらないで」
「冗談…ではないけど。まあ今日はお開きだね」
「すいせいちゃん、あんまりからかっちゃダメよ?」
「わかってる」
「このまま行くと僕が恥ずか死にそうだから帰っていい?」
「うん、またね」
「じゃあ私も帰るね。バイバイ」
「じゃあね」
今日はぐっすり眠れそう。
お正月 終了
ちょっと少ない…?いつかちょっといじるかも。あとソリットたちにせかされたので早く節分とバレンタインデーを作らないと。