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第六話、おわり

「白石さん、怖くないですか? 例の噂」

 脇田刑事は警察署のデスクで言った。

「例の噂?」

「だから地下の資料室に幽霊が出るって噂ですよ」

「脇田、そんなのホラ話だ、信じるな」

「でも火のない所に煙はたたない、って言うじゃないですか。ひょっとすると・・」

「・・」

「どうしたんですか? 白石さん」

「煙か・・そう言えば前に脇田からその噂を聞いた時にちょうど沢口が禁煙を始めていたな」

「確かにそうでした」

「うーん」

 白石刑事はこめかみをグリグリ親指で押しながら考え始めた。

「そうか、読めたぞ」

「なんですか?」

「女だ、沢口に彼女が出来たんだ。しかも相手は署内の女性だ。ヤツの吸っているタバコは変わった銘柄で独特な臭いがする。彼女に臭いがついて職場恋愛が明るみにならない様に禁煙を始めたんだ」

「なるほど」

「そしてここからが本題だ、交際を始めたばかりの恋人たちは始終、イチャイチャ、デレデレしたいもんだ。二人は資料室で落ち合う事にした。だがいつ何時、他の署員が来るかもしれない。だから幽霊話をでっち上げて他の人間が寄り付かない様にしたんだ」

「本当にそんな(たくら)みが?」

「ああ、確かめなくちゃならない。沢口はどこだ?」

「さあ?」

「さては資料室だな。よーし、張り込みだ。資料室から出て来たところを捕まえるぞ」

 白石は仕事の時より熱意にあふれていた。


「まだ出て来ませんね」

「ああ、イチヤイチャし過ぎだ。まったく」

 白石達は地下の資料室の隣りの倉庫に身を(ひそ)めていた。

「いっその事、踏み込んだらどうでしょう」

「何を言う、脇田。いくら俺でもそんな不粋な事は出来ないぞ」

「じゃあ、待つしかないですね」

「ああ、それにしても相手の女性は誰だ?」

「僕は地域課の浅木さんあたりじゃないかと」

「おお、なるほど。お似合いだ。それなら多少のイチャイチャも大目に見よう」


 二人は今か今かと倉庫に潜んでいた。


 その頃、屋上に続く人気のない階段に一組の男女がいた。

「こんな所にいたら見つからないかな?」

「大丈夫よ、白石さんが探すとしたら資料室だろうから」

「それにしても資料室に幽霊が出るとデマを流し白石刑事をそこに足止めさせるなんてスゴイよ」

「以前、倉庫に幽霊が出るっていう噂があったから、それをヒントに作戦を考えたの」

「オイオイ、大丈夫かい?」

「大丈夫よ、白石さんが探すのは資料室だから」

「君は本当に頭がいいね。惚れ惚れするよ」


 沢口刑事はそう言うと交通課の長峰にキスをした。



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