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第一話、はじまり

「そんな推理小説のように簡単に事件が解決するわけないのにな、なあそう思わないか? 脇田」

「そりゃ、そうですけど」

「ありゃパワハラだよ」

 課長代理に呼び出されひと月前から起きているバイクの連続窃盗事件の犯人を早く検挙しろとせっつかれた白石刑事は虫の居所が悪いのだ。

「ところで白石先輩、例の噂、聞きました?」

「なんだ?」

「地下の資料室に幽霊が出るって噂です」

「幽霊? 脇田、幽霊なんているわけないだ・・あっ饅頭(まんじゅう)がない」

「え?」

「脇田、俺の机の上に置いてあった温泉饅頭しらないか?」

「ああ、交通課の長峰さんが奥里(おくざと)リゾートに行った土産(みやげ)だって朝、配っていたお饅頭ですか」

「そうだ、後で食べようと大事にとっておいたのに誰かが食っちまった」

「ひどいですね」

「おのれ」白石はデスクに座わりこめかみを親指で押しながら考えはじめた。

 彼がこうなると没頭して何を言っても無駄なのを承知している脇田は横の自分のデスクで報告書の作成を始めた。

 するとものの数分もしない内に白石は腰を上げると斜め後ろのデスク脇にあるゴミ箱の中を探り始めた。

「え? そこ沢口刑事の机じゃないですか」

「ああ、多分、饅頭を食べたのはヤツだ」

「まさか沢口さんにかぎってそんな・・」

 脇田の言葉に耳を貸すことなく白石はゴミ箱をあさり続ける。そして・・

「ほーら見ろ」

 そう言ってゴミ箱に捨てられていた温泉饅頭の包み紙をとりだした。

 二枚あった。

「そんなダンディーな沢口さんが・・」

「禁煙のせいさ」

「え?」

「この一週間、沢口からタバコの臭いがしない。禁煙してるのだろう。だがバイク事件の犯人を()げられないイライラが(つの)ってヤツは無性にタバコが吸いたくなったんだ。でも吸えばこの一週間の努力が水の泡だ。そこで咄嗟(とっさ)口寂(くちさび)しさを(まぎ)らわす為に俺の饅頭に手を出したんだ」

 そして白石刑事はニタリと笑って言った。


「仕返ししてやる」


 一時間後、聞き込みから帰って来た沢口刑事はデスクに座り机の引き出しを開けた。


 中にはタバコが三本入っていた・・


 これから始まるのは横崎警察署の管轄内で繰り広げられたドラマである。



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