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忌剥  作者: 工場長
4/12

ツンボバナ(聾花)

 幼女はひとしきり笑ったあと、ブラブラと揺らしていた足を木の(みき)の上で組み直し、胡座(あぐら)をかく。


「はぁ」


 そして退屈そうに頬杖(ほおづえ)をつくと、大きなため息をついた。


「おい、お前里の子供か?」

「……」


 ナツナがそう(たず)ねても一切反応しない。まるで聞こえていないかのようだ。


「おい、そんなとこにいたらあぶねぇだろ、降りてこい」


 ナツナは再度少女に声をかける。今度は絶対に聞こえるであろう声量(せいりょう)だ。


「……」


 それなのにこちらを見向きもしない。


「ったく、なんだってんだ」


 正直、先程(さきほど)のこともあるので木の下には入りたくはなかったが、毛虫がいるようなところに子供を無防備で居させるのもあれだ。危ないだろ。


「おーい、何やってんだ、そこの……雑面(ぞうめん)みたいなのつけてるやつ」


 幼女はやけに特徴的な面をしていた。

 何かの文字をかなり崩して、線の一つ一つを顔のパーツとして形成している。困ったような眉に、半笑いの口と目。鼻はない。

 何とも言えない不気味な紙面(しめん)だ、子供が付けるのには悪趣味(あくしゅみ)なほど。


「……?」


 と、ようやくナツナの声が届いたようで、面がこちらに向く。真正面から見るとさらに不気味だ。


「……」

「なんだ?まぁいいか。なぁ、お前この先にある里の子か?頂上から探してみても見えなくて困ってるんだが、里まで案内を頼めんだろうか」


 さすがに子供一人で住んでるなんてことはないだろう。

 里、まではいかなくとも誰かしらの家があるはず。ナツナはそこに一日か二日間ほど邪魔させてもらえないか、なんて考えていた。もちろんタダでとは言わない、礼儀は大切だ。


「お前、マサキか?」

「いや違うが、俺はナツナという。各地を旅しながら忌剥をしている者だ」


 ほとんど喋っていなかった幼女が唐突に口にしたのは、全く聞いたことのない名だった。

 マサキ。ナツナは頭の中でその名について考えてみるが、やはり知らない名前だ。


「そうか」

「お前は?なんて名前だ」

「お前には教えん」


 なんというか子供のくせに可愛げがない、それに偉そうだ。


「なんでそんな面をしてるんだ」

不敬(ふけい)だからな」


 それは教えてくれるのか。


「不敬?誰にだ」

「山神様にだ。わかるか?下劣(げれつ)()()め」


 なるほど、こいつは里の子供でも、幼女でもなさそうだ。恐らく山神に(つか)える精霊の類だろう。道理で偉そうで可愛げがないはずだ。

 そしてそういうのがいるということは、やはり山神も存在しているのだろう。


「山神はどこにいる?山の管理が()()()()になっているように見えるが」

「そんなこと知るか、あのお(かた)は。主様(ぬしさま)はとても気まぐれなのだ」

「気まぐれに山をボロボロにするような神なのか?無責任だな」


 少々(かん)(さわ)ることを言って、つついてみたが。果たしてどうだろうか。


「そんなわけがなかろう!あの方はとてもやさしく、とても高貴なお方だ!貴様のような人間や、私のような下等(かとう)なものには理解の及ばない方なのだ、適当をぬかすな!」


 やはり明確に怒った。だとすると本当に信頼の厚い神なのだろう。だがそれなら何故姿を見せないのか。何故こんな形で山を放り出しているのか。

 優秀な神だと聞いていた反面、このような有様になってしまっているのが、ナツナには理解できなかった。


「あーわかったわかった、悪かったって。とりあえず降りて来いよ、この距離だと話しづらい、首も痛い」


 幼女、もとい彼女のいる位置的にナツナはずっと見上げる形になるのだ。木漏(こも)れ日がキラキラして(まぶ)しいし、角度的に首がつらい。


「ふんっ」


 精霊はなにやら不満そうだが、思いのほか素直に飛び降りてきた。

 もしかすると意外と話の分かるやつかもしれない。


「なんだ?」

「山神についていくつか聞きたい」

聾花 ツンボバナ

雨降りの花。

多く干ばつの地にて確認あり。

摘み取ると雨呼び寄せる、のちに花摘み取りし者、聴くべき力を亡失す。

いくつかの法を除き不可逆。忌として対処すべし。


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 低評価でもいいんですよ。どこが悪かったか教えてくだされば、もっといいです。

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