技能神の実力
ユキカゼは、庭で響く金属質の音を聞いて、不安を募らせる。恐らく、自分の父がアオイを見定めるためにボコボコにしているに違いないとユキカゼは思っていた。
「母さん、早く…」
「もう、あの人ったら…え?」
ユキカゼとその母親は、急いで庭に出る…そこには。
「はぁ、はぁ…すげぇな…」
「ふぅ…」
片膝をついている父親に、アオイが剣を突きつけていた。
………
「どりゃあッ!!」
「よっと…」
アオイは自身を斬らんと振るわれる剣を、ギリギリで回避すると同時に迫る回し蹴りを左手の剣でガードして防ぐ。
「ちょこまかしてんじゃねぇっ!!」
「ここと、ここかな?」
魔剣である緋龍が大きく振るわれると同時に、その剣から火球が射出される。だが、アオイはその火球の“軌道を見て”、回避する。
何故回避できるのかと言うと、それはアオイ自身の能力ではなく、頭に装備している【観測者:Observer】というゴーグル型の機械が関係する。【観測者:Observer】は、アオイが開発したもので、未来視の魔眼の構造をもとに制作したものだ。ただ、本来のものとは異なり、視界に入っている物の軌道が線になって見えるというものだ。
更に、普通ならユキカゼのお父さんが持っている魔剣に叩きおられる筈の剣もアオイが制作したもので、【魔力充填型強化機構】が備えられている。能力は読んで字の如く、魔力を充填することにより、通常の何倍もの強度になるというもの。腕輪は単なる魔力を蓄積するだけの装置だ。
そして、アオイは回避できる軌道の攻撃はできる限り避け、どうしても無理な場合は剣で受けるという耐久戦に持ち込んで、勝利した。ユキカゼのお父さんは武器を空振らせている為、体力の消費が激しいのに対して、アオイは自らは殆ど攻めに行かなかったのが勝利の別れ目だろう。
「アオイ…」
「え!?ユキカゼ…これは、その…」
アオイはこの状況に焦っている。他所から見れば自分がユキカゼの父親に危害を加えようとしているように見えるのだから、焦って当然なのだが…だが、誤解されることもなく、逆にユキカゼの父親のほうが奥さんとユキカゼに叱られていた。
「貴方…馬鹿なの?」
「最低…」
「うぐぅ…」
…何か、可哀想…と思いながら、この村に住まわせてほしい事を伝える。
「ん?別にいいぞ…住む場所はここでも…いや、何でもない」
「ううぅ〜…」
ユキカゼ?何でそんなに威嚇してるの…?
「うふふ、貴方は駄目ね…新婚何だから初夜は二人っきりの方がいいでしょ?」
「え…新婚?誰と誰が?」
「「「え?」」」
…え?
…どうやら、僕とユキカゼが結婚するらしい…何で?