実家へご訪問
食事を終えた後、ユキカゼがアオイに自分の村へ招待した。
「行く場所がなかったから有り難いけど…」
「…そういえば、何でアオイはあんな所にいたの?」
「いや…実は強制的に嫁探しに行かされて…ユキカゼは?」
「私も、似たようなもの…」
その言葉に、アオイは困惑した顔を浮かべる。
「こんな小さい子を…」
「…?」
ユキカゼは小さく首を傾げながら、アオイを見上げる。その可愛らしさに、アオイは保護欲が刺激されたのか、優しく頭を撫でる。
「うにゅ…ここが私の村…ユキノ村」
「おぉ…」
そこには、針葉樹の森の中にぽっかりと空いた空間に井戸を中心にして家々が建ち並んでいた。
「…ここが私の実家」
「…ここ、一番大きいんだけど…」
ユキカゼが案内したのは、その村の中でも塀で囲まれたかなりしっかりとした家で、さながら屋敷のような大きさだ。
「待ってて、今話をしてくるから…」
ユキカゼが屋敷に入って行ったのを見て、アオイは門の前で待っていると…そこへ一人の男性が近づく。
「…おい、何のようだ?」
「…え、あ、もしかして、ユキカゼの“お父さん”ですか…?」
「お前に“お義父さん”と呼ばれる筋合いはねぇッ!!」
「えぇ…」
男性の怒りにアオイは目に見えて困惑する。何故怒っているのか意味が分からないといった表情だ。
「お前、ちょっと来い…試してやる」
「え…?試すって…」
「いいから来いッ!!」
「は、はい…」
ユキカゼのお父さんに連れられ、アオイは広々とした庭に辿り着く。そこで、木剣を渡される。
「…?」
「おら、行くぞ…」
「ちょ、ちょっと待ってくださいッ!!」
「あぁ…?何だ」
「急に行くぞって言われても…あ、自前の道具とか使わせて欲しいんですけど…」
アオイの言葉に男性は少し顎に手を当てて考えを巡らせた後…それに条件をつけて了承した。
「持ってるもんなら何でも使って構わないが…俺もとっておきの奴を使うぜ?」
「はい、構いません」
アオイは、アイテムボックスから白い金属質のゴーグルと腕輪、一振りの剣を取り出し、装着する。対して、ユキカゼのお父さんは一本の緋色の剣を握っていた。
「何だ、その格好は…そんなんで前が見える訳ねぇだろ、ふざけてんのか?」
「いえ、一応前は見えているので大丈夫ですよ?」
「そうか、なら始めるぞ…【魔剣:緋龍】ッ!!」
「【観測者:Observer】起動、同時に【魔力充填型強化機構】も起動ッ!!」
そうして、アオイとユキカゼのお父さんとの模擬戦が始まった…
アオイ「どうしてこうなった…」