旅立ち
レクシアとの話を終え、アオイは自身の研究所に戻り支度をしていた。
「携帯食料は必須でしょ…いや、食材と調理道具を持って行こう、アイテムボックスに突っ込んでおけば腐ることはないから…あー、【星霊兵装】の研究は向こうでもしたいし…もういいや、全部入れちゃえ!!」
選別する事を諦めたアオイは、手当たり次第に道具をアイテムボックスに入れ、レクシアのもとに向かう。
「あれ、もう終わったのかい?」
「はい、もう行けます」
「…そんなにクラリスと結婚するのが嫌なの?」
「…別に嫌じゃないんですけど、何というか…妹みたいな感じなので…」
アオイの言葉に、レクシアは苦笑いを浮べてゲートを開く。…どうやら、クラリスと結婚させるのは今は無理だと判断したのだろう。
「それじゃあ、行ってきます」
「頑張ってね」
アオイはレクシアに挨拶をし、ゲートをくぐった…
…ゲートを抜けた先には、一面の銀世界が目に飛び込んできた。
地面は雪に覆われ、河は凍り、吐息は真っ白だ。後ろを見ると、そこにはもうゲートはなく、大きな針葉樹の森が広がっていた。
「…あ、そういえば、村とか人のいる場所が何処か聞き忘れた…」
…〜一時間後〜
…ヤバイ、非常にヤバイ。何がヤバイって、現在進行形でもの凄い吹雪に襲われていることとか…
「【寒冷耐性のネックレス】を付けてるからそんなに寒くはないんだけど…前が見えない」
これ以上は危険だと判断して、アオイは凍った河の上に設置型の結界を展開して猛吹雪を防ぐ。そしてその中にテントを設営。
「…ひまだなぁ…そうだ、確か…」
アオイはアイテムボックスの中に手を突っ込み、道具を取り出す。魔力で動くドリルを使って厚い氷を削り、餌を釣り針に付けて釣り糸を垂らす…ついでに椅子を取り出して、暫く待機。
…その後、釣りを切り上げてアオイは持ってきていた肉と火の魔道具、フライパンを取り出して調理を始める。釣りの結果は…魚が調理されていない時点でお察しして欲しい。
フライパンを食器の代わりにして食べてみる…塩胡椒を振ったただのステーキの為、神界の食事に比べたら格段に味が落ちる…まぁ、不味い訳じゃないからいいか。
その時、ふと視線を感じて結界の外へ目をやると…
「じー…」
「…」
猫耳を生やした少女が、涎を垂らして此方を見ていた…