side7 超絶進化??
都合により夜投稿ですんません
━スケルトン種━
元々人間等生物の死後腐敗し骨となった段階で魔素と生前の魂、もしくは体を持たぬ魔物の魂が変異結合して生まれるアンデッド。
古戦場等死体が放置されたまま瘴気が濃いエリアや魂エネルギーの転換が行われるダンジョン内等で良く発生する低級モンスターである
生前得た経験値には遠く及ばないモノのレベルの高い個体や一体のスケルトンに複数の魔物の魂が入り込む事で強力な個体も稀ではあるが発生する事がある
━モンスター研究者著━
迷宮の低層で生を受けたオレは人間が研究した部類に当て嵌めると「ただのスケルトン」
であって本来冒険者達からは雑魚キャラ、若しくはモブキャラと呼ばれる存在だった
実際就労して数多の冒険者達と対峙してみると確かにどう考えても二段階程力が及ばなかった
つまり━━━冒険者達を屠って魂エネルギーを狩る事で維持を可能とする迷宮に於いてオレ達スケルトンは非生産性のゴミ程度の存在でしかなかった訳だ。
そんなオレが偶然にも生み出したセルフプロデュース法により僅かながらもレベルアップを果たし「ただ屠られるのを待つ存在」から「頑張れば迷宮維持のお手伝いが出来る存在」にクラスチェンジした
このメソッドに着目して下さった迷宮主様に贔屓にされ中間管理職よりちょっと上に大抜擢され他の仲間より良い装備等も賜った
それだけでも故郷に錦を飾れる程の大出世なのに…更に迷宮主様ご本人から直々に加護を与えて下さるとか・・・
ツイてるとかの範疇じゃない位果報者になっている自分、そして期待された責任の重圧に身も心もぐちゃぐちゃに揺れていた
━━━
━━
━
『おーい、そろそろ現実に戻っておいでよー!』
・・・はっっ!?
〈こ、これは失礼致しました!〉
迷宮主様のご提案は確かに浮き世離れしているとは言え主君を置き去りにして瞑想に耽って良い道理じゃなかった
『じゃあ今からボクの加護を与えるからね、もしかするとそのせいでキミの魂が耐えられずに消滅しちゃうかも知れないけど…良いかな?』
そうか…オレ自身が迷宮主様の加護の力に耐えられなかった場合存在自体が消滅、復活の輪廻から外れて完全に消えてしまう可能性もあるのか。。。
でも・・・
あの惨めで終わりのない殺伐とした日々に戻る位なら・・・
〈…分不相応かつ過分なご配慮なれど慎んでお受け致します!〉
その刹那迷宮主様から発せられた金色の光にオレの意識は一瞬で飲み込まれてしまった
━━━━━
━━━━
━━━
━━
━
・・・・・・ん。。。此処は…?
身を焦がす程眩い光を受け意識を手放したオレが次に目覚めたのは黒曜石に囲まれた石柩の様な空間だった
━━━あれからどの位時間が経ったのだろうか?
━━━オレは迷宮主様のご期待にきちんと添えたのだろうか?
疑問と不安が入り混ぜになってとうとう不安が勝った瞬間、石柩の蓋がその気持ちを見越した様にゆっくりと開いて行く
。。。こ、この腕は…何だ??
先日スケルトンナイトに昇格した我が身は名に相応しくブロンズ色に染め上げられたと言うのに…
今見える我が腕は金色に近い色と光を纏っている
慌てて起き上がり体の隅々迄確認する
鈍い銅色から金色に変化した骨は見た目以上に強度を増した感覚が伝わって来る
それに何よりも鏡の様に磨かれた黒曜石に映るオレの体━━━その胸部には深紅に染まる球体━━━「コア」が鎮座していた
最弱のスケルトン時代にも小指の爪程のコアは体内に秘めていたが今見えるコアはその何十倍…いやその何百倍も大きく胸骨の中全てを満たしている
『…力が…力が満ちて来る…』
胸部に収まったコアの胎動に合わせてオレの体内に強大な魔素が循環していく様子が手に取る様に視える
・・・一体オレは・・・
『あ、起きた?』
『っ!?め、迷宮主様!?』
自身の超絶進化に気を取られすっかり目が眩んでいたオレの側に加護を与えて下さった迷宮主様はずっと見守って下さっていたご様子だった
『いやー、折角加護与えたのにさ・・消滅とかされたらメゲるじゃん?』
『それは…お手数をお掛けして大変申し訳ございませんでした』
お優しい迷宮主様はちっぽけな存在であるオレにすら慈愛をお与えになって下さるのか
『迷宮主様のご加護により有り難くも進化を遂げさせて頂きました。このご恩は今後オレの魂が潰える迄身命を賭してお仕えする所存でございます!』
感謝してもしきれないご恩にうち震えていると迷宮主様は不思議そうに首を傾げながらオレを見つめていた
『うーん…モンスターとしての「格」が上がると更にペコペコするフラグでもあるのかなぁ…?』
『・・・?』
『ま、いっか。どう?一新した自分の体は?』
ちょっと意味不明な言葉を呟かれた気がしたが迷宮主様は進化したオレに具合を尋ねて下さった
『…はい。今までの数千倍以上の力が漲って参ります!・・・それにしてもこの身の色は・・?』
加護を与えて下さった迷宮主様ならきっとご存知だろう、と不躾ながら我が身に起こった変化を尋ねてみる事にした
『うん、キミはスケルトンナイトから進化して「ナイトメア・スケルトンナイト」ってちょっとややこしい固有種になったみたいだね』
…ナイトメア・スケルトンナイト???
『古の時代、金色を纏って世に恐怖を与えた骨騎士…それがキミの進化した先さ』
…何か凄ぇ…冷静に考えるとそんなレアモンスターに進化させて下さった迷宮主様はもっとずっとずーーーーーっと凄い存在だけど…オレもこれからは強者の仲間入りするんだな。。。
『更に歴史を遡ると黒いマントを纏った金色の骸骨が世の人々を救って回った、という伝承もあるよ。確か・・・黄金バッ・・・』
〈主様っ!それ以上は仰ってはなりませんっ!!〉
━━━バキッッ!『へぐっ!?』
伝承をお伝えして下さっていた迷宮主様を背後から襲った不届き者は…この迷宮に於いてナンバー2でもあるエビルデュラハン様だった
後に土下座して謝るデュラハン様の弁解に拠ると…迷宮主様が紡ぎだそうとした固有名詞は何たら拳?権?とかいう強大な呪いを発した者に振り撒くらしく有史以来禁忌とされている言葉なんだそうだ
・・・新米強者には微塵も理解出来ない深淵を垣間見た瞬間だった