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雑魚モンスターの溜め息  作者: とれさん
7/11

side6 更に昇進?

もう一話どうぞ

低層階のモンスター達が努力した事によって来訪する冒険者の数が数倍に膨れ上がった


以前なら閑古鳥が鳴き数日間全く戦闘に加われなかったモンスター達も副次的効果で満遍なく冒険者達が来る様になり

ドロップアイテムの優劣構成にも助けられ良い噂は更に冒険者の数を増やす結果に繋がった


〈ナイト(仮)よ。お主の働きにより迷宮に活気が戻って来た

その功績を認め(仮)を外し正式にナイトを名乗る事を許されたぞ〉


〈ははっ、有り難き幸せです!〉


毎日ただただヤられるだけだった最弱レベルのオレがナイト職を拝命されるなんて…

モンスター生何があるか分からんな・・・


正式にナイト職になりヤル気スイッチにブーストがかかったオレは以前にも増して精力的にセルフプロデュース法をモンスター達に伝授していった


ドロップアイテムの差別化や徘徊コースの日替わり化、集団戦によるイベント化等思い付く限りのプランを実行したお陰で低層階は毎日満員御礼が出る程混雑している


以前の上司達からは僻みを越えて感謝される様になり連日収穫出来る魂エネルギーの増収で悲鳴が上がる程だと喜ばれた


現在全50階層あるこの迷宮、普通なら旨味の少ない低層階がドロップアイテムの魅力化によって中層~下層と同等、いやそれ以上の収入に変わり冒険者達がこぞって潜る事によって全体的な質も改善される様になって来ている


〈ナイト、主様がお呼びだ。直ぐに執務室に向かうが良い〉


〈はっ!では失礼します!〉


ある日エビルデュラハン様に呼び止められ迷宮主様の下に向かう様に言付かった


幾ら昇進したからと言って下々に毛が生えた程度のオレからしたら迷宮主様は雲上人どころか天上人以上の存在、

そう易々と会える方でもない存在を待たせるなんて恐ろしい事は出来る訳がない!


オレはエビルデュラハン様に挨拶もソコソコに超ダッシュで執務室へと向かった


━━━━━━


コンコンコンコンコンコンッ!


〈はぁっ!はぁっ!し、失礼しますっ!!〉


『はい、どうぞ~』


息もしてないのに息が上がるのは何故?と思いつつ肩を激しく上下させながら執務室のドアを開けると迷宮主様は以前と同じ様に高そうな机の上に積まれた書類を目にも止まらぬ速度で処理されている最中だった


〈っ!?お、お邪魔でしたでしょうかっ?〉


『いや、呼んだのはボクだし一向に構わないよ?』


〈そ、それではお手隙になられるまでお待ち申し上げておりますっ!〉


オレはドアの前で直立不動にて迷宮主様のお仕事がひと段落するまでお待ちする


トントン、バサッ。


『ふ~、ゴメンゴメン。最近収益が増えて書類も増えちゃってさ、嬉しい悲鳴だよね』


迷宮主様はオレに着席する様に勧めると自分もソファーに座りメガネを外し目頭を強く押す仕草をした


(…オレが迷宮主様のお手を煩わせているのだよな…)


低層階での働き方改革により冒険者や一般人の侵入が爆発的に増加した

それにより得られる魂エネルギーは確かに増加したが完全に屠られるモンスターも増え従業モンスターの新規増員や配置転換、ドロップアイテムの仕入れ等様々な部分でご迷惑をお掛けしている自負はある


その事実に1人深く反省していると迷宮主様はにこやかにオレの考えを否定してくれた


『いやいや、キミの活動は決して間違ってないんだから反省とかしないでよ。

迷宮は客(人間)が入ってなんぼの世界なんだし弱者も強者も広く集客出来ている事はキミが自発的に起こした行動によって巻き起こった成果なんだから誇って良いんだよ』


〈はっ、有り難きお言葉です!〉


何か無茶苦茶褒められて危うく昇天しかけているとメイド服を着たグール(♀)がお茶を運んで来た


『まぁお茶でも飲んで一息ついてよ』


〈はっ、では頂きます!〉


ティーカップに注がれた温かい液体は迷宮主様がお好きなダンジョンティーだった

茶葉のない迷宮で薬草等を代替品として迷宮主様自らがブレンドした滋養の高いお茶なのだ


因みにこのダンジョンティー、人間である冒険者達が飲むと半時と経たずに気管から菌種が増殖し窒息するらしい


『どう?今年の茶葉は良い出来だと思わない?』


〈はっ、確かに深みのある良い味です。オレの様な低級モンスターにはとても手が届かない高級品ですね!〉


『アハハ、喜んで貰えて嬉しいよ』


〈それはもう!〉


天上人…ならぬ天上モンスターの迷宮主様と同じテーブルでお茶を頂けるなんて…ちょっと前迄のオレなら想像もつかなかったな


『…ところで呼び出した理由なんだけどさ』


迷宮主様はホッと一息つくと早速本題に取り掛かった


〈はっ、何かご用でしょうか?〉


オレの返事を待って迷宮主様はこんな提案を持ち掛けて下さった


『ほら、現状キミが指導してる低層は物凄く活気づいてるでしょ?その活気を中層以降にも与えて欲しいんだよね』


〈・・・えっっ!?〉


オレは迷宮主様の提案に固まってしまった


確かに中層以降は以前同様、強いモンスター蠢く本格的なダンジョンのまま変わっていない

中層以降は低層の様に魅せる努力をしなくともモンスターの質も高いしドロップされるアイテムも強力なのだ


ソコを低層の様に活気づけるとしたら・・・

ソコ迄考えてオレはある重大な問題に思い至った


〈あの・・・迷宮主様〉


『ん?何だい?』


〈オ、オレみたいな若輩モンスターでは中層以降の強いお歴々方にとても指導とか…畏れ多くて出来ませんが?〉


。。。。。。


あ、、、やっちまったか???


迷宮の主である迷宮主様の願いを拒否るなんて迷宮に生きるオレ達には存在存在自体の否定となる

なのにオレは余りの事態に素で断ってしまったのだ


…ご機嫌次第では即座に消滅させられても仕方ない発言だった


『・・・ぷっ!』


〈っ!?〉


『プハハハハッ!相変わらず面白いね、キミは!』


よ、良かった!何故か冗談と捉えて貰えた様だ


『ま、冗談はさておき…今のままじゃ中層以降のモンスター達に言い聞かせるなんてとても出来ないだろ?』


〈は、はいっ!それはもう!〉


『ソコで、だ。今からキミに加護とソレに見合う装備を与えようかと思ってるんだ』


。。。は?


『スケルトンナイトに昇格したからと言って中層以降じゃ弱小モンスターには変わりがないからね、ボクの加護でキミを強化した上で更に装備を与えて下層の極悪モンスター達にも一目置かれる強さにしようかと考えたんだ』


。。。えっ!?…えっ!?


イタズラっぽい笑みを湛えた迷宮主様は何の気なしにとんでもない事を宣ったのだった

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