side3 迷宮経営の裏側
3話目投稿しました
散発的で申し訳ないです
━迷宮内最深部━
…パラ…パラ…
。。。
パラ…トントン、バサッ
。。。
『ふーーー…良くありませんね』
ッ!。。。〈も、申し訳ありません…〉
『いえいえ、貴方達が悪い訳ではありませんので謝る必要は全くありませんよ?』
此処は迷宮の中でも更に奥深くにある「執務室」。
ここ1ヶ月間のスコアレポートを読んで穏やかな口調で謝罪を退けた存在、それがこの迷宮の主だった
『レポートを読むに貴方達に非がある訳ではなく潜って来る冒険者達の人数と質に原因があるのは明白です。
しかし…質も量も此処まで落ちると経営にも影響が出て来ますねぇ。。。』
迷宮主様はかけていたメガネをソッと外すと目頭を指でギュッ、と押さえて黙考を始めた
〈わ、我々は如何様にすれば宜しいでしょうか?〉
迷宮主様の目の前で怯える様にご機嫌伺いをしているのはこの迷宮を実務的な部分でサポートしているモンスター、エビルデュラハン様だ
『ん?だ・か・ら・キミ達に出来る事はない、とさっきから言ってるでしょう?』
〈ひっ!?も、申し訳ありませんでしたっ!!〉
一度謝罪を受けそれを拒んだのに尚もしつこく具申して来たデュラハン様を殺気の籠った目で射抜くとそれだけで硬直してしまう
迷宮で生まれた者達にとって迷宮主様とはそういう存在であり生殺与奪は思いのままなのだ
『それにしても…何らかの手を打たない限りこの迷宮も数年で枯れてしまうでしょうね。。。』
迷宮主様は1人椅子に深く腰掛け目を瞑って動かなくなった
━━━━━━
カタカタッ!
「おらぁっ!!」ボギャッ!
シュゥゥゥゥ…
「お?このスケルトン、中位の毒消し落としやがったぜ!」
「ラッキーじゃん!こんな浅い層で落とすなんてなかなか無いんじゃないの?」
ここ最近のオレは冒険者達に大盤振る舞いをしていた
カタカタ?
(お隣さんここ最近随分羽振りが良いねぇ?)
カタカタッ、カタタ♪
(この間パーティー全滅させたろ?それでボーナスが出たから懐が暖かくてさ♪)
迷宮産のモンスター、オレも含まれるが何もただ湧いて冒険者達はを襲うだけの存在じゃない
冒険者達が迷宮に潜って日銭を稼ぐ様にモンスター達は冒険者達を屠って迷宮主様から対価を得ているのだ
主なボーナスは「装備」「ドロップアイテム」等で今回オレはドロップアイテムを充実させた訳。
基本オレ達は食事も水も必要ないから生活費も必要ない
迷宮主様は働くオレ達に「基本給」として魔素を与え働き如何により都度ボーナスを振る舞ってくれる
折角得たボーナスを何でわざわざ敵である冒険者達が喜ぶ様なモノに代えるのか?ってのは至ってシンプル
━冒険者達をエサ(アイテム)で釣りより集客を高める━
といずれオレにも良い事があるそうだ
断定的でないのは生まれてこのかたボーナスを貰った事がなくその先を知らないからだった
オレ達スケルトンなんてビギナー冒険者達からしたらスライムのチョイ上辺りにしか見られてないしね
高ランクの冒険者達からはいても無視される存在ですから…
そんなオレが今、初めて喜ばれるアイテムを振る舞う事が出来たのだ
カッタカ~タ♪
(フンフフーン♪)
鼻歌混じりに持ち場につくと突然背後から声が掛かった
「あっ!コイツだよ!きっと!」
「ホントかよ?まぁ倒して見りゃ分かるんだけどな!」
カタカタ?
(ん???)
騒ぎながら接近して来る冒険者達は何故かオレを見つけていた様子だ
あ、さては「リピーター」か?
こんな浅い層で中位のポーションとかドロップしてたのが冒険者達の間で話題になっているのかも知れない
そんな事になっていればオレは毎日何回倒されなきゃならなくなるんだ??
人間ってヤツは強欲にも程があるな。。。
「おらぁっ!」シュッ、サッ!
「えいっ!」シュッ、サッッ!
「「えっ!?」」
フ、フフ、フハハハハッ!!
驚いたか!
実は日頃の鍛練&ここ最近の戦績でステータスが地味に上がっているのだよ!
ただの○クとは違うのだよ!!ザ○とは!
。。。「○ク」って何だ???
と、とにかくオレは連日の闘いで腕力や敏捷性、格闘センス等が軒並み微増しているのだ!
「チックショー!躱すのかよ?」
「2人がかりで一斉に殺るわよ!」
シュシュッ!ガガキンッ!
。。。シュゥゥゥゥ。。。
・・まぁこの程度なんだけどね
「あれっ!?何で??」
「ドロップしねーのかよ!?」
フッ、そう毎回毎回当たりだと思うなよ?
こっちだって仕入れ(?)に原価があるんだからそう易々と出せるもんか!
それにオレだけ悪目立ちしてたらそれこそカモモンスターとして殺されまくってしまうしなっ!
ではさらばだっ!!!
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一部始終を見ていたお隣さんの話によるとオレを倒した冒険者達は地団駄を踏んで悔しがっていたそうだ。ざまあ!
コレで良い、コレで良いんだ。
浅い層にしてはちょっと豪華なドロップアイテムを落とすスケルトンが「たまに」出現する
このレア感を磨いていけばオレの存在価値もこの迷宮の話題にも繋がる
全ては迷宮の為に。