二話
感想、誤字脱字の報告等おまちしております。
「魔獣が…ここにでるってことですか?」
そう質問するアトラス
「そうだ。そして魔獣をここに被害が出る前に制圧する。これが我らの仕事だ。」
そう答えるアルベルト
「 それにはなにか理由があるんですか?」
「 もちろんだ。そしてその原因こそが我らイグルベール国立魔法研究機関の目的に繋がるものだ。」
わけのわからない情報がどんどんと流れ込んでくる。
魔獣が出現する? 原因? 研究機関の目的? 全くわからない
「 そろそろ見えてきたな。ここを下りれば説明もしやすくなるか。」
そう言って階段をどんどんと降りていくアルベルトについていくように、恐る恐る降りていく
階段を降り切ると薄暗い空間が広がっていた
通路の両側には無数の台が並べられていて、その台には本らしきものがはめられていた
奥の壁は見えず霧のような何かが遮っている。
異様な光景に僕は歩みを止め、立ち尽くした
「なんだこれ…」
戸惑うアトラスを横目にアルベルトは説明を再開する
「 ここは イグルベール国立図書館 第三階層 だ。」
「 第三階層…?ここの説明書には第二階層までって書いてるんですが……」
受付で貰った説明書を何回も見直すが何も書かれていない
「 いくらその紙を虱潰しに見ても載ってないさ。何せ第三階層は機密事項だ。一般には知らされてない。」
不気味な雰囲気の中、先へと進むアルベルトを追ってアトラスも歩き始める
「 あの台に保管されている本は一体何ですか…?明らかに普通じゃない気が…」
「 ここは古代サイナ遺跡の地下書庫から大量に見つかった召喚書を保管する場所だ。」
そう言って懐から台にはめられた本と似たような見た目の本を取り出した。
「 召喚書…?サイナ遺跡って昔、魔法の応用研究を活発にやっていた研究施設だった気がしますが、何か関係が?」
思わぬ答えに驚いた様子のアルベルト
「 ほう、詳しいんだな。ここに新人が来るたびに同じ説明をしてるんだが、そんな細かい質問をしたのは君が初めてだ。」
「 趣味で魔道具を作っていて、それでそういう史跡とか歴史とかも気になっていろいろ調べてたんで… まだまだ素人ですけど」
「 すごいじゃないか。いい趣味だ。」
「 話を戻そう。召喚書についてだったな。召喚書は 魔獣を呼び出す魔道具 そう思ってくれれば話が早い。魔力を本に溜め、一定量に達すれば魔法陣に記載された通りの魔獣が現れる。」
自然な流れで話された驚愕の事実に思わず声が漏れる
「 えっ…まっ魔獣って自然に生まれるものじゃ… 」
「 いや、魔獣は自然には生まれない。世界各地に存在している魔獣は全て人の手によって生み出されたものだ。そしてそれは今も昔も変わりはしない。数十年前に地上に現れた魔獣達も同様だ。」
「 ………それと魔獣がここに現れる理由と何の関係が?」
動揺を隠せないアトラスを見かねたのか詳細な話をし始めるアルベルト
「 順を追って話そう。君はこの都市全体に結界魔法がかけられていることを知っているか? 」
「 はい。外部からの魔法攻撃を跳ね返すように作られてることは知ってますけど、どうやって実現してるのかまでは… 」
「 機能を知っているだけで充分だ。何せ我々研究機関でも具体的な仕組みはわからないままなんだ。」
「 えっ では今貼られている魔法はどうやって…?」
「 数百年前に起動したその時から今日に至るまで動き続けている。だがここ数年、結界の効力が薄い箇所が多数見つかった。」
「 それって結構まずいんじゃないんですか?」
「 ああそうだ。このまま放置していれば、いつかは壊れるだろう。そしてもし今この魔法が止まるようなことがあればこの都市を、民を守る盾を失ってしまう。」
「 結界が壊れてしまう前に魔法陣の技術を解明し、無事修復する必要がある。」
「 これまでの調査でこの召喚書に使用された技術と結界魔法を行使している技術は同一のものと判明している。」
「 そこで我らイグルベール国立魔法研究所はこの魔法が止まらないように修復と点検を行うために、今この召喚書を研究している。」
手に持っていた召喚書を空いている台にはめ、先に進むアルベルト
「 だが一つ問題がある。それが 召喚書の暴発だ。」
「 暴発…? 暴発ってどういう…」
「 召喚書が我々が意図しないタイミングで勝手に魔獣を召喚してしまうことを 我々は暴発と呼んでいる。」
「 でも…召喚には魔力が必要と言っていた気が…? 魔力はどこから来てるんですか?」
「 結界だ。」
「 結界!? どういうことですか? 」
思わず大きな声が出てしまう。
「あっすみません…大きな声出しちゃって…」
「 はは… この説明をするたびに聞いているからいつ聞けるか少し期待してたんだ。驚くのも無理はない。」
「 この都市の最下部に位置する魔法陣によって結界魔法は起動しているわけだが、どこから魔力を供給しているか、わかるか?」
「 魔法を使用するためには当然魔力が必要だけれど…都市全体を覆うような巨大な魔法を使うための膨大な魔力がどこから供給されているのか、か… まさか…住民? 」
「 その通りだ。この魔法を起動し続けるための魔力は全て、ここに住む大勢の人々からそれぞれ少量の魔力を吸収し、集約させたものだ」
「 だがその吸収した魔力が全てそのまま魔法陣へと届くわけではない。魔法陣への運ばれる最中に別のものに奪われてしまう。」
「 それがこの召喚書というわけだ。前にも言った通りこの本は魔力を流すだけで魔獣を生み出すことができる。」
「 少しづつ魔法陣に吸収されるはずだった魔力がこの本に溜まっていった結果として、魔獣が生み出されてしまう。これが [暴発]の原因だ。」
アルベルトから聞かされた多くの謎の一部が解消され、思わず納得をしてしまうアトラス
「 図書館は魔法陣の技術を解明するために、同じ技術が使われている召喚書を研究している… そして僕の仕事はその研究の最中に現れる、魔獣を制圧すること…か… 」
「 そういうことだ。これからよろしく頼む。アトラス君。」
「 よっ…よろしくお願いします!」
力強く握手を交わすのも束の間、奥から甲高い音と共に小さな光が一つ見えた。
その光は右往左往しながら一つ、二つと増えている。
アルベルトは腰の短剣に手をかけ、警戒し始める。
「 こんな時にあいつか、面倒な。 」
「 もしかして…魔獣ですか? 」
解説 : 階層について
この図書館には階層があり、それぞれの階層で役割が異なります。
第一階層 : 国で出版されるあらゆる雑誌、小説、絵本等を保管する目的を持つ。
また保管だけでなく貸し出しも行っている。 最も蔵書数の多い階層。
第二階層 : 国が収集した貴重文献や、古代の書物等希少性の高い物を保管する階層。
通常では閲覧はできないが、国が認可すれば閲覧が可能となる。
第三階層 : 一般には存在自体が隠されている階層。主に召喚書を保管する目的で作られた。
魔獣との戦闘で施設が壊れないようにするために他の階層と比べて、
とても頑丈なつくりをしている。またとても深い位置にある。