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14.ジャージにペンダント

 竜退治の日の朝、わたしは本橋くんと和風の朝食を食べた。


 本橋くんは相変わらず、朝の寝覚めがあまりよくなかった。

 だけど大体昨日と同じ流れで、本橋くんを朝食に誘った。


 メニューはわたしが決めた。

 順番からいえば、昨夜の夕食がわたしチョイスだったのだから、今度は本橋くんの番だったのに。

 箸でつまんだきゅうりの漬物をかじりながら、本橋くんと共に食事が出来るのもこれが最後か、なんて考える。


 少し前までのわたしからすれば夢のような話だったが、三日も経つと、なんだかちょっと慣れがある。

 でも嬉しいことには変わりはないわけで。

 それが終わるというのは、やっぱり残念なことだった。

 とはいえ、元の世界にさっさと帰りたい、という気持ちもあるわけで。


 朝食のあとで部屋に戻り、わたしたちは青いジャージに着替えた。

 竜と戦う服装は何でもいいと、事前にモーファたちに聞いていた。

 その後、リビングに戻ると、キーファとモーファから、お茶とコーヒー、どちらがいいかをたずねられた。

 本橋くんはまだ来ていなかった。

 お茶を頼むと、すぐに熱いお茶が出てきた。


「そういえばさ、こっちの世界に持ってきたものって、どうなるの? この青いジャージとか、わたしの寝間着とか」


 お茶に口をつけながらそう聞くと、モーファがすぐに答えてくれる。


「気にしないでください。全部、本物じゃなくて、複製です」

「そうなんだ」


 わたしはまじまじと自分の着ているジャージを眺める。

 本物との違いは一切、わからない。

 胸にある名前の刺繍が、一部ほつれかけているのも本物どおりだ。

 それだけ精巧に複製をしてあるということだろうか。


 やがて本橋くんが、青いジャージに着替えて現れた。


「お待たせ」


 本橋くんはコーヒーを頼んでいた。

 そうしてキーファにこうたずねていた。


「キーファ、俺たちの服とかってどうするの? 元の世界に戻るとき、持って行かなきゃダメ? ……何でみんな、笑うんだよ」


 わたしとまったく同じことを聞くので、わたしも、モーファとキーファの二人も、なんだかおかしくて笑っていた。

 それから、先ほど聞いたことを本橋くんに説明をする。


「へえ。コピーだったんだ」


 やっぱり本橋くんも感心していた。

 それからわたしは、ふと思いつき、一度部屋に戻って、本橋くんからもらったペンダントを持ってきた。

 わたしの手の中にあるペンダントを見て、本橋くんがたずねてくる。


「どうするの? そんなの」

「せっかくもらったんだから、つけるの。もう最後だし」


 銀色のチェーンを首に通す。

 ペンダントを一度胸元にぶら下げてみて、ちょっとしたポーズをとり、本橋くんに聞いてみる。


「どう?」

「似合うんじゃない」


 すごく適当そうに本橋くんが答える。


「ジャージにペンダントなんて、似合うわけないじゃん」


 わたしはちょっと口をとがらせながら言い、それからジャージの胸の中にペンダントをしまい込む。

 と、部屋の出入り口の扉がノックされる。

 入ってきたのはロイシュテバだった。

 キーファ、モーファとうなずきあい、わたしたちにたずねる。


「準備は、いいですね」


 ああ、もちろん、とわたしたちは異口同音に答えた。

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