見舞い
そして甲斐家に着いて、チャイムを鳴らす。
「はーい」
ガチャッとドアを開けたのは風香ちゃんだった。
「あら、孝君じゃない。そんなに汗流してどうしたの?」
「優海ちゃんの調子はどう?」
「優海……あぁ熱が出て寝込んでいるわ」
「え!?」
「それで、どうかした?」
「優海ちゃんの容態を見たいっ」
「え?」
彼女は明らかに戸惑った顔になった。
「それは……」
「?」
「止めといた方が良いと思う。うつったら困るし、それと何より貴方には関係ないはずでしょ?」
「か、関係はある!」
「あらどうして?」
「僕のせいで体調を崩したかもしれないから……」
「? どういう意味?」
彼女は少し怪訝な顔になる。
「と、とにかく様子を見させてくれ!」
「理由も無しに見せられないわっ」
あぁ、くそっ。もう構うもんか!
「ぼ、僕達は付き合っているんだ!」
「え!?」
風香ちゃんは驚いて立ち尽くした。
「だから退いてくれっ」
そう言って僕は彼女を横に退けて上がった。えーと優海ちゃんの部屋は……ここかな?
ノックをして開けると彼女はベッドに寝ていた。少し部屋が熱かった。そして僕はベッドの近くに座った。彼女は少し辛そうだった。
「……」
僕はしばらくそこにいたが、何も出来ないと思い今日は帰った。
それから数日後、僕は帰る準備をしていると、風香ちゃんが話しかけて来た。
「優海の様子が大分良くなってきたからウチに来る?」
「本当か?」
「……えぇ」
そして彼女の提案で彼女の部活が終わってから一緒に帰ることになった。(待っている間は図書館で待機中)
部活が終わる頃を見計らって校門で待っていると風香ちゃんが来た。
「帰りましょう」
「あぁ」
元カノと一緒に帰るなんていつ振りだろうか。僕は嬉しさと心配の狭間で心が動いていた。相変わらず綺麗だなと僕は彼女を見惚れていると、
「二人はいつから付き合っているの?」
いきなり単刀直入に訊いてきた。
えと~、
「大体1ヶ月前かな?」
「そう……」
彼女はそれ以上返事がなかった。
「?」
そして家に着き、僕は優海ちゃんの部屋をノックした。
「優海ちゃん?」
「先輩!?」
「入って良い?」
「えっ? ちょっと待って下さい……きゃっ」
どたっという音が聞こえた。
「大丈夫か!? 入るよ!!」
「あ、先輩。待っ……」
入ると彼女は上半身裸でタオルを持っているだけだった。彼女の顔はみるみる赤くなり、
「で、出てって下さい!」
そして少ししてから彼女から許可が下りたので、部屋に入ると消臭スプレーのにおいがした。彼女は布団の中にくるまって顔の上半分だけ出しながら恥ずかしそうに、
「に、臭わないですか?」
「だ、大丈夫だよ」
か、可愛い……。
「先輩の顔を見るとホッとしますね」
「そ、そうか?」
「はい♪」
彼女の幾分元気を取り戻した様子を見て僕も一安心した。
「ところで……」
「?」
「先輩はどうやって私の体調のこと知ったんですか?」
「あぁ~、それは……、小石川から聞いてだなっ」
「そうだったんですか……」
「そうそう、それでその時に優海ちゃんの部屋を訪ねたんだけど、寝込んでたから諦めたんだ」
「え? 来たんですか!?」
彼女は目を見開いてびっくりしていた。
「え? あ、うん……」
「~~~~」
彼女は顔を布団の中にすっぽりと潜らせた。
「けど体調が大分良くなって良かったよ」
「……はい」
それからしばらく無言が続いた。
(何の話をしよう。これからのことか? それならまず風香ちゃんの気持ちを確かめないと……。今大丈夫かな?)
そう思ってこの部屋から出ていこうとしたら、
「先輩どこ行くんですか?」
「え? いや少しこの部屋から出ようかと……」
「ここにいてください。寂しいです……」
「え?」
そんなこと言われると……、僕は少し嬉しくなりその場にまた座った。
「先輩っ」
「ん?」
「呼んでみただけですっ」
「何だよ~っ」
「ふふふっ」
と話していたが、彼女は素のトーンになる。
「先輩はー、やはり姉さんにまだ未練があるんですか?」
「え?」
いつの間にか布団から顔を出し、こっちを見ていた。
「……」
「……」
僕はため息をはき白状した。
「あぁ、そうだよ」
「そうですか……」
「だから今後のことについて優海ちゃんとも話を……」
「今、その話は止めて下さい」
「え?」
「心が折れそうなので……」
「……」
「体調が戻ればその話をしましょう」
「分かった……」
「でも……」
「?」
「別れるのだけは駄目です」
「え? でも……」
彼女は真剣な目でこっちを見る。
「……考えとく」
「はい、そうして下さい♪」
そしたら優海ちゃんの部屋に突如どっとドアが開く。
「で、二人が付き合っているというのはどういうことなのかしら?」
風香ちゃんでした。
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