彼女我が家に初めて訪問に来たる
少し切ないです
(少し内容を変更します)
予定を組むのになぜか色々ごたついてしまった土曜日。部活を休んで朝からパジャマ姿で横になって僕はのんびりと漫画を読む。そしたら下から母の声がする。
「孝次ーっ、今からパートに行ってくるから、何かあったら連絡するのよーっ。それとご飯は適当に食べといてねーっ」
「へーい」
そして玄関のドアが閉まる音が聞こえた。
今は家に僕一人しかいない。やっほーっ、自由だ! さあ、好きなことするぞーっと思いながらページをめくる。まぁ偶に頬はひりひりと痛むが、休息も良いもんだと思ってのんびりと漫画を読んでいたが、2時間も読んでいると飽きて来た。
う、眠気が……。読みながらうとうとと来る。せっかくの休息に好きなことをしないと、と思いながら粘ったが抗いきれずに寝た。
それからどれくらい時間が経っただろうか。眠気を感じながら重いまぶたをゆっくりと開けていると、下から何やら音が聞こえる。
何の音だ? と聞いていると、ピンポーンと鳴る。
ピンポーン……。
僕ははっとして時計を見ると13時を回っていた。やばっと思って急いで下に降りて、
「はーい、今開けますよーっ」
と叫んでドアを開けた。そしたら優海ちゃんが立っていた。白のウールのミニのワンピースで、黒の上着を着て黒のブーツを履き、手持ちの小さな鞄を持っていた。そんな少し大人びた彼女を見て僕は呆然としてしまった。
「こ、こんにちはっ」
彼女は少し恥ずかしそうだった。僕まで緊張しそうだ。
「さ、上がって」
「は、はいっ」
彼女はブーツを脱ぐが、少し脱ぎにくそうで少し膝を曲げる。あっ……少し白の下着が、と僕は思って気持ちを高揚させたが目をすっと外した。いやいや、何を見ているんだ。紳士たれ紳士にっ。
「ふう、脱げました。……あっ」
「ん?」
「先輩……パ、パンツ」
え? パンツちらちら見てたのバレたか!? 彼女は恥ずかしそうにしながら、
「……丸出し」
「へ?」
見るとズボンを穿いていなかった。わっ! いつの間に!?
「……ゴメン。お見苦しいところを……」
「いえ、大丈夫です……」
そして階段を上がって部屋に案内する。
「あの、ご両親は?」
「ん? 二人とも仕事だけど?」
「そ、そうですか……」
彼女はごにょごにょと言い俯き加減になる。
「?」
そして部屋に入ると、彼女は僕の背中を押してベッドの方に促す。
「?」
「先輩は横になってて下さい」
「え、いや、そこまで悪くないよっ」
「安静にこしたことはないので」
ぐいぐいと背中を押すものだから、仕方なく横になった。
「ご飯はまだですか?」
「え? うん。まだだけど」
そしたら彼女はぱあっと明るい顔になり、
「それじゃあ、滋養のある料理作りますからキッチン借りますね」
「キッチン借りるのは良いけど、病人じゃないんだから」
「では、元気の出る料理を! ちょっと買い物に行ってきますから少々お待ちを」
そう彼女は元気に言って、どたどたと下に降りて言った。
それから1時間ぐらい経っただろうか、良い匂いが下からしてくる。そして、
「せんぱ~い。ドアを開けて下さーい」
と優海ちゃんが言うので開けると二人分の鶏モモのステーキとスクランブルエッグだった。そして香ばしい香りはニンニクか。美味しそうだ。
「優海ちゃん、料理得意なんだっ」
「はい、料理は得意です」
そして机に料理をのせた皿を置き二人で食べる。
「いただきま~す」
「いただきます」
そして食べてみると焼けたニンニクが口の中に広がり、香ばしく焼けた鶏皮に肉汁が出るジューシーな肉がその中で駆け巡る。スクランブルエッグも柔らかくふわふわしてて甘い。
美味しい。至福だ……。
料理の味に気持ちが浸っていると、彼女がぷっと笑う。
「大袈裟ですよ先輩。表情が漫画に出てくる料理食べた人みたいになってますよっ」
「そうか? けどそれくらい美味しいんだってっ!」
「ふふ、ありがとうございます♪」
僕達は笑いながらご飯を食べた。
「あー、食った食った」
「あ、じゃあ片付けときますねっ」
「あぁ、ありがとう」
そして片付けを終え、僕の部屋で雑談をする。
「それで絵美ったら……」
「あはは。そっか、そっかーっ」
と楽しく話していたが一方で何やら体が熱い。気持ちが高揚する。彼女の胸や太ももに目線がいき、鼓動が早くなる。
とは言え時間が経つのは早いもので時計を見るともう16時を回っていた。
「あ、もう帰らないと。姉さんが心配しちゃう」
僕はドキッとする。風香ちゃんか……。
そして優海ちゃんが立とうとしたら、
「きゃっ」
と言って正座になっていたからかふらついた。
「危ないっ」
僕は咄嗟に倒れる彼女を抱きしめて彼女の柔らかい体を感じる。そしてさっきの気持ちと相まってさらにそれが高鳴る。い、一体どうすれば……と考えていると、彼女は目を瞑り唇同士を軽く合わせる。
こ、これは……キ、キ、キス……。
僕は彼女の唇に目が行く。据え膳喰わぬは男の恥、か。よししよ……と思った時、ある子の顔が頭をよぎる。
「……」
僕はぐいっと彼女を離す。
「? 先輩?」
「ゴメン、まだ……出来ない」
「……」
彼女の顔は見れなかったが、立つ音が聞こえた。
「……分かりました先輩。今日は帰りますね……」
そう言ってドアを開き、そして玄関の開閉音が聞こえた後、窓の外からブーツで走る音が聞こえてきた。僕はため息をはき、忘れていた頬の痛みを感じ一人愚痴た。
「最低だ……」
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