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小石川への対策

更新しました。

 彼女は珍しく帰りながらスマホをいじっている。


「何してるの?」

「え? あぁ、先輩の顔にスタンプを貼っているんです」


 消しはしないのか。


「よし、出来たっ」


 見ると目には☆を口には♡のスタンプを貼っていた。


「可愛くなりましたねっ」


 女の可愛いはよく分からなかった。


「しかし妙ですね」

「?」

「私は別にそこまで小石川さんと仲良くしてないんですが……」


 え? そうなのか? なら一体なぜ僕の所に?


「それより先輩」

「?」

「脅されて遊園地に誘われた時どう断ろうと思ったんですか?」

「え?」

「なかなか至難の業だっただろうと思うのですが」

「それは……」


 こ、これはまずい……。承諾しかけたなんて言いにくいっ! 彼女はじっと綺麗な目でこっちを見てくる。


「……」

「……」

「……ゴメン! 同意しかけた」

「そうですか……」


 彼女は少し俯いた。


「まぁ、今回は私に非があるのでとやかくは言いませんっ」

「本当か!?」

「で~もっ」

「?」

「次にそんなこと言ったら、お仕置きするんでっ」

「はい、ごめんなさい……」


 それからはいつもの優海ちゃんに戻って一緒に帰った。

 あれから数日経ったが、小石川(?)さんは僕のクラスに来なかった。彼女は一体何をしたかったのだろうか。


──先輩! また来ますからっ!


 なんて言っていたが、あれから音沙汰も無いし。僕にはよく分からない。僕はふと風香ちゃんの方をちらっと見たが普通に友達と話していた。

(風香ちゃんもどういう風の吹き回しであんなことを……)


──貴女みたいな女子に孝君を渡す訳ないじゃないっ!


 女心は明日の空の如くかな。

 ……とまぁ吞気に僕は外を見ながら詠んでいた。

 部活が終わり学校近くでスマホをいじりながら待っていると、



「せんぱ~い」


 と声が聞こえた。


「済みません、部活が長引いて遅くなってしまって……」


 彼女は運動がかなり得意で、部活でもうレギュラーになっていると聞く。


「どうだ、部活の方は?」

「まぁまぁですねっ」

「そうか」

「はいっ」

「そういえば最近連載された週刊誌の漫画なんだけどさっ」

「はいっ」


 といつものように趣味の話をしていたが、そういえばこの前からなんか彼女のノリが変な気がした。


「どうかしたか?」

「え? いや……」

「?」


 彼女はしばらく黙っていたが意を決したのか話す。


「先輩……」

「ん? どうした?」

「小石川さんには気をつけて下さいっ」

「え?」

「彼女と学校で話しをしたんですが……」


 そして彼女はその一連の話をしてくれた。


『小野原先輩に会ってこの写真を見せたそうですね』

『そうね』

『そして遊園地に誘ったと』

『あら、本当に仲が良いのね。付き合ってるの?』

『いえ……そんなことは……』

『そう。なら、あなたには関係ないでしょ?』

『……』


 そう言って説得しそびれたそうだ。


「……だから先輩、彼女の誘いにのるようなことは……」


 しかし彼女はそれ以上何も言わなかった。


「では先輩、今日はここまでで良いです。ありがとうございました」

「あ……おい……」


 彼女は明るくそう言って家の方に帰って行った。その後ろ姿を僕はただ眺めているだけだった。

 次の日、金曜日の昼休みのこと。


「小野原せ~んぱい」


 僕はびくっとする。彼女、小石川さんが僕の席の近くにいた。


「君は……」

「も~、もう忘れたんですかーっ? 一年の小石川ルミですよーっ」

「分かってるよ。で、どうかした?」

「え~、忘れちゃったんですか~。 明日の件ですよ~」


 来た。


「その件なんだが、先約が合って行けなくなった」

「……え?」


 どうだ~っ? これなら断ざるを得まい。昨日色々考えに考えぬいた作戦で余裕綽々になっていると、彼女はニヤリと笑う。


「じゃあ、その予定先に断って下さい」

「ゑ?」


 僕はギクッとなる。だから精一杯誤魔化そうとして声を少し大きく出して、


「一体何言って……」

「この写真構わないんですかーっ」

「!!」


 は、そうだった……根本の対策をしてなかった。クソッ!、一体どうすれば……。そう頭をぐるぐる回したが一向に良いアイデアが浮かばない。


「……」

「……答えないんですか。そうですか。分かりました」

「?」

「この画像拡散……」

「あ、待っ……」

「待ちなさいっ!」

「!?」


 大きな声を出した方を見ると、風香ちゃんだった。


「その先約は私との予定なの」

「!?」


 僕はびっくりした。先約なんて真っ赤な嘘なのに、まさか元カノからその話を合わせてくるとは。しかしそんなこと言っても小石川は……小石川?


「……あ、あの小野原先輩。私との約束はキャンセルで良いので。では……」


 そう言って彼女はクラスから出て行った。そして風香ちゃんは僕の席に近づいて言う。


「どうやら彼女は私を苦手にしているみたいね」

「そ、そうだな……」

「何の弱みを握られているかは知らないけど、これで良いのよね?」

「え? あぁ、なんか助かったよっ」

「元カレだもの。当然よ」

「……ところで、どこから話聞いてた?」

「え? そうね。『その予定先に断って下さい』辺りからね」


 なるほど。そこからか。


「ところで……」

「?」

「本当に予定を明日に入れてみる?」


 は?

最後まで読んで頂きありがとうございます。

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