あの夏の光は 【夏の光企画】
「夏の光」
その人を想う時
遥かな海の調べが聴こえる
低く低く寄せ返す波
銀色に煌く水面
どこまでも紺碧の青
いつの日か戯れていた
あの夏の光は
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「君のいない夏」
君に触れた僕だけが抱いた
その温もりは確かなもので
忘れはしない忘れられない
君が姿を消したあの夏の朝
眩しかった陽射し鳥の囀り
君がいない君だけが欠けた
日常を未だ信じられないで
ただ立ち尽くしている僕を
嘲るかのように今年もまた
夏は巡り来る孤独のままに
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「十五の夏」
髪を切ったのと君は
いつもの笑顔で僕の前に現れた
あれは真夏の午後三時
顎のラインがシャープなボブカット
耳に銀のイヤリングを揺らしながら
可愛いでしょと君は笑う
ねえあたしのことすき?
ほんとうにあいしてる?
甘えた声で君は問うた
答える代わりに僕は君を抱き締めた
そのまま離さなければ良かったのに
眩しかった輝いていた
あの十五の夏の光の中
君は逝った
僕だけを独り置き去りにして
その理由を僕はいまだに探している
幾たび夏が廻り来ようと
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「夏の幻」
ぎらつく太陽
焼けるアスファルトの匂い
横断歩道を渡る人混みの
漂う蜃気楼の中
あの人と出逢った
あの夏の日の幻
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「蛍舞い」
闇夜にほんのりと灯る
金色の光を追い
捕まえた
掌の中には
暗闇をぼんやりと照らし出す
蛍の舞う夏の夜
本作は、銘尾友朗さま主催「夏の光企画」参加作品です。
参加させて下さった銘尾さま、お読み頂いた方、本当にどうもありがとうございました!