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食料保存の科学  作者: 林海
2/17

2−1 〜まずは乾燥させましょう〜


 腐敗を防ぐために水分を除くというのは、人類が太古から行ってきた方法です。最初は天日干しにするという、極めて単純な手段から始まったことでしょう。


 食品には、炭水化物やタンパク質と結びついていて蒸発せず、微生物も利用できない「結合水」と、食品成分と結合していない状態で、周囲の温度や湿度の変化により容易に移動が起きる「自由水」が含まれています。

 食品を干して水分を抜くということは、自由水を減らすということです。この食品中の自由水の割合は、「水分活性(すいぶんかっせい)」という用語で示され、保存性の指標とされています。


 干される食材としては、ダイコン、カキやアンズ、シイタケなど対象は幅広く、それらは大量に消費されています。

 また、切って干すという単純な工程であっても、その技法は長い歴史の中で極めて洗練されたものになっています。

 乾燥という現象は、空気に触れている表面から進行します。ですから、最短の時間で乾燥させるため、それぞれの食品の水分量に合わせて最適な表面積が得られるよう切る形状を変えるのです。これは、「腐敗するまでの時間」を少なくするためだけでなく、変色を防ぎ見た目にも美味しそうに仕上げるために重要なポイントです。


 たゆまぬ技術の向上が行われた結果、カンピョウのように極めて高度な技術によって作られているものもあります。カンピョウが一瞬で帯状に削られていく画像を見たことのある人もいるでしょう。江戸時代は包丁で剥いていたものが、大正期に鉋を使うようになり、昭和の中頃に鉋とモーターを使った方法になりました。


 この干すという処理によって、食品に含まれる水分は減りますから、結果として含有成分の濃度が高まり重量あたりの栄養価が増えます。さらに、太陽光に含まれる紫外線によって「殺菌」され、「タンパク質」が分解されて旨味成分である「アミノ酸」が増え、シイタケではビタミンDが作り出されるなど、幅広い効果が期待できます。

 簡単に言ってしまえば、干すと保存ができるようになり、栄養価が増して、美味しくなるのです。


− − − − − − − − − − − − − −


 ※日本の歴史のなかで

 日本の合戦場では、サトイモの茎を干した芋がら、炊いた米を干した(ほしいい)が「糧食」となりました。糧食とは、備蓄し、携行する食糧のことで、このような合戦の場合に持ち歩くものです。

 この糒は、長期の保存が可能な上に、軽量という大きな利点がありました。特に、飛鳥時代の律令では、糒を20年間備蓄保存するように記され、兵士には1人あたり6斗、およそ43リットルの携帯を義務付けていたそうです。


 また、初めて文献に現れるのは古事記で、日本武尊(やまとたけるのみこと)の東征のおり、「足柄の坂本に到りて、御粮食(みかれひきこしめ)す処に、その坂の神、白き鹿になりて来たちき。」とある中の「みかれ」は(かれ)であり、干し飯(ほしいい)のことと言われています。糒は、最初から糧食として文献に表れているのです。


 なお、糒は現在でも、アルファ化米という名称で災害時に備えて備蓄されていますし、もち米で作った糒は春の桜餅に使われる道明寺粉ですから、みなさんもよくご存知でしょう。

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