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神に愛されし者  作者: シューニャ
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エーデルワイス亭

リンシャ・エーデルワイス =point of view=


リンシャは大きな溜め息をつく……

溜め息の理由は目の前の督促状の束だ……


リンシャ「どうしよう……」


今まで自転車操業で何とかやってきたが、さすがに資金繰りが焼け付いて来た...

リンシャには守りたいモノが多すぎた...

両親から受け継いだエーデルワイス亭もその一つだ


リンシャ「どうして……どうして...こんな事に...」


一日も休まず懸命に働いてきた……

だが、儲からない……物価は高く高立地の影響で毎年のように重い税がかかる...

もちろん、宿賃を値上げすることも考えたが、そんな事をしたら更に客足が遠のき資金繰りが苦しくなるだけだ。


それでも、この土地を離れなかったのは思い出が沢山詰まった生家を離れたくなかったからだ

もはやリンシャに売れるモノは一つしか無い……貞操だ...

金持ちと援助交際すれば、この借金は、すぐに返せるだろう...だが...


リンシャ「後悔するかな...でも、このままじゃ……」


実家を手放すなど考えられない・・・

しかし、金持ちの愛人は待遇が苛烈を極めると聞く...

正妻からは嫉妬され、近所からは悪い噂をたてられる。


金持ちの愛人になったばかりに暴漢に襲われ金品や身体を汚されただけではなく殺害されるというのも珍しくないと聞く...

そんな状況で果たして、ここに住んでいられるだろうか?

そもそも見知らぬ人間に身体を開くという行為を想像するだけで悪寒が走る。


リンシャ「こわい...うぅ…… しく 」


どうすればいいかわからない...

泣いても誰も助けてくれない...

頭ではわかっているが、心はズタズタだった...


リンシャ(死んでしまいたい...)


本当は死にたくないが、もはや、どうにもならない。

全部自分のせいなのが、更に苦しい...


リンシャは、静かにすすり泣く...

何も改善しないが、そうする事しか出来ないのだ...


すると朝早くにも関わらず宿屋の扉が開いた。

リンシャは涙を見せまいと必死に涙を拭い顔をあげるとそこにはお客のシセスタが立っていた。


シセスタ「どうしたの?リンシャ?泣いている?……どうしたの?泣かないで...」


シセスタが優しい声で声をかけて来る...


リンシャ「別に泣いてなんか...」

シセスタ「泣いてるじゃないか...ああ……なるほど...」


テーブルの上に広がっている沢山の督促状を見て納得する。


リンシャ「勝手に読まないで...」


リンシャの声からは最早(もはや)力が感じられない...


シセスタ「ひとりで、辛かったね...怖かったね...」


リンシャに優しく声で共感して出来る限り苦しみを取り除こうとする...

気が付くとシセスタから暖かな光が放たれリンシャは光に包まれた……


シセスタ・アデル =point of view=


リンシャちゃんを慰めようと頑張っていると突然、自分に身体から発光した!


≪スキル:精神治癒≫を獲得。

≪対象の精神的な病を根治させる≫


シセスタ(ああ!またスキルを習得した……願ったり行動に移した途端にスキル習得とか……この世界の神様ちょっと優しすぎません?!まぁ都合がその方がいいし、助かるんですけど……)


リンシャがピクリとも動かないので容態を確認する為、【鑑定・解析】を走らせる……

どうも重度の精神的な疲れを癒やすために深い眠りに落ちているようだ……


シセスタ「まあ……すぐに起きるだろう...」


思いもよらぬ副作用にリンシャに申し訳なく思いながらも気持ちを切り替え、店にあった紙とペンを手に取り走り書きをリンシャのテーブルに残すと督促状の束を持ってエーデルワイス亭を後にした。



リンシャ・エーデルワイス =point of view=



しばらくしてリンシャは目を覚ました・・・


リンシャ「ん・・・わたし、寝てたの?」


心なしか先程の陰鬱な気分が晴れ、心が軽い……

こんな胸のつかえがとれた気分はいつ頃だろうか?

ふっと督促状の束の代わりに一枚のメモが置かれているのに気付く...


“リンシャちゃんへ”

俺の魔法が何故か勝手に発動して君が気絶してしまったので、この置き手紙を残そうと思います。この見ず知らず新しい土地に流れ着いた俺にとって、このエーデルワイス亭で過ごした時間は、とても心地のいい時間でした。このエーデルワイス亭は沢山の人の笑顔が溢れていて、この店に来る人は、いつも幸せな顔で帰って行く...そんなこの宿屋が俺は好きです。だから、エーデルワイス亭が潰れるのは、とても悲しいので君にもプライドがあるかもしれないけど、この借金は俺に払わせて下さい。これからも人々に幸せを届けるエーデルワイス亭が続いていきますように... シセスタより。


リンシャは驚き宿屋の外に出るが、もちろん、そこにシセスタの姿はない。

まだ人通りの少ない通りでリンシャは呟いた。


リンシャ「シセスタさん……」


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