初パーティー
エーデルワイス亭での十日目の朝だ。
朝食を摂ると冒険者ギルドに向う。
シセスタ(さて今日はどうするかな)
冒険者ギルドの扉を開くと・・・
エメリア「あっ!シセスタさん来ましたね。」
珍しくエメリアの方から声を掛けてくれたので思わずドッキとしてしまう・・・
シセスタ(エメリアが俺を待っていた?!なんだ不祥事を起こした覚えはない・・・)
疑問を抱きながら受付のカウンターに近づいていく・・・
シセスタ「う、ううん~ん!(咳払い)やあ!何の用かな?エメリア。」
エメリア「おめでとうございます!シセスタさん。十等級に昇格です!」
シセスタ「え・・・マジで。やった!・・・」
エメリア「こんな短期間で十等級に昇格された方は初めてです。ですから・・・・」
シセスタ「ん?ですから・・・」
エメリア「ちゃんと協調性がある冒険者になってもらう為に他の冒険者さんのパーティーに一時的に入ってもらいますね!こんなに早く昇格してしまってはシセスタさんが不正をしたと疑われてしまうので・・・」
シセスタ(なるほど・・・そういう事か・・・つまり…こんなに短期間に昇格したら他の冒険者に妬まれると・・・ギルド職員に賄賂を贈ったと思われる訳か・・・)
シセスタ「わかった。他の冒険者と組むよ。」
エメリア「物分りが良くて助かります。これは十等級の認識票です。常に首に吊り下げておいて下さい。ではインテリジェンスカードを更新するので提出をお願いします。」
受付にカードを提出すると更新を終えたカードがすぐに返却された。
エメリア「今日はあそこに座っている冒険者さんと一緒に今日一日行動を共にして下さい。同じ十等級の冒険者さんです。」
シセスタ(あっ、エイトとゲイザーだ・・・)
向こうも手を振っている・・・・話は通っているようだ。机に近づいて行く・・・
エイト「やぁ。アデル。しばらくだね。もう十等級になるなんて驚いたよ・・・」
ゲイザー「とは言え2年は俺たちが先輩だ!足引っ張んなよ~。」
シセスタ「よろしく頼む。先輩。頼りにしているよ。」
ゲイザー「おう!ドンと任せとけ!」
エイト「いつもトラブルばっかり起こすお前が言うか?・・・」
ゲイザー「おいおい!・・・俺が今までトラブルを起こした事あるっていうのか~?エイト。」
エイト「・・・さて・・・・どのトラブルから言うべきだ・・・・」
ゲイザー「チィ!妄言だぜ・・・」
エイト「まあ・・・妄言かどうかは、すぐわかるさ。今日もぐるダンジョンについてアデルに説明する。ゆっくり食べていても問題ないぞ。寝ぼすけ・・・」
ゲイザー「そりゃ~ 嬉しいね~ ご親切にどーもぉ!あまりの優しさに涙が出そうだぜ!」
シセスタ「依然から思っていたが、いつも二人ともこんななのか・・・・」
エイト「大体そうだな~ お互い憎まれ口を叩き合ってる。おはよう!の代わりみたいなもんさ。」
エイト「さて、ゲイザーが朝飯を食い終える前に説明を終えよう。終わってないとまたグズり出すからな~アイツは。」
今回もぐるダンジョンについて説明を受ける。
シセスタの依然潜ったダンジョンとは、かなり勝手が違う違うようだ。エイトによれば強力な魔物がおり、シセスタの潜ったダンジョンと違ってかなり深いらしい。連日たくさんの冒険者がパーティーを組み潜っている。
今、注目の稼ぎ場らしい。
シセスタ「聞いているぶんには楽しそうだな~・・・」
エイト「俺たちも今日初めて潜るから人の事は言えないが、浮ついた気持ちでは死ぬぞ?」
シセスタ「そうだな・・・すまん。エイト。君の言う通りだ。気を引き締めるよ。装備を付けてくる。」
エイト「そうしてくれ。演習場の隔壁のそばにある更衣室を使うといい。右が男性用だ。間違えるなよ?俺たちもいつも使ってる。」
シセスタ「そうか。ありがとう。」
教えてもらった通り更衣室に入り装備をつける。
ブーツを履き、ゲートルの代用布を巻きつけると 黒色のギャンベソン 量産の短い帷子 レザーアーマー ハーフヘルム ガントレット を身に付ける。
コイフは今回はつけないことにした。会話が聞きにくいと連携が取れにくいと考えたからだ。武器は選択に悩んだが使い慣れた強化シャードを使う事にした。
ラウンドシールドを背負い、最後に右の太ももにスローイングナイフx15を巻き付け固定する。
シセスタ「よし!準備完了!」
準備を終えたのでエイトとゲイザーの所へ戻るとゲイザーの方も朝食を摂り終えたようだった。
エイト「お!なかなか様になっているじゃないか?」
ゲイザー「どんな奴でも身なりを整えれば立派に見えるもんさ。にしてもハーフヘルムなんか被っているのか?冒険者として顔が売れないぞ?」
ふたりはそれぞれ感想を述べる
シセスタ「ありがとう。ふたりとも。どうする?すぐ立つか?」
エイト「ゲイザー?もういいな?」
ゲイザー「はい。はい・・・閣下。いつでもどうぞ・・・」
冒険者ギルドを出て移動開始する・・・
30分くらい歩いただろうか?依然シセスタの潜ったダンジョンとは反対方向にダンジョンの入口はあった。
ゲイザー「混んでやがるな~」
エイト「表現が間違っているぞ~ ゲイザー。こういうのは”賑わってる”と言うんだ。」
ゲイザー「どっちでも俺にとっては同じだ。エイト」
エイト「同じじゃないさ。そう思うだろう。アデル」
エイトが同意を求めてきたので同調する。
シセスタ「そうだな。微妙に伝わる意味合いが違ってくる。」
ゲイザー「ケッ!エイトめ!学のあるフリをしやがって… アデルもアッという間に手懐けられやがって…」
「お前たち|そっちのけがあるじゃねえか?気色悪りぃ!俺に近づくんじゃねぇ!」
エイト「んな訳ねぇだろう!」
シセスタ「んな訳ないだろう…」
ゲイザー「うげぇ!ハモりやがった!お前たちに背後預けるのが心配になってきたぜぇ!」
フザケって弄っていいるのかも知れないが、他の冒険者に絡まれても面倒だ。あからさまに同性愛をネタにした差別的言葉と態度に表すゲイザーを諌める
シセスタ「確かに男色は気色悪いが愛の形は人それぞれだ…仕方がない。あまり往来で馬鹿にしない方がいいと思うが?…」
ゲイザー「は?・・・」
ゲイザーだけではなくエイトをはじめ周りの冒険者も凍りついている・・・
エイト「(小声)おい!アデル!何を言い出すんだ!滅多なことを言うもんじゃないぞ!同性愛はどこの国や宗教でも道徳的・倫理的重罪だぞ?!それを擁護する発言をするなんて・・・」
シセスタ「(小声)そ、そうなのか?」
(しまった!…つい俺の前世の倫理観で諌めたのはマズかったのか?!・・・・)
ゲイザー「(小声)”そ、そうなのか?”じゃねぇよ!お前!知らなかったのかよ?!厳しい国では悪魔に通ずる性犯罪者として扱われて”火あぶり”だぞ!」
シセスタ「ひ、火あぶりィィィいい!!(驚)」
エイト「(小声)と、ともかく!そこの買い取り店に入るぞ!ほとぼりを冷ますんだ!(汗)」
ふたりに買い取り店に押し込まれるように入店する。
ゲイザー「まったく!余計な事をワザワザ人だかりで言いやがって・・・(呆れ)」
シセスタ「す、すまん・・・ふたりとも。」
エイト「まあ。いいじゃないか。ゲイザー。その内みんな忘れるさ・・・せっかく店に来たんだ何か買って行こう。」
組んでまだダンジョンに潜ってさえいない段階でふたりに迷惑をかけてしまった。最悪だ・・・
シセスタ「お詫びに何か。プレゼントするよ・・・」
エイト「おい!アデル!仲間っていうのはそうゆう気を遣う関係じゃないだろう?」
ゲイザー「そうだぜ!アデル!もう過ぎた事だ。気にすんなぁ!」
シセスタ(ふたりともイイ奴だ・・・だが、その優しさが刺さる・・・更に罪悪感が込み上げてきたぞ・・・)
シセスタ(せめてダンジョンでは頑張らねば・・・)
決意を新たに店の商品を見渡していく。
店の店員「らしゃい!何かご入り用ですか?」
シセスタ「ここでダンジョンで持っていて役立つモノは?」
店の店員「ううーん~そうだな~HPポーションと盾、あとランタンや松明だな。毒耐性ポーションや解毒ポーションも必須だ。」
シセスタ「そうか。じゃ…ランタンを3つと松明を10本、あと毒耐性ポーションと解毒ポーションを10個づつ頼む。」
店員「毎度あり。ついでランタンの燃料用の油瓶は?」
シセスタ「じゃ、30個ほど頼む。」
店員「わかった。他に何かいるか?」
シセスタ「このダンジョンの最新の地図はあるか?」
店員「結構、値が張るが?」
シセスタ「構わない。命には代え難いからな。」
店員「あんた長生きしそうだな? もっと長生きしたいなら魔物の図鑑も勧めるよ。」
シセスタ「その図鑑は最新?」
店員「もちろん。結構買ってくれたから少しくらいなら割り引いてもいい。」
シセスタ「乗せられている様な気もするが…商売上手だな~ 気に入った!それも貰おう。いくらだ。」
店員「ランタンx3 一つ100ユーフティス 300 松明x10一つ 10ユーフティス 100 毒耐性ポーションx10 一つ0.5ユーフティス 5 解毒ポーションx10 一つ1ユーフティス 10 油瓶x30 一つ1ユーフティス 30 活気あるダンジョンの途中までの最新の地図 100ユーフティス 最新魔物の図鑑 本来3000ユーフティスを2500ユーフティスで占めて3,045ユーフティスだ。」
シセスタ「お代の3,045ユーフティスだ。」
(完全に乗せられたな。勧めれた図鑑が一番高かった。だが500ユーフティス割り引いてくれたのは大きいな。)
店員「お代はたしかに… せいぜい長生きしろよ?青年。」
店を出るとゲイザーとエイトが待っていた。
ゲイザー「おせぇーぞ!アデルの坊ちゃん。」
エイト「俺も今出てきたところだ。気にするな…いい買い物が出来たか?」
シセスタ「すまん。スマン。ふたりとも。準備万端だ。いつでも行ける。」
エイト「こっちもだ。」
ゲイザー「とっと潜ろうぜ!」
シセスタ「行こう!」
インテリジェンスカードを監視員に提示して中にいよいよ中に入る・・・
シセスタ「意外と明るいな~!」
ダンジョン内は整備され明かりが灯っている事にシセスタはまず驚いた。
ゲイザー「入口だしな!」
エイト「だが気は抜けないぞ!気を付けて進もう…」
ゲイザー「ビビりな奴だな~エイト!肩に力を入れすぎだぜ?」
エイト「お前は力を抜きすぎだ!」
ゲイザー「うん?なにか?言ったか?」
ゲイザーが振り返った途端!何か音がした!!
床の作動音:カチャ…
ゲイザー「あっ…」
エイト「や…ヤバイ!!」
シセスタ「と!トラップだぁあああああ!!」
側面の壁が突然開き!トゲが一面に沢山生えた鉄パンが一瞬にして姿を現し!そして消えた!
あのまま一歩でも進んでいたらトゲが全身に刺さっていただろう・・・
ゲイザー「あ、あ…あぶねぇええー!」
エイト「ゲイザー?!大丈夫か?!”だから気を付けろ”あれほど言っているんだ!」
シセスタ「ラッキーだったな!」
ゲイザー「お、おう…」
エイト「とにかく慎重に進むぞ!」
シセスタ「少し待ってくれ!」
エイト「なんだ?アデル。」
シセスタ「念の為にこのダンジョンの最新の地図を買っていたんだ。これを見て進もう。」
ゲイザー「もっと早く出して欲しかったぜ・・・アデル。」
シセスタ「すまん・・・出すタイミングを逃した・・・」
エイト「ともかく地図を見ながら進もう。」
シセスタ「俺が先行する!」
ゲイザー「大丈夫か?」
シセスタ「俺は身体能力が高い。即死しない限り罠は避けられる!大丈夫だ。任せてくれ!」
一行は地図を見ながら慎重に進み始めた・・・
シセスタ「ちょっと待て!この先にトラップがあるらしいぞ!」
エイト「どれどれ・・・(地図を見る)」
シセスタ「解除を試みるぞ!いいな!」
エイト「わかった。しくじるなよ!ゲイザー!背後を警戒してくれ。」
ゲイザー「わかった。」
作業音;カチャ…カチャ… カチャ…カチャ… ガチャ!
シセスタ「フゥー(汗)」
脳内に≪罠感知・解除≫スキルを獲得したと表示されると
"聖人の特典により罠感知・解除スキルがアップグレードした!!!"と続けて表示された!!
ユニークスキル≪マスターキー≫獲得!
ユニークスキル≪マスターキー≫ありとあらゆるトラップやドア・宝箱を開ける事が出来る
シセスタ(新しいスキルか…)
「よし!解除出来たぞ!」
エイト「本当に出来たのか?」
シセスタ「もちろんだ。俺の後について来てくれ。」
パーティーは再び前進し始める…
エイト「アデル。そこにトラップがあるらしいぞ!」
シセスタ「そこのトラップは作動済みだ。どうやらツイてない奴が引っかかったらしい。」
エイト「分かるのか?」
シセスタ「ああ、ようやくトラップがどこにあるか分かって来たぞ!」
「ここから30メートル先に誰も発見してない隠し部屋があるみたいだ。」
エイト「なんでそんな事が分かる?」
シセスタ「風の流れが微妙に違うからだ。こっちだ。」
シセスタは隠し部屋がある壁につくと仕掛けを探し始める。
シセスタ「あった!」
隠し扉が開く音;ガリガリ!!ゴゴー!ゴゴー!
ゲイザー「マジかよ・・・本当にあるとはな・・・」
エイトも声こそ出さないが心底驚いた顔をしている。
部屋の中には宝箱があった。
ゲイザー「お!宝箱じゃねぇか!!」
ゲイザーが宝箱に急いで駆け寄っていく。
ゲイザー「すげぇー!デカしたぞ!アデル!」
ゲイザーが宝箱に手をかけ開けた途端・・・
でかいイモムシの魔物がゲイザーを捕食しよう頭から丸呑みにしていた!!
ゲイザー「うう!モゴモゴ…うう!んうーん!んんーん!」
エイト「ゲイザーぁぁあああ!!大丈夫かぁぁあああ!!」
シセスタ「今!助けるぞぉぉおお!頑張れぇぇええ!!」
シセスタが、でかいイモムシの腹をシャードで輪切りに叩き切るとエイトがゲイザーを引っ張り出す!
ゲイザー「ゴホ!ゴホゴホ!ウゲェー!ゼェー!ハァー!喰われるかと思った・・・」
エイト「はぁーはぁー(息切れ) ま、まったく! ゲイザー・・・ お前という奴は・・・」
シセスタ「エイトが行きに言っていた事が分かってきた気がする…妄言じゃなかった… 」
しばらくして全員が落ち着きを取り戻す・・・
ゲイザー「はぁー。ヒデぇー 目にあった・・・」
シセスタ「こんなバケモノもいるのか・・・肝が冷えたぞ・・・」
エイト「人食いワームだな。これに懲りたらひとりで不用意に宝箱に近づかない事だ…」
シセスタ「人食いワーム・・・」
魔物の図鑑を取り出す音:ゴソゴソ…
シセスタ「ホントだ…図鑑にも乗ってる・・・」
エイト「しばらく休憩しよう・・・地図によれば一階層は魔物の目撃例は、ないようだからな…」
全員が休憩に入る・・・
シセスタ「ゲイザー。何を食べているんだ?」
ゲイザー「干し肉だ。いるか?」
シセスタ「一口分だけくれ・・・」
ゲイザーが千切ってよこす・・・
シセスタ「ありがとう。」
さっそく咀嚼してみる・・・
シセスタ(前世の干し肉と違ってマズい・・・)
しばらく休憩を終えてパーティーまた移動をし始める・・・
螺旋階段を下りていき、いよいよ魔物だらけの二階層に突入する・・・
ゲイザー「やれやれ…ようやく二階層か・・・」
シセスタ「更に危険な魔物が出ると聞いたが?」
エイト「その通りだ。警戒を怠るな。死が横たわっているぞ…」
先行しているシセスタは索敵・危機察知・気配感知スキルを走らせて警戒しながら進んでいく・・・しばらくするとシセスタが何かに気が付いた!
シセスタ「しっー 前方に何かいる・・・」
手を挙げて後方のメンバーに制止を促すと全員が屈み警戒体制に入る!
エイト「あれは・・・ゲヘナスバイダーだな。大型の蜘蛛で糸や毒吐いて攻撃してくるぞ・・・」
シセスタ「弱点は?」
エイト「足は切り飛ばしやすい。動けなくなった所を攻撃すればいい。ただし自分で斬り飛ばした足に躓いてピンチにならないように気を付けろ!」
ゲイザー「先手必勝ぉぉおお!!うぉぉおおお!!」
シセスタ「なっ!!」
なんとゲイザーがひとりで突撃していった!!
エイト「ゲイザーのバカのせいで奇襲のチャンスを逃した!戦闘開始だ!やるぞ!!」
エイトも続いて突撃していったのでシセスタも続く・・・
エイト「ゲイザー!毎回一人で突撃するのは止めろと何回言えば分かるんだ!」
ゲイザー「うるせー!いつまでも話てたろー!あんなに待てるかー!」
シセスタ「そんなに話し込んでないだろう!」
戦いながら会話する・・・
エイト「足を斬り飛ばせ!関節を狙うんだ!」
ゲヘナスバイダーがゲイザーに気をとられている間に関節を狙い剣を振る!!
ゲヘナスバイダー:キシャャヤヤヤー
何本かの足を斬り飛ばされゲヘナスバイダーが悲鳴を挙げる!!
ゲイザー「ウラァァアアアアー!!」
動きの鈍ったゲヘナスバイダーにゲイザーが止め刺す!!
ゲヘナスバイダーの動きは完全に止る。
エイト「やったのか・・・?」
シセスタは鑑定・解析で見た状況を伝える。
シセスタ「完全に絶命したようだ。」
ワザと近づいて蹴り入れて証明する。
シセスタ「ほらな?」
ゲイザー「ふーはぁ!ふーはぁ!ザマー見やがれ…人間さまの実力を見せてやったぜ…」
エイト「はぁ…はぁ…とにかく…バックパックに、はぁ…はぁ…詰めよう。」
ゲイザーが宙に浮いている左腕輪のバックパックを操作するとゲヘナスバイダーが光の粒子となってバックパックに詰め込まれていく。
シセスタ(初めて他の冒険者がバックパックを使う所を見た…あーやって使うのか…)
「どうするふたりとも休んでくか?俺が見張りに立つが…」
エイト「悪い…頼めるか?」
ゲイザー「アデル…お前あれだけ動いてスタミナがあるな…」
シセスタ「気にするな。地上での借りを返すだけだ…任せろ。」
五感を研ぎ澄まし見張りに立つ…
8分くらいの休憩を挟んで二人とも息が整ったのか再び行動を開始する。
エイト「よし…だいぶ息が整った。行こう」
ゲイザー「よし!ドンドン狩るぜ!」
しばらく移動するとシセスタは再び手を挙げて後方のメンバーに警戒を促す!
シセスタ「(小声)この先の曲がり角の部屋からカサカサと音がする…」
エイトが曲がり角からこっそり様子を伺い偵察する…
エイト「(小声)バリヤーズアント数匹だ。ギ酸や噛み付き攻撃に注意しろ。」
シセスタ「分かった。」
ゲイザー「何をトロトロしてるんだ!はやくやっちまおうぜ!」
なんとゲイザーがまた突出していった!!
エイト「・・・何回言っても直らないな・・・」
シセスタ「またか?!アイツには学習能力というものがないのか?!」
二人とも急いで後を追う・・・
ゲイザーはバリヤーズアントを一匹を片付けたが他のバリヤーズアントの噛み付き攻撃にやられ足を噛みちぎられていた!!
ゲイザー「ギャァアアア〜 あ、足がぁぁあああ!足がぁぁああ!」
ゲイザー「た、助けてくれー!!」
エイト「ゲイザー!!言わんこちゃない!傷口を塞いでろ!すぐ行く!」
シセスタ「なんてこった!!なんとかする!!そこを動くな!」
バリヤーズアント:ギギギィィィイイイ!!!
こちらの方がより危険だと判断したのか
残りのバリヤーズアントがギ酸を飛ばしてくる!!
ギリギリで攻撃を避けると一気に距離を詰めシャードで強襲する!!
あっさり残りのバリヤーズアントを片付けるとゲイザーの元に駆け寄る!!
エイト「なんて鮮やかな手際だ・・・」
エイトがシセスタの実力の高さに唖然としたが、すぐに我に返りゲイザーの元に駆け付けた。
エイト「ゲイザー!しっかりしろ!大丈夫だ!必ずここから連れ出してやる!」
シセスタ「エイト!今からヒールを使う!周りを警戒してくれ!」
エイト「?!シセスタ、お前!ヒールが使えるのか?だがヒールじゃ・・・」
シセスタ「大丈夫だ!!俺のヒールは特別だ!!ゲイザーを助けたいなら俺を信じろ!!!」
エイト「あ・・・クソ!えええーい!何が何だか分からんが分かった!頼む!ゲイザーを助けてやってくれ!!」
エイトが周辺の警戒に入ったので“ファイナルヒール”を使うため神経を集中する・・・
シセスタ(落ち着け!俺なら出来る!手の平に魔力を集中して丸い光の玉をイメージするんだ・・・そして暖かな癒しの性質を変えるんだ・・・ファイナルヒール!!!)
暖かな光に包まれゲイザーの噛みちぎられた足が再生していく!!
外傷が激しかったので30秒ほどの時間を要したがゲイザーの足は完璧に再生した。
シセスタ「よし!完治したぞ!ゲイザー。動けるか?」
ゲイザー「あぁ…気分は良くないが…ありがとう。」
エイト「驚いたよ…本当にヒールを使えるんだな!シセスタ。…いや!欠損した部位を完全に再生したんだからハイヒール以上の治癒魔術…苛烈な修行を積んだ者にしか使えないというエクスヒールか?そんな高位の術者なんて、お前本当に半人前の十等級か?」
シセスタ「ああ。正真正銘の十等級なり立てだ。ただ知識を除いて以前の記憶がスッポリ抜け落ちているが…」
エイト「お前記憶喪失だったのか?!」
シセスタ「ああ。ほら?つい一ヶ月前赤熊騎士団が駐屯していただろう?」
エイト「ああ。確かにあったな?」
シセスタ「あの時に行き倒れていたうえに山賊に囚われた俺を運良く赤熊騎士団が助けてくれたんだ。」
エイト「そんなことが・・・大変な経験をしたんだな・・・」
シセスタ「ああ。あれは本当に大変だったよ。赤熊騎士団が、もし助けてくれなかったら、あのまま死んでいたか山賊に殺されていただろうな…」
ゲイザー「思い出話しは、そこまでだ…気分が落ち着いたから行こぜ…」
エイト「もうカラダいいのか?ゲイザー。」
ゲイザー「ああ。ふたりともスマねー。迷惑を掛けたな…シセスタ助かったよ…命を救われたな。」
シセスタ「気にするな。仲間だろ?」
エイト「流石に懲りただろう?これを機に一人で突っ込むのは止めるんだ。」
ゲイザー「ああ…わかったよ…」
さすがのゲイザーも思い直したのか素直に返事をした。
エイト「さて、まだ稼ぎが足りない。折角ここまで来たんだ。どんどん狩っていこう。」
その後も一行はゲヘナスパイダーやバリヤーズアントを狩っていく!
シセスタも“解体スキル”をDeactivated状態のままバックパックに詰め込んで行く。
シセスタ(パーティーで取り分を明確にする為に解体スキルを無効化してバックパックも初めて使ってみたが魔物のカードは当然出ないしバックパックに出し入れする度に容量に応じて魔力は消費するし、かなり大変だ)
(他の冒険者は、みんなこんな大変な思いをしているのか…しかも敵陣の中で解体する暇もない…儲からないじゃないか?これ?)
そんな事を考えながら目の前の敵を倒していっていると突然、奥のダンジョンからデカい何かが高速で接近してくるのを感じた!!
シセスタ「エイト!ゲイザー!気を付けろ!!何か良くないのが来る!!」
ゲイザー「何が来るって言うんだ!」
シセスタ「分からん!とにかく逃げる準備をしておけ!!」
ゲイザー「へっへっへっ!!もちろん!倒してもしまっても問題ないんだろ?!」
エイト「ゲイザー!まったく!さっき死にかけたをもう忘れたのか?!この鳥頭!!」
シセスタ「来るぞ!!!」
言い合いをしていると体長4メートルはありそうな強大なカマキリが現れた!!
エイト「や!やばい!!あ、あれは!バイディグマントスだぁあああー!!逃げろぉおおおー!!」
ゲイザー「バイディグマントスだとぉおおお!!!逃げろぉおおおー!!」
あんなに意気込んでいたゲイザーが顔を真っ青にして真っ先に逃げ出す!!
走りながら尋ねる…
シセスタ「そんなにヤバイのかアイツ!!」
ゲイザー「ヤバイなんてモンじゃない!!俺でも知ってる!!鋭い鎌と素早い動きで獲物を捕食する昆虫型の魔物だ!!一度捕まったら最後!強靭な顎で頭蓋骨ごと噛み砕いて喰われるぞ!!」
聞いて悪寒が走った!!
シセスタ「なにそれチョーヤバイじゃん!!」
(道理で二人とも死ぬ気で逃げる訳だ)
エイト「くそぉ!!どうする!!このまま逃げていても追いつかれる!!」
ゲイザー「うるせぇえええ!!!泣き言言うなぁあああー!!!一階層に繋がる階段まで逃げるんだよ!!!こんな所で死んでたまるかぁあああー!!!」
ゲイザーはそう言っているが凄まじい勢いで距離が縮まって行く!!
エイト「もぉう!!ダメだぁあああー!!!このままじゃ階段に行くまでに追いつかれるぅうううー!!!俺たちみんなここで死ぬんだぁあああー!!!」
ゲイザー「くそ!!くそ!!くそ!!」
ふたりはパニック状態だ!!!
シセスタ「仕方がない足止めをするか・・・」
ゲイザー「足止めなんてどうやってするんだ!!!」
エイト「そうだ!!!絶体絶命だ!!!」
シャードをしまい“村人の弓”と矢1本を口に咥え、もう一本を取り出す・・・
そのまま走りながらジャンプし後ろに回転し反転すると素早く弦を引きバイディグマントスに速射する。
バイディグマントス;キシャー!!!っギギギ!!!
見事にバイディグマントスの腹に命中する!!!
脳内に“速射スキル”と“狙撃スキル”を獲得したと表示される!!!
エイト「余計に怒らせてどうする!!!余計な事をするなぁー!!!」
シセスタ「落ち着け!考えあっての事だ!!!ここからが本番だ!!!」
口に咥えていた矢を弓に矢継ぎすると先ほどのように反転し弦を絞る!!!
“速射スキル”と“狙撃スキル”をアクティブにすると今度はバイディグマントスの動いている上に的の小さい関節部分を射抜く!!!
バイディグマントス;キシャャヤヤヤーーーー!!!
バイディグマントスが自身の勢いで盛大に転ぶ!!!
シセスタ「よーしー!!!時間が稼げた今のうちだ!!!」
ゲイザー「す…スゲェー・・・」
何とか一階層の螺旋階段まで全員で逃げて来る事が出来た・・・
エイト「・・・間一髪だったな・・・」
ゲイザー「命拾いしたぜー」
シセスタ「今日は帰らないか?」
エイト「ああ。そうだな・・・今日は疲れた、もう帰ろう・・・」
ゲイザー「賛成だ…今日は十分稼いだ・・・これ以上疲労状態で戦闘をするのは危険だぜ・・・帰って休むべきだ。」
ふたりともシセスタの提案に同意しパーティーは来た道を引き返し始めた・・・・
――――――――――――――――――――――――――――――
=ルルカ=
=point of view=
――――――――――――――――――――――――――――――
ルルカ達のパーティーは危機的状況に陥っていた。
悪い冒険者A「へっ!へっ!へっ!嬢ちゃん達!俺たちに付いて来てもらおうか!」
悪い冒険者B「ひっ!ひっ!ひっ!」
悪い冒険者C「ゲヘヘ!俺たちと楽しもうぜ?」
エリザベス「消し炭になりたくないなら退きなさい!アンタ達!」
セラ「弱い消耗した冒険者の同胞を襲って収集品を横取りするなんてあなた方に恥はないのですか?!」
ルルカ「そうだよ!こんな事許されないよ!犯罪行為だもん!!」
悪い冒険者D「ガハッ!ハッ!ハッ!おい!聞いたか?恥だってよ?」
悪い冒険者E「ギャ!ヒャ!ヒャ!ヒャ!犯罪行為?知ってるてっの!`∇´バカじゃねぇ~?!コイツ。」
悪い冒険者F「まあ、頂くのは金や収集品だけじゃないがな!久しぶりの女の冒険者だからな!そのカラダで楽しませてもらぜぇ!ゲヘヘヘヘヘヘ!!!」
フラン「くっ!…この下衆!だから男は嫌いなのよ!!!」
ルルカ(いったい、どうすれば…このままじゃ・・みんな!)
ルルカ達のパーティーは消耗が激しい・・・
後衛のフランとエリザベスは魔力切れ寸前、盾役のセラはスタミナの消費が激しく満身創痍だ・・・
斥候役のルルカはリーチの短いナイフと度重なる戦闘でボロボロ装備
各ポーションは全部使い果たしてしまった!!
ルルカ(お願い!誰か…はやく通りかかって・・・)
他のパーティーが通りかかる事を期待して先程から時間を引き伸ばしているが誰も通りかからない…
悪い冒険者F「おっと!・・・言っておくが他のパーティーの増援を期待しても無駄だせ?ここから先には人払いの魔道具を使ってある。連中は通路があっても幻覚を見てこっちには来ない。助けなんか来ない。」
ルルカ「そんな!・・・」
悪い冒険者E「ヒャ!ヒャ!ヒャ!俺たちを怒らせない方が身の為だぜ!早く武器を捨てな!可愛がってやるからよぉ!」
フラン「フザケないで頂戴!誰がアンタ達みたいな男に!身体を好きにさせるものですか!!」
悪い冒険者D「ガハッ!ハッ!ハッ!気の強い女だぁ…こうゆう女をねじ伏せてブチ込むのは何回やっても堪らないなぁ!犯すのが楽しみだぁ!」
フランは恐怖と焦燥で顔を歪める!!
悪い冒険者C「ゲヘヘ!出来れば傷つけずに全部手に入れたかったが仕方ねぇ…やっちまえ!」
男たち6人が剣を抜く!
――――――――――――――――――――――――――――――
=シセスタ・アデル=
=point of view=
――――――――――――――――――――――――――――――
順調に出口に向かっている。
エイト「はぁー。はっー。よし…。順調だ…」
ゲイザー「はぁーはぁー。なぁ…あと、もう少しだよな・・・」
シセスタ「なあ?ふたりとも大丈夫か?」
ふたりは完全にバテている・・・
ゲイザー「生意気言うな・・・大丈夫に決まっているだろう・・・」
エイト「そうだぞ・・・二年先輩を・・・ナメるな・・・」
だが、ふたりの先輩としての自負とプライドがシセスタの心配を許さない!
ふたりの心配をして気を取られていると
シセスタ「あれ?こんな道だったけ?ここ?」
ゲイザー「はぁーはぁー。おい…マジかよ~ エイト…道を間違えたのか?」
エイト「はぁーはぁー。そんなハズは…あれ?」
地図を広げエイトが首をかしげる。
シセスタ「見せてくれ」
エイト「ああ…元はと言えば…お前の地図だしな…」
地図を渡される。
シセスタ「・・・おかしい・・・」
ゲイザー「はぁーはぁー。何がおかしいんだ?」
シセスタ「俺の記憶でもこのルートであっているハズだ…エイトは地図を間違えてない…」
ゲイザー「はぁーはぁー。・・・つまりどうゆうことだ?」
シセスタ「行きの記憶と地図を合わせれば、ここの壁はなかった…道があったが…」
シセスタは壁を触って確かめるすると・・・なんと手が壁を通り抜けた!
シセスタ「幻覚魔法・・・」
ゲイザー「はぁーはぁー。いったいどうなって、いやがるんだ?はぁーはぁー。このダンジョンのトラップの一種か・・・?」
エイト「はぁーはぁー。こんなトラップは聞いた事がない・・・」
ふたりは困惑しているが、シセスタは断言する!
シセスタ「どうやらトラップじゃなさそうだ・・・この先で剣戟が聞こえる!」
ゲイザー「はぁ。はぁ。誰かが魔物と?」
エイト「はぁーはぁー。剣戟と言ったろ・・・人間同士の戦闘だ・・・」
シセスタ「悪いが俺は先に行く!!」
シセスタは常人離れスピードで走り去って言った。
エイト・ゲイザー「速えぇー・・・・・・・」
――――――――― 高速移動中 ―――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――
=ルルカ=
=point of view=
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悪い冒険者C「オラァー!!!」
ルルカ「きゃ!痛っ!」
切られた部分から血が滲む・・・
悪い冒険者F「ゲヘヘ!お仲間も弱ってきたな~?」
セラ「はぁはぁ。」
エリザベス「魔力さえ残っていれば・・・こんな奴・・・」
フラン「くっ!もうMPが・・・」
ルルカ(そんな・・・ここまでなの?・・・こんなヤツらに…好きされてしまうの?)「お願い!仲間だけは助けてあげて!」
悪い冒険者F「おっと~ 美しい友情ごっこだな~? だが!全員俺たちの獲物だ…見逃すわけないだろう?」
余裕すら感じる男の下卑た笑顔にルルカは恐怖を覚え固まってしまう。
悪い冒険者F「ゲヘヘヘヘヘヘ!!!」
男が手を伸ばして近づいてくる!!!
ルルカ(い…いや…来ないで…に、逃げなきゃ・・・)
だが、恐怖と切られた痛みと恐怖で足が動かない・・・
ルルカ(お願い!助けて・・・誰か・・・)
助けを乞いたその時だった!!!
悪い冒険者A「ギャァアアア!!!」
突然、敵の冒険者の悲鳴がダンション内に木霊する!!!
――――――――――――――――――――――――――――――
=シセスタ・アデル=
=point of view=
――――――――――――――――――――――――――――――
前方に誰か立っていたので威力偵察をおこなう!!
とりあえず優勢なパーティーの方にスローイングナイフを投げる!
???「ギャァアアア!!!」
???「な!なんだ!どうした!」
???「な、ナイフが飛んで来た!!!さ!刺さった!」
???「アイツだ!アイツが飛ばしてきた!」
???「馬鹿な!いったいどうやって来やがった?!!」
???「迷い込んで来たのか?何のために大枚叩いて魔道具を買ったんだ!!」
シセスタ「おい!いちおう聞いておいてやるが、まさかボロボロの女のパーティー方がお前たちを襲っているなんて馬鹿な状況じゃないよな?」
???「何だテメェ!邪魔をしようっていうのか?!テメェの身包みも剥いでやる!!」
シセスタ「自分たちが優勢だと思ってワザワザ白状するとはな?お前たちのような怠け者くれてやるのは鋼の刃だけだ!!」
悪い冒険者F「そちらこそ、まるで自分が優勢のような口ぶりだな?たった一人で何が出来る!!!コイツを殺せ!!!」
悪い冒険者E「やっちまえ!!」
悪い冒険者D「死ねや!ヒーロー気取りー!!」
悪い冒険者C「お前の金を数えるのが楽しみだ!」
悪い冒険者B「うりゃゃやややー!!!!」
悪い冒険者A「やぁあああああー!!!!」
シセスタ「チィ!全員か・・・」
(オーバータイムレイジ!)
なんと武器を持って6人全員でかかって来た!!一刻の猶予もない危険な状況だと判断したシセスタは人目も気にさずに切り札の《オーバータイムレイジ》を使用した!!!
来る途中で持ち替えておいたシャードで素早く殺傷していく!!!
一人目を敵の攻撃を避けると首筋を切り裂く!!
「ぎゃああぁぁ・・・」
続けて二人目・・・
「ああぁぁ・・・」
二人目は首筋を抑えながら絶命した!
三人目は右足の腱とフクラハギを切り裂きながら後ろへ滑り込み左首筋に刃をあて引き裂く・・・
四人目「なっ!」
ありえない素早さで近づいてきたシセスタに四人目が驚いている間に腹を刺し四人目が痛みで反射的に腹を抑え屈む動作に乗じて前側からシャードでヘッドロックかけシャードを一気引き抜いた!!!四人目は、そんまま床に倒れこむ・・・
五人目「うぁああああああ!!」
恐怖心を隠せない五人目が勇気を振り絞って突貫してきた!!シセスタを殺すには今しかないと感じたのだろう。だが勢い余ったのかシセスタが足を引っ掛けると盛大に転んでしまった。五人目が起き上がる前にシセスタは無慈悲にも転んだ五人目の首に剣を突き刺した・・・
六人目「な、なんなんだ!!お前は!!!」
最後の六人目は恐れおののいていた。無理もない優勢だと思っていたのにあっという間に仲間5人が殺されてしまったのだ!
六人目「く、クソ!覚えていろ!」
シセスタ「逃がすか!」
六人目が逃げ出そうしたので被っていたハーフヘルムを“投擲スキル”で六人目めがけてぶん投げる!!
六人目「うっ!」
ハーフヘルムが頭上を直撃しを六人目は気絶した。
女性のパーティーの面々は突然起きた事に唖然としている。
水色髪のオレンジ色の目をした女性「あ、あの?あなたは?」
シセスタ「俺はシセスタ・アデルだ。異変を感じて救援に来た。君は?」
セラ「私はセラ・アンダスターです。ご助力感謝します。シセスタ殿。」
シセスタ「誰か怪我人は?」
セラ「私は大丈夫ですが、ルルカさんが!」
シセスタ「ルルカと言うのは、あの赤毛の子か?」
セラ「そうです。相手の剣を避けきれず怪我を・・・厚かましいお願いですがHPポーションを譲って下さいませんか?」
シセスタ「俺が治療しよう。他のふたりを見ててやってくれ。これを・・・」
MPポーションをセラに2つ渡す。
セラ「重ねて感謝します。シセスタ殿。」
ルルカと少女に近づき声をかける。
シセスタ「おい。ルルカとか言う奴、大丈夫か?」
ルルカ「大丈夫…怪我は大したことないよ。ありがとう。助けてくれて。ケガ…跡になっちゃうかな…」
シセスタ「心配するな!しっかり治してやる!ヒールをかけるからケガを見せてみろ。」
ルルカは半信半疑で傷を見せる。剣で切られたのか右腕と左足がパックリ切れている・・・
シセスタ(ファイナルヒール・・・)
暖かな光に包まれルルカの傷はみるみる治っていく・・・ルルカは傷が治って元気になったのか表情が明るくなった。
ルルカ「す!すごい!傷跡が一つもない!ありがとう!えええっとー・・・」
シセスタ「シセスタ・アデルだ。」
ルルカ「ありがとう!シセ!」
いきなり愛称をつけられる。
シセスタ「お…おう!・・・どういたしまして?」
直球で感謝の言葉を言われた照れくささと心理的距離が近さにシセスタは困惑を隠せなかった。
照れ隠しに足にしていたゲートルの代用布を解き気絶している悪党をキツく縛りあげ、ハーフヘルムと投げたスローイングナイフを回収する。
他のふたりの魔法使いの子達もMPポーションで魔素切れが解消したのか大丈夫そうだ。
フラン「ふん!別に助けてもらわなくても大丈夫だったわよ!」
エリザベス「そうよ!頼んでないわ!」
憎まれ口を叩くくらい元気だ…( `д´)ケッ!
そうこうしている内にゲイザーとエイトもようやく追いついて来た。
シセスタ「ようやく来たか?ふたりとも遅かったな?」
エイト「これは!いったい・・・何が起こったんだ・・・」
ゲイザー「これ全部・・・お前がやったのか?」
シセスタ「ああ。まあ…な。」
武器を全部しまって気絶した悪党を抱えながら答える。
シセスタ「もう幻覚魔法の効果はないようだ。帰ろう。」
全員が帰路に着く。
幸いにもダンジョンからはすぐ出られた。
ゲイザー「何とか生きて出られたか・・・」
エイト「今日は散々だったな~」
アデルはダンジョンの入口の衛兵に気絶している悪党を突き出す。
セラのほうは襲われた旨を説明している。
セラ「ありがとうございます。アデル殿。助かりました。」
シセスタ「お安い御用だ。仲間を待たせてる。じゃあな。」
シセスタは買い取り店にゲイザーとエイトととも収集品を売るため店に消えていった。
解体していないバリヤーズアント25匹とゲヘナスバイダー8匹を出す・・・
バリヤーズアント25匹 1匹5ユーフティス 合計125ユーフティス
ゲヘナスバイダー8匹 1匹15ユーフティス 合計120ユーフティス
合計245ユーフティスを三人で山分けしエイトとゲイザーが82ユーフティスづつ、シセスタは81ユーフティスを山分けした。
ゲイザー「いや~。儲かった!儲かった!」
シセスタ「パーティーでの稼ぎは、いつもこのくらいなのか?」
エイト「ああ。ポーション代や装備代で赤字の時もあるが今日はかなり儲かったほうだ。君のおかげだ。」
シセスタ「それは良かったよ。これからふたりとも帰るのか?」
ゲイザー「いや宿に泊まる!!これだけあれば当分は新人冒険者用の集団生活寮とはおさらばだ。」
シセスタ「そんな場所が?」
エイト「ああ。町外れにな。宿泊は無料だが・・・自炊だしベットはないし昼は暑くて夜は寒い。虫がいっぱい出るのもやれないが便所は特に強烈だ。もちろん集団生活だからプライバシーもあったもんじゃない寝袋があってもキツい。おまけに屋根もない。男女こそ別れているが・・・」
シセスタ「なるほど。ありがとう。もういい・・・」以外の言葉を失う・・・・
ゲイザー「そうゆうアデルはどこに?」
シセスタ「俺は幸いにもまだ、そこには縁がなさそうで良かった・・・良かったら冒険者ギルドに寄らないか?最後に勝手な行動をした、お詫びに飯を奢るよ。」
答えをはぐらかす・・・エーデルワイス亭に来られても面倒だ。
ゲイザー「おお!太っ腹!いいぜぇ!」
エイト「悪いな。取り分は俺たちの方が1ユーフティス多いのに・・・」
シセスタ「気にしないでくれ。今日の俺の強さは見ただろう?ソロプレイの過ぎた後輩の頼みだ。いくらでも飲み食いしてくれ。」
エイト「じゃ…お言葉に甘えて。」
何とか話題を逸らすことに成功した。
ついでに冒険者ギルドの食堂で奢って泊まっている宿の話をそらすのと同時に二人に今日の活躍ぶりをエメリアに喧伝してもらった。
シセスタ(俺って頭いい!)
食事代は三人で35ユーフティスかかったが得たものに比べれば安いものだ。
ゲイザーは酔いつぶれエイトに抱き抱えられていった。
シセスタ「俺も帰ろう。」
エーデルワイスに帰り寝室で“歯ブラシの棒切れ”を使い歯を磨くとその日はそのまま寝た。