イーニスの暗部と白青騎士団
目が覚める。留置場を出て6日目だ。
シセスタ・アデルは、まだ眠い目を擦りながら食堂に降りる。
リンシャに0.5ユーフティスを支払い、いつものように朝食を取ると
エーデルワイス亭を後にする。
しかし、シセスタ・アデルは、冒険者ギルドとは違う道を進み始める。
迷ったのではない。
シセスタ(気分を変えて今日は街の郊外に行ってみよう・・・)
シセスタは、フェイルシュタットの城壁に足を進め始める。
収容所の近くの城壁入り口に差し掛かると、
門の番兵の検問に出入りをしたい人たちの、
人だかりが既にできていた。
順番待ちのようだ。
シセスタも他の人達と同じように列に並ぶ。
10分くらい並んでようやく順番がやってきた。
番兵「よし!行っていいぞ!次の奴こっちへ来い!」
「身分を示すものを、見せろ!」
言われた通りインテリジェンスカードを見せる。
番兵「十一等級の冒険者か・・・」
「なんの目的でフェイルシュタットの外へ行く?」
シセスタ「弓と魔法の練習をするために、人気のない所まで行くつもりです。」
番兵「そうか・・・」
「聞いているかも知れないが、いま森には入るなよ!」
「なんでも、かなり強いオーガの変異種が森林地帯に目撃されて、」
「多数の人が、食い殺されているそうだ。」
シセスタ「危険そうですね。わかりました森林には入りません。」
番兵「そうしたほうがいい。」
「まあ、近いうちに討伐されるだろう。」
「昨日から、オーラシアの白青騎士団が征伐にフェイルシュタットを発ったからな・・・」
シセスタ「それは心強いですね。情報に感謝します。」
「お疲れ様です。お仕事頑張って下さい。」
番兵「お前も気をつけろ。魔物はオーガだけじゃないんだからな!」
初めてフェイルシュタットの外に出る。
郊外は広大な農園と牧草地 が広がっていた。
農園で働いている人達に目を見張る。
恐らく貴族か大地主の荘園だろう・・・
肥えた小領主らしき人物が、
椅子に座ってフゾリかえり、農奴たちを顎でこき使っている。
その中で一際目に引く格好の集団がいた。
鎖で手足を繋がれ、汚れたボロ布を見に纏った。
見るからに奴隷とわかる集団が重労働の作業をしている。
奴隷たちはやせ細っており、目は虚ろで
ひと目で栄養失調だとわかる。
(世紀末の光景だ・・・これはヒドイ・・・)
とはいえ、他人の所有物。シセスタにはどうする事もできない。
もし、ここで彼らの所有者を非難したとしても、
シセスタは奴隷たちに、次の職場を用意してやれない。
結局、彼らは行き倒れてしまうだろう・・・
奴隷を眺めながら歩いていると、小領主の部下と思われる小作人が、
少年の奴隷とその父親らしき人物を叱りつけている。
聞き耳を立てる・・・
小作人「まったく!なんてことをしてくれたんだ!」
奴隷の父親らしき人物「一切申し開きのしようもございません。」
奴隷の少年は、怯えている・・・
奴隷の父親らしき人物「ですが、息子はまったく悪くございません」
「どうかご容赦いただけないでしょうか?」
小作人「この役立たずがぁぁぁあー!!」
小作人は突然父親らしき人物を蹴る!
父親らしき人物は、倒れ込んでしまった・・・
奴隷の少年「父ちゃーん!」
奴隷の少年は父親に駆け寄ると小作人を憎悪の籠もった目で睨みつけた。
小作人「なんだぁぁぁあ!!その反抗的な目はぁぁぁぁあ!!」
小作人が少年まで危害を加えそうな勢いなので、
首を突っ込むか迷っていたが、突っ込むことにした。
シセスタ「そんなに大声で、どうかなされたんですか?」
小作人「うるせぇえええ!あんたには関係ないだろう!」
シセスタ「いや~スイマセン。ですが、あまりにも大きな声で叫ばれたもので・・・」
「魔物にでも襲われたかと思いましてね・・・」
小作人「魔物じゃねぇぇええ!このクソガキがぁぁあ!」
「大事な商品になる作物を盗み食いしやがっただけだ!」
「魔物よりタチが悪いぜぇぇええ!」
シセスタ(それアンタのほうじゃないなろうか・・・こんなにガリガリで・・・)
「なるほど!盗みは良くないですね。」
小作人「そうだろう!だから俺が教育してやっているんだ!」
シセスタ「で・・・どれくらい盗み食いされたんです?もちろん、現場は目撃されたんですよね?」
小作人「それは・・・コイツらのふてぶてしい態度を見ればわかるだろう!」
奴隷の少年は突然、口を開き反論した!
奴隷の少年「盗み食いなんかしてないやい!」
「そのオッチャンが、無茶苦茶な知識で俺たちに栽培させるから!」
「収穫量が少なかったんだ!」
「そしたら!お前が盗み食いをしたんだろう!って・・・」
小作人「このクソガキ!余計な事をペラペラと!!」
「こんな収穫量で怒られるのは俺なんだぞぉぉぉおお!」
シセスタ(もう・・・なんかねぇ・・・結局コイツの八つ当たりじゃん・・・)
白い目で見ながらシセスタは小作人に尋ねた。
シセスタ「ところで、奴隷の持ち主って君?」
小作人「そんなわけ、ねーだろ!小領主様の持ち物だ!」
シセスタ「じゃ・・・下っ端の君が小領主の持ち物を大切にしなきゃマズイじゃないの?」
そう言って父親らしき奴隷を指差す。
小作人「そう言われれば・・・そうだな・・・」
小作人は冷静になったのか青ざめていく。
シセスタ「まあ・・・あなたの気持ちも分かるから、次からモット気をつけたほうがいいですよ。」
「周りが目撃してますし、誰か喋ったらその小領主の耳に入りかねませんよ・・・」
そうゆうと、シセスタは50ユーフティスを取り出し、小作人に渡す。
シセスタ「50ユーフティスあります。これで小領主様の持ち物である奴隷に手を挙げてしまったことに対して謝罪しに行って下さい。そのほうが、あなたのイメージも落ちないでしょう。」
シセスタ「俺はこの奴隷をポーションを与えて、少年に介抱させますから・・・」
小作人「すまん!ありがとう!そうさせて、もらうよ!」
小作人と話がついたので、以前、フロッグ商会で買ったHPポーション(小)を父親の男性に駆け寄り分け与える。
小作人が蹴った箇所にHPポーション(小)をかけると、男性の苦痛な表情が緩んでいく。
(効いてるようだ。良かった。)
シセスタ「恐らくもう大丈夫だろ。ボウズちゃんと父ちゃんを介抱してやれよ。」
奴隷の少年「ありがとう!銀髪の兄ちゃん!」
屈託のない笑顔でお礼を言われた。
立ち上がろうとすると、父親のが口を開いた。
奴隷の父親「ありがとう・・・こんな時代にアンタみたいな、いい人もまだ・・・いるんだな・・・」
「何も・・・礼が出来なくて・・・すまない・・・」
シセスタは無言のまま立ち去った。
(俺がエーデルワイス亭で食べていた食材もあの人たちが作っているんだろうか?・・・)
この世界イーニスの不条理をまた知ったシセスタであった・・・
―シセスタが目的地へ向かっていたその頃―
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=白青騎士団 マルギレッタ・ローレンス=
=point of view=
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???〈ドゴォォォーン!! バキバキバキ!! ボォーン!!〉
凄まじい轟音と共に、生木が折れ裂けていく音が聞こえる。
白青騎士団に入団して間もない新米騎士マルギレッタ・ローレンスは、焦り眼の前の光景に恐怖心を抱いていていた。
先輩騎士A「ローレンス卿!棒立ちになるな!死にたいのか!」
先輩騎士B「散開だ!散開しろぉぉおお!!攻撃を受けているぞ!」
先輩騎士C「敵は一匹だ!木を盾になんとしても回り込め!!ッツ!!」
???〈ゴォォォーン!! 〉
騎士「ぎゃぁぁぁああ!!」
先輩騎士D「ふ!負傷者が出たぁぁああ!!衛生兵!!」
魔法兵A「こちらは、火力支援で忙しい!!手の開いてる者はいないか!」
魔法兵B「クソ!森が邪魔で、攻撃が当たったかわからない!」
魔法兵C「負傷した騎士を見てきます!」
騎士たちは、山岳戦の訓練もしているが、ここまで速い移動力と堅牢な防御力・攻撃力を兼ね備えたオーガが巨石を投げ遠距離攻撃してくる
知能のある魔物にゲリラ攻撃されるとは予想していなかった。
まるで、森全体が要塞化され攻撃されている感覚に陥る!
騎士や魔法兵も負けじと応戦するが、木や草に視界を遮られ被害は増す一方だった。
突如!散開していた先輩騎士たちの怒号と悲鳴が聞こえた!
先輩騎士D「きゃぁぁっぁああ!!」
先輩騎士F「うぁぁぁあああ!!」
騎士団長の怒号が響く!!
騎士団長「誰だ!散開しろ!と言った奴は!!無闇に全員離れるな!各個撃破されているぞ!!」
マルギレッタ「で!でも!団長!常に動き回らないと飛んでくる巨石で狙い撃ちにされるでありますよ!」
騎士団長「えぇえい!わかっとるわ!そんくらい!」
騎士団長は、新米騎士の指摘にキレながらも、冷静に指示を飛ばしていく。
騎士団長「魔法兵はそのまま魔力支援を継続!騎士隊は油と火を持ってこい!」
「多少火事になっても構わん!!俺が責任を取る!森に火を放ち、奴を燻り出す!」
白青騎士団は指示通り迅速に行動を開始した!
森に放った火は、みるみるうちに、森林を覆っていく・・・
騎士団長「白青騎士団は一時、平原まで後退!森林外で奴を迎え撃つ!」
マルギレッタ「本当に変異種は我々の方に来るのでありますか?団長殿?」
騎士団長「心配するな!奴は魔物にしては知能が高く!住処を燃やされ相当に怒っている!」
「必ず我々に報復に来るはずだ!そこを迎え撃つ!」
マルギレッタ(ううぅ・・・できれば来ないで欲しいのであります。)
マルギレッタと思いとは裏腹に、しばらくしてその時は訪れた・・・
???「グウォォヲヲヲオオオォオォオ!!!!!!!!」
燃えていた山林から突然、世にも恐ろしい怒りの咆哮が木魂する。
自分の住処を燃やした者たちへの復讐を誓う咆哮だ!!
騎士団長「総員!戦闘態勢!!!!」
白青騎士団と変異種オーガの戦いが始まる!!
さっきまで森林地帯だった焼け後から、稲妻の如きスピードで変異種オーガが飛び出してきた!!
魔法兵部隊は間髪入れず攻撃魔法を撃ち込んでいく!!
しかし!オーガを魔法攻撃を物ともせず跳ね回りながら、見事に全弾かわしていく!
先輩騎士「スゲー・・・」
思わず関心の声を漏らす騎士もいる・・・
騎士団長「何を感心しておる!!敵が近づいたら、囲んで攻撃しろ!」
騎士団長の声に我に返り、騎士たちはオーガを包囲しようと行動を開始する。
騎士部隊は必死にオーガを包囲殲滅しようとするが、オーガの底なしの体力を前に苦戦する!
先輩騎士「うぁぁぁああああ!」
先輩騎士「ぐわぁぁああああ!」
先輩騎士「ぎゃぁぁああああ!」
先輩の騎士がオーガに次々と殴り蹴飛ばせれ宙を舞っていく!!
マルギレッタ
(ヒェェェエエエ!包囲するんて、絶対に無理でありますよ!怖いでありますぅぅう!)
魔法兵「うぁぁぁああああ!退避!退避!」
魔法兵「騎士部隊が突破された!!」
魔法兵「お助けぇぇぇえええ!!」
オーガは白青騎士団の包囲をあっさり突破すると、
フェイルシュタットのある方面に走り去ってしまった。
騎士団長「貴様ら何をしている!!変異種のオーガが街に到達して被害が出る前に、必ず討伐する!!」
「追撃!!開始!!」
白青騎士団は追撃を開始するが、スピードのあるオーガは既に遥か彼方・・・
マルギレッタ(追いつけるんでありましょうか?・・・・・)
マルギレッタは失態を犯した騎士団に追随しながら天を仰いだ・・・




