準備と宿泊とピャロ・ヒシャロ
しばらくしてフロッグ商会についた。
流石、元王都きっての大手商会なだけはある、総合スーパーと百貨店が合体したような規模の市場だ。
「おや?お前さんは・・・」
後ろを向くと見知った顔がいた。恰幅のいいその姿には見覚えがある。
一緒に山賊に捕らわれた時にいた。フロッグ・ノシュガン氏その人だった。
そういえば、フロッグ商会という店の名前は、この人の名前と同じだ。失念していた。
「先日はどうも・・・ノシュガンさん。」
とりあえず、挨拶をする。
ノシュガン「おお!よく来たね。ご入用かな?」
シセスタ「えぇ。冒険者になったので、必要な装備やアイテムを買え揃えられる必要があったので、ギルドに聞いたらここがいいと・・・ここならボラれないと聞きまして・・・」
ノシュガン「それは素晴らしい!おめでとう。君には身代金を取り返してくれた借りもある。よかったら私自ら案内しよう。」
シセスタ「よろしんですか?経営者自ら新米なんぞ案内してもらって・・・」
ノシュガン「あぁ!いいとも!いいとも!気にしないでくれ。これでもいつも従業員に混じって仕事をしているんだ。この道30年ずっとね。」
どうやらノシュガン氏は勤勉な人物のようだ。見習らいたい。
シセスタ「それはすごいですね!見習いたいかぎりです。ではお言葉に甘えて・・・お願いします。」
案内してもらうことにした。
ノシュガン「それで何が必要なんだ?」
シセスタ「矢と怪我をした時のためのアイテムです。」
ノシュガン「武器の手入れセットも買っておいた方がいい。使い方が分からなければギルドでも教えてくれる。」
シセスタ「ではそれも・・・」
必要なものを買っていく。
矢60本 15
HPポーション(小)5個 25
MPポーション(小)5個 25
武器の手入れセット 50
シセスタ「ありがとうございます。お代はいくらですか?」
ノシュガン「本来は115ユーフティスだけど30%引きにして80ユーフティスでいいよ。」
シセスタ「本当にいいですか?」
ノシュガン「かまわないよ。君に取り返してもらった身代金の額を考えると足りないくらいだ。」
シセスタ「ありがとうございます。ノシュガンさん。贔屓にさせて貰います。」
80ユーフティスを支払った。残額は918ユーフティスになった。
シセスタ「そういえば泊まれそうな所を探しているのですが?・・・いいところを知りませんか?」
ノシュガン「それなら絶好のところがある。エーデルワイス亭に行くといい。あそこならボラレル心配もなく安くて安全だ。飯もなかなかに旨い。女主人も美人だ。」
シセスタ「ありがとうございます。是非とも行ってみます。」
シセスタはノシュガンに礼を言うと市場を後にし、エーデルワイス亭に向かった。
エーデルワイス亭に向かう道を、道行く人々に聞いて最初の十字路を真っ直ぐ行った所に、件のエーデルワイス亭はあった。
エーデルワイス亭の中に入ると中は掃除が行き届いており、とてもきれいだった。
食事を取っている。人がおり、賑やかに談笑にふけっている。
しばらくすると、女主人と思しき女性がきた。
鑑定・分析を走らせる。
名前:リンシャ・エーデルワイス
性別:女性
LV:1
種族:人族
年齢:19
ジョブ:宿場の経営者
ブラウンのハーフアップに碧眼で物腰上品な美人だ。しかもエメリア負けず劣らずの巨乳だ。
この世界の女性は、アリシアといいエメリアといいレベルが高い。
リンシャ・エーデルワイス
「こんばんわ。お食事ですですか?お泊まりですか?」
シセスタ「両方お願いします。」
リンシャ「分かりました。お食事とお泊まりですね。何日間お泊まりの予定ですか?1日の宿泊代は2ユーフティスです。お食事の際は、毎度0.5ユーフティスのお支払になります。先払いでお願いしますね。厳しい時代ですから・・・」
シセスタ「わかった。当分は泊まる事になるから取り敢えず1週間お願いするよ。」
宿泊代と食事代の15ユーフティスをリンシャに渡すとお釣り0.5ユーフティス通貨をくれた。
リンシャ「お食事は、すぐにお召し上がりになりますか?」
シセスタ「すぐに食べるよ。」
リンシャ「わかったわ。すぐに、お食事をお持ちしますね!」
リンシャがお店の奥に下がったので、シセスタは手近な席に座って待つことにした。
しばらくすると、リンシャが食事を持ってシセスタの席に近づいた。
リンシャ「お待たせしました。ウサギ肉のワイン煮込みシチューとパンです。熱いので、お気をつけください。」
なかなか、美味しそうだ。
食事に手をつけ始める。
肉がワインで柔らかいく煮込まれており、獣臭さもない、ハーブらしき薫りが食用をそそる。
パンをちぎってシチューをつけて食べるとさらにウマい。
シセスタが食事をしていた、そのころ・・・・
フェイルシュタット自警団警備隊長 ピャロ・ヒシャロ =point of view=
自警団警備隊長のピャロ・ヒシャロは、山賊身代金要求事件で陰ながら活躍した銀髪の青年を探してエーデルワイス亭に向かっていた。
ピャロ・ヒシャロ「エーデルワイス亭・・・エーデルワイス亭と・・・」
銀髪の青年にアリシアを助けてもらった礼を言おうと思ったが、留置場では追い返され、出たと思ったら冒険者ギルドに向かったと言われ、冒険者ギルドについたらフロッグ商会を紹介をしたといわれ、フロッグ商会でノシュガン氏に会ったらエーデルワイス亭を勧めたと言われた。
ピャロ・ヒシャロ(銀髪の青年アクティブ過ぎるだろ・・・・)
ピャロが、青年にこだわるのには、もう一つ理由がある・・・
あれ以来、アリシアが男性に極端に恐怖を抱くようになり、引きこってしまった。
何とか知り合いであるピャロとは話せているが、このままでは商人としてやっていけない。
どうすれば以前のようなアリシアに戻れるか?模索しているとアリシアの話の中に、銀髪の青年が何回か出てきた事に気が付いた。
青年ならアリシアをまた助けてくれるのではないか?・・・
(ああぁ・・着いた。)
まだ見ぬ青年に思いを馳せているとエーデルワイス亭に到着した。
扉を開け中に入ると、どうやら夕食どきであるようだ。
食事を取っている人は、多数いるが一目でわかった。
王侯貴族のような気品漂う銀髪の青年が食事をしている、白く透き通った肌は高級な白い陶器のように美しく、パープルの目は全てを見透かすように奥深くまで光り輝いている。
顔立ちは見事なまでに整っており絶世の美男子だ。
(アリシアの話に出てくるわけだ・・・こんな美男子で危険を顧みず助けてくれた男前なら、忘れようがない・・・)
思わず見とれてしまっていたが、本来の目的を思い出し、ピャロは青年に話かけた。
シセスタ・アデル =point of view=
シセスタが食事を食べ終わろうとしたその時だった突然、話かけられた。
???「やぁ!青年!」
声のする方を見ると背の高い大柄の大剣を背負った女性が立っていた。
肌は褐色で燃えるような赤い髪はツインテールに結られている。
「アリシアが世話になったみたいだね?礼を言い来たよ!」
シセスタ(れい?・・・・レイ?・・・礼?)
シセスタは何か自分が礼を言われるような事をしたか?思いを巡らせる・・・
(アリシア?・・・山賊に捕まって殺されそうに、なっていた少女だ・・・確か俺は・・・あの時・・・)
考えている内にシセスタは青ざめていく!!!
そう言えば・・・アリシアちゃんを助ける為とはいえ危険に晒したのは事実だった。
アリシアちゃんが心に深く傷を負ってもおかしくない!!
シセスタ(この女は礼を言いにきた!と言っていた。つまり・・・復讐に来たのか!!!)
(俺は椅子に腰かけていて態勢が悪い!!マズイ!!!!ヤられる!!)
シセスタは”オーバータイムレイジ”を発動させると一気に椅子から脱出し、宿の壁を背に防御態勢を取った!!!
ピャロ・ヒシャロ =point of view=
ピャロは自分の目が信じられなかった!!
何が起こったのか理解が出来なかった・・・
さっきまで椅子に座って食事をとっていた青年がいつの間にか、壁側に移動し、片手剣を手に防御態勢をとっているではないか!!!
青年「アリシアちゃんを危険に晒したのは悪かった!謝るが仕方なかった!!それでも礼に・・・復讐に来たのなら、かかってこい!!受けて立つぞ!!」
ピャロは困惑した!!少年が復讐がどうだの・・こうだの・・・
ピャロ「???ふくしゅう???復讐!!!!いやいや!!ちょっと待て!!誤解だぁ!!!」
まさか、礼に来たが誤解を受けアリシアの仕返しに来たと思われるとは、予想外であった!!
シセスタ・アデル =point of view=
(あれぇ?大剣を抜いて襲い掛かってくるものだと思ったが・・・?)
鑑定。分析を使い、相手の心理状態を調べる
名前:ピャロ・ヒシャロ
性別:女性
LV:45
種族:人族
年齢:24
ジョブ:フェイルシュタット自警団警備隊長
心理状態:極度の困惑
(・・・極度の困惑?・・・なにそれ?・・おいしいの?)
ピャロ「???ふくしゅう???復讐!!!!いやいや!!ちょっと待て!!誤解だぁ!!!」
ピャロ「アタイは本当にお礼を言いに来ただけで・・・」
シセスタ(・・・いま、なんて言った?本当にお礼を言いに来ただけで・・・)
周り客を見渡すと、みんな啞然としている・・・リンシャちゃんについては、苦笑いをし怒った顔をしている。
(ああぁ・・・これ・・あれだ・・・やらかしたパターンだわ・・・)
=暫くして・・・=
ピャロ「やぁ❤もぉう❤お姉さん焦っちゃたよ。」
めちゃ恥ずかしい上、いたたまれない空気になった。
リンシャちゃんには、凄く怒られた。
まぁ怒った顔もかわいかったけど・・・
因みに、ピャロさんには、気に入られたみたい・・・
先程の行動がお気に召したらしい。
(美人だが、この人絶対に変人だ!!・・・)
ピャロ「さっきの手際で確信した。あんたならアリシアの事を任せられる!!」
シセスタ「そう言えばピャロさんは、アリシアちゃんの知り合いなんですよね?」
ピャロ「そうともさぁ!アリシアが小さい頃から知ってる!いや、実は君を探していたのは、あの事件の時、アリシアが助けてもらったお礼言いに来たのと、アリシアが事件の後、引きこもってちゃってね。アリシアが気を許した君に是非ともアリシアのところへお見舞いに行って欲しくてお願いにきたのさ。」
(アリシアちゃんが引きこもりに・・・考えてみると責任の一端は自分にもあるような・・・)
シセスタ「わかりました。是非とも行かせていただきます。」
ピャロ「本当か!じゃ、時間が空いたらいつでも来てくれ!私も一緒にいくよ。午後は大体非番なんだ。」
ピャロさんに時間が空いた時に伺う約束をしたら、ピャロさんはエーデルワイス亭にを去っていった。
食事を終えたので、部屋に戻ろうとするとリンシャちゃんが体を洗う桶と手ぬぐいを持ってきてくれた。
夜の王都は冷える。桶に入っているのが、お湯であるのが唯一の救いである。
体を手早く拭き終わると、部屋のベットに潜り込み、その日を終えた。
”残金903.5ユーフティス”