いち。巻き込まれる非日常
姉さん、事件です(笑)
「っぷぎゃん!」
階段で割れ鍋がこけた。動ける(はずの)デ……ぽっちゃりさんには珍しくもないが、ぱんつ丸見えは誰得なんだろう。上りだったので、下にいた男子が一斉に右を向いた。思わず写メった、壮観。てか、某クマを伸ばすなよサイズ合ってないぞそれ。
「いーたいー」
「安心しろ、傷は深いぞ」
移動教室のために上っていた階段の踊り場で、振り向きながら声をかけた私に、あきれながらさぁやんが突っ込んだ。
「それのどこに安心できる要素が?」
「冗談だよ、さぁやん」
しょうがないなぁ、とこけた割れ鍋の方に向かおうとしたら、後ろから悲鳴が聞こえた。思わず振り向くと、人が倒れてた。ぱんつ丸見えで。……ぱんつの日なんてあったっけ? とりあえず写メった、なんとなく。
それが、後にぱんつ事件かっこわらいで語られることになる話の始まりだった。らしい。
あの日、階段から落ちたのは別クラスの女子だった。うちの高校、創立何百年とかいう古さだけあって、あちこち改修されてるけど、階段はボロいままだった。こけるくらいなら割れ鍋程度で済むが、今回の彼女は突き落とされた、らしい。
「と、本人が言ってる」
さぁやんが仕入れてきた情報によれば、だ。本人による自己申告だけで目撃者がいないそうだ。あれだけ人がいたのに? という謎。
「ケガとかは?」
「これが奇跡的になし。本人は足を挫いたと言ってるみたいだけど」
これも自己申告か。なぜかトゲが刺さったような物言いなんたがさぁやん、なにかあったかね?
あの後、倒れた彼女に叫びながら駆け寄った男子数人によって、保健室に担ぎ込まれたらしい彼女。まぁ、相変わらずぱんつ丸見えだったけど。先生による聞き取りやらなにやらで、実はすでに数日か経過してるが、本人はケガのため欠席中。
一応、私達も聞き取りされた。目撃者であり第1発見者でもあり、一番近くにいたからだそうだ。そして無罪が確定したわけなんだが、しかし謎が多すぎて先生も困ってるらしい。
クラスメイトも間近で起こった事件に興味津々で話題はそればかり。でも核心には誰も触れない。わからないから。当たり前だけど。
「突き落とされるほど、誰かに恨まれてるの、その人?」
「まさかとは思うが瑞葵ちゃんや」
「なんだい、さぁやん」
「君、もしかしなくともーー」
さぁやんの言葉は、バーン!! と喧しい音を立てて入り口の引き戸を開けて入って来た男子達によって遮られた。
「マナーがなってないなぁ」
「同意」
他人事のように見てた私達だったけど、珍入者の男子達は違ったらしい。居丈高に教室内に向かって怒鳴り声を上げた。
「美礼を突き落としたのはどこのどいつだぁ!!」
騒がしいなぁ。後、美礼って誰だ。
そして続く。