7/11
秋は人にこそ染み/
秋は人にこそ染み/
恐ろしい
全く恐ろしいが
わたしも空を見上げた
切り取られた矩形の空にさえ
薄らいだ雲の白さが見え
青い遠さがありありと見え
晴れた秋の空の明らかな美しさが
遠い過去へと誘うようで
しかし放置するように輝いている
あの日の空など忘れてしまった
今日の空も忘れてしまった
必死に嘘を唱え 抗い
軽やかな笑い声が音楽となり
夕暮れに光る
造形を陰に描き
道行く人たちさえ無関係に思えない程に
点滅している青
すっかり赤い陽
鉄隗のような大型車が右折する
秋とは人にこそ染み
或いは狂い気味の猫を転がし
ひと時の黄金が
空の遠くでしんとしている




