6/11
彼岸花/
彼岸花/
彼岸花の毒を知らぬまま
母は眠る
若き日の死は秋の正午の光のような
わたしと子どもたちが通った幼稚園が廃園となり
あの日の運動会の影たちが懐かしく
小さなトラックを回り
父は母はわたしは
ある日の雨交じりの憂鬱にさえ
握りしめるような悔恨を感じず
ある日の晴天の爽快に
突き抜けていくような未来を思い描いていた
日々が止められないままに流れ
あの小さな運動場の土手は
もう降られても照らされても
顧みられることなく
彼岸花が咲いている
彼岸花の佇みに
ふと白くふくよかな面影を見た
遠い午後




