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竜の子とともに  作者: 眠々
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3話 転生

スマホで書くって結構難しいですね。

フリック操作できる様にならないと。

「行かれましたね。まさか、刃竜になられるとは。上の方にも色々と魅力的な種族はあったと思うのですが」


「私はどのような道を選ばれるにしても、彼を応援しますよ。猫が好きな人に悪い人はいません」


猫の身体のまま語気を強めて言う

自らの上司に呆れる様に額に手を当てる。

上司の言葉が適当なものではあるが、自身の思う印象としても

彼のどことなく落ち着いた雰囲気にちょっとした安心感を覚える。


こういった事態に陥った事は彼意外にもあったが、そのどれもが今回の様にすんなりと進むものではなかった。

勇者になりたい、ハーレム作りたい、神になりたい。彼もまあ、刃竜という特殊な種族にはなったものの、こちらから掲示された内容以外に特に望むものはなかった。

前回はどうだったか、スキルをもっと取りたいとごねられた。

スキルを自分で作りたいと言ってきた者もいたと思う。


さて、今回の彼は新しい生をどのように謳歌するのか。

目前の猫を撫でながら薄く笑みを浮かべる。


「ちょ、ちょっと!私撫でるのは好きですけど逆は!」


「はいはい、そろそろお仕事の時間ですよ、アリシア様」


「え、あれ、私上司、ちょっとシル、待ってぇ!」


炬燵から立ち上がり、自身の上司である猫を抱き上げると、襖を開け、入室した時と同じく綺麗な所作で退室する。












暗い暗い闇の中

だが、事故の時の闇とは違いとても暖かい。

意識は覚醒している。何時も味わってきた起床するのと同じ感覚だ。

手足の感覚は、あった。布団の中での温もりを名残惜しむ時と同じ、もぞもぞと動いてみる。


ピキッ パキッ


この音はなんだろうか?

聞き覚えのない音だ。だが少しずつ、暗闇に光が差し込み始めた。


「・・・漸くか、待ちくたびれたぞ」


声が聞こえる。

とても威厳のありそうな、低い声だった。

誰かいるのか、この光の先に

なら待たせるのは悪いな、先ほどの言葉から考えるに、待たせている様だ。


暫く身動ぎする様にしていたのだが、やっと俺を覆う暗闇を払う事が出来た。

光に飲み込まれる感覚だ。アリシアさんのとこから出る時も確かこんな感覚だったな。


光が晴れていく

いや、目が光に慣れたのだろうか

まだぼやけた視界のまま、周囲を見渡してみる。

太陽が見える。広がる空に眩しい丸い塊、見慣れた物ではあるが、その柔らかい暖かさに安堵する。


「ふむ、黒・・・珍しいな」


またどこからか低い声が聞こえる。

どこだろう、目前には断崖絶壁、上には太陽、後ろには暗い洞窟?の様な物があった。

どうやらここは崖みたいだ。

それはともかくとして、声の主を探さないと、随分待たせている様だしな。

しかし、洞窟の中、崖の先、空を見上げてもどこにも声を発しそうな相手はいない。


「ここだ」


洞窟の入り口の横、大きい岩と思っていた物が喋っている様に思う。

岩が喋るのだろうか。そういえば魔法のある世界だからな。

ゴーレムというのが存在してもおかしくないだろう。

ゴーレムと決め付け、目線を上に上に上げていく。

だが、ここは魔法のある世界、魔物のいる世界であったと、改めて認識させられる存在が居た。


「やけに落ち着きを持った子だな。まあ、その方が手が掛からずに良いのだが」


ドラゴン

RPGのゲームではほぼお決まりの、ボスであったり、テイムなんてできたらその後がイージーゲームにもなりかねない。

そんなお馴染みのドラゴンさんが、今目前に佇んでいる。

強靭な力を生むであろう、その巨躯に、お決まりの羽根もある。

ドラゴンだ。俺は今、ゲームでしか知らなかったその存在に直接語りかけられている。

俺も竜族という事だから、ここにいるのは母だろうか?父はどこにいるのだろう。

頭では色々と考えられるが、質問をするのは後だ。逸る気持ちを抑え、挨拶をする。


「初めまして、母さん?でいいんですよね。よろしくお願いします」


瞬間、時が止まった。

母竜の呼吸、風の音、周囲の音の全てが、凍り付いた。


「母さん?」


その雰囲気を他所に、俺は言葉を連ねる。

挨拶は基本だろう。母とはいえ、初めて会う相手だ。礼儀を欠くわけにはいかないだろう。

連ねた言葉に一瞬巨躯を震わせながらも、先ほどまでと変わらぬ声音で言葉を紡ぎ出す。


「ああ、初めまして、だな。だが、私は母ではない。お前がどうして我を母と呼んだのかはわからぬが、竜に性別はない。ゆえに父でも母でもないのだ。だがまあ、育ての親ではあるか」


「そ、そうなんですか、すみません。早合点でした」


「気にするな・・・。しかし驚いたぞ、お前は落ち着いているのもあるが、思考が幼体のそれではないぞ」


「あ、あー・・・そう、ですね」


失敗した。確かに、竜とは言っても生まれたばかりの子が言葉を話す等異常事態だろう。

いや、しかし、こうなってしまっては仕方ない。何とか取り繕うしかない。


「まあ良い。言葉が理解できるのならば今の内に確認するべきだろう。お前、自分の能力が見えるか?」


「能力、ですか?どうやって確認するんでしょうか」


「ただ思うだけで良い。能力が知りたい、と思えば良いだけだ」


やけに簡単だ。たしか小説とかの冒険モノだと、水晶に触れたりだとか、能力を見るにも特殊なスキルが必要だったり、あった気がするが。


まあ、やれと言われたのだから大人しく従ってみよう。実際気にもなるしな。

と、適当に思っていただけだが、それでも通じたのか、視界の端に文面が現れる。



名前:不明


種族:竜族(黒刃竜)


年齢:0歳


レベル:1(EXP0)



STR:510

VIT:1210

INT:2040

AGI:520

DEX:500

CHA:20080


<スキル>

全属性耐性(SSS)

全状態異常無視(SSS)

限界突破(SSS)

黒刃竜の破壊ユニーク

言語理解(S)

空間生成(SS)

飛行(AAA)

EXP倍化(ランダム/SS)


<加護>

創造神アリシア(祝福・加護・寵愛)

月光神シル(祝福・加護)



この世界の一般的な竜族の数値がわからないからなんとも言えないが、これは強い方なんだろうか。

スキルは選択した通りの物がちゃんとあった、が、知らない物も何個かあるな。

加護については二人に感謝しないとな、ありがとうアリシアさん、シルさん。


「見えたか?ならば次は我に見せてみよ。今度は我に見せる、と思えばいいだけだ」


言われた通り、見せる、と念じてみる。

なんかテストの答案を見せろ、と言われている様で若干気まずい。


「そうか、黒い鱗はこの所為か。・・・なんだこれは、幼体でこの能力値か。これほどか、刃竜とは」


「やはり、どこかおかしいでしょうか?」


「ああ、そうだな。お前は幼体の能力値ではない。そこらの亜竜の成体と変わらんぞ。一部においては我と変わらん」


「そ、そうですか・・・」


やはり異常なんだろうか。自分で選んだ種族だが、こういう状況になると、選択が過ちだったのではないかと考えてしまう。


「そう悲観するな。数値は異常だが、刃竜であるのならば仕方あるまいよ。お前を異常とは言ったが、我は自分の腹から生まれた子が強くあってくれるのは何より喜ばしい事と思っているぞ」


「ありがとう、か・・すみません、なんと呼べばいいでしょうか」


「そうか、すまんな。名を名乗るなど永くなかった事なのでな、忘れていた。我の名はヴァルニアだ」


「ヴァルニアさんですね、俺は・・・」


「そうか、まだお前の名を授けていなかったな。さて・・・まあ、考えてはいたのだ。生まれ来る子の名前、お前の名はファルミア。黒刃竜ファルミアだ」


自分の名前が先ほどの不明となっていた名前の部分に納まったのを確認する。

市役所とかに出生届も出さなくていいのは楽かもしれないな。

竜にもそういうのってあるんだろうか?


「それと、スキルについて我はそこまで驚かぬがお前は刃竜だ。その内に人間とも接触するだろう。その時に契約者以外に力を知られるのはまずいであろうな」


「ですかね・・・やはり狙われたりするんでしょうか?」


「黒刃竜を狙って、その先に在るものは身の破滅でしかないが、それがわからぬのが人という者だ。最近は竜を隷属させる魔道具まで開発されているようだ」


「隷属・・・それは俺やか・・ヴァルニアさんも対象になるんでしょうか?」


「いや、我の竜としての力は・・・そうだな、見せた方が早いだろう。ちなみにお前は状態異常の全てが無効となるので対象外だ」


隷属も状態異常になるのか?

確かに小説とかでも隷属させる首輪なんてのもあったが

それにしても竜を隷属させるなんてな、人っていうのはやっぱりどこでも一緒なんだな。

元が同じ人という視点で考えると申し訳なさが押し寄せてくる。

視界にヴァルニアさんから送られてきた情報が映る。


名前:ヴァルニア


種族:竜族(皇竜)


年齢:5381歳


レベル:1000(EXP-)


STR:54751

VIT:83136

INT:107845

AGI:49111

DEX:44398

CHA:23970


<スキル>

状態異常無視(麻痺・混乱・睡眠・魅了・毒・腐敗/S)

皇竜の威圧(SSS)

言語理解(S)

飛行(AAA)

ブレス(火・水・土・風・光・闇・毒・腐敗/S)

皇竜の鋭爪(SSS)


<加護>

神竜レネメア(加護)



中々にぶっ壊れているな・・・まあ、俺の親だもんな、能力的に考えても成長した竜はこのくらいなのだろうと思考を巡らせる。


「竜族の中で我の上に存在できるのはお前と、紅と白の刃竜、そして神竜様だけだろう」


「紅と白の刃竜はどのような方なんですか?」


「紅は竜には珍しく人の営みにとても興味を持っていてな、今は王国にいるらしい。白はエルフ達の住む森で静かに暮らしているらしいぞ」


「なるほど・・・あの、すみませんがこの世界について教えて頂けますか?」


「良い、が、まずその口調を直せ。我は親なのだが、そこまで他人行儀な堅苦しい言葉では少々息が詰まるぞ」


「あ、すみ・・・いや、ごめん、こっちからも要望があるんだけど、いいかな?」


「言ってみよ。叶えられるものであれば良いが」


「やっぱり母さんって呼んじゃだめだろうか?名前で呼ぶっていうのはどうも慣れなくてさ」


「・・・まあ、良いだろう。どうせお前以外にそう呼ぶ者はいないだろうしな。さて、この世界だが、名はトリムウェル、3つの人の国と、エルフ、ドワーフ、そして魔族の国で6つの国が存在する」


「人は3つの国を持つのか。紅は王国だったか、他は・・帝国とか法国とかかな?」


「ふむ、片方は正解だ。皇帝が治める帝国と、教皇が治める聖教国だな」


やはり帝国は存在するのか・・・!ファンタジー世界万歳だな。


「人の治める3国は、今は暫く落ち着いているが、戦争というものが大好きなようでな。まあ、王国にいる紅は気が乗らないと言って参加はせぬようだがな」


「紅の刃竜がその戦争に加わるとなると、どうなるんだ?」


「1ヶ月、いや半月くらいか。帝国と聖教国は壊滅だろう。生身の人間程度ではアレの契約者には手も足も出まいよ」


「その脅威がありながらも、戦争を繰り返してるのか?」


「帝国はその姿勢を崩さんだろう。だが聖教国は新しく聖女となった者が戦争反対派らしいぞ」


帝国はやっぱり戦争大好きなんだなぁ。

であれば、独り立ちするにしても帝国に行く線は無くなったか。

絶対に利用されるだろうしな。面倒な事に自ら首を突っ込む必要もないだろう。


「まあ、あとはそうだな。ギルドってあるんだろうか?」


「ふむ、どこで知ったのかは聞かんでおこう。あるぞ。ギルドは国に関係なく、全ての人種が登録できるらしい。なんだ、お前も人族に興味があるのか?」


「あ、あぁ、うん。男は冒険が好きって相場が決まってるじゃないか」


我ながら苦しい。元人間だからとか母さんに言っても大丈夫なんだろうか。

あまり感づかれないように振舞った方がいいんだろうか。


「くく・・・そうか、まあ良い。だが、そうだな。お前だけで行動するのはまだ早い。せめて竜としての生き方位は教えておかねばな」


「ありがとう、母さん。お願いします」


「今日はもう寝ろ。明日から色々と教えていこう」


「わかった、おやすみ母さん」


暫くは母さんと特訓・・・みたいなものか、それで時間が過ぎていくだろう。

いつの日か、人の暮らす国に行ってギルドに登録して、旅をしよう。

竜だけど、人に化ける魔法とかあるんだろうか?まずそれを明日聞いてみよう。

まず人になる事から、か、面白くなってきた。


薄れる意識の中、小さな声でおやすみ、と聞こえた気がした。

早ければ本日中、遅くとも明日中には更新します。

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