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竜の子とともに  作者: 眠々
10/27

9話 生成

お待たせしました。9話完了です。


ネトゲつけてグラボが動いたら、寒くなくなった!!


 彼等に拠点へと先導してもらい、その後ろに着いて進む。


「そういえば、俺はガルド、こっちの、姉ちゃんの刀に目が眩んでいるのがミレイだ」


「よろしくね、私はファルミア。この子はエ・・・、まだ気がつかないから、私にもわからないわ」


「そうか、よろしくな。まあ、うちの魔術師が倒れるくらいだ。相当な魔力波動があったんじゃねぇか?それの中心にいたんだろ?起きねぇのも無理はねーよ」


 手を伸ばすガルド、此方も特に拒否する理由もないので、手を絡める。


「・・・しかし、本当に姉ちゃん一人でここに来たのか?言っちゃなんだが、とても単独でこんな場所まで来れる様には見えねぇよ」


「あら、人は見かけによらないものよ?」


「そりゃぁ・・・まあ、そうなんだけどよ」


 細い腕、陶器の様に、白い肌。エルフという種族として見ても、顔の美麗さも際立つ。

 いや、まあ俺の妄想だからな。そりゃ可愛くもなるか。


「ねえ、その、剣・・?見せてもらってもいい?」


 あれからもずっと、白水から視線を話さないミレイに、ガルドが嘆息する。


「お前なぁ、一緒に拠点に行くにしても、まだどちらも警戒するのが普通だろうに・・」


「そういうこと、今回は、ごめんなさいね。もう少し仲良くなれたら、見せてあげるから」


「ほ、ほんと!?絶対ですよ!?」


「え、ええ・・・」


 この子、ミレイと言ったか。本当にこういう剣とか、刀が好きなんだろうな。

 

「ところで、拠点とやらはあとどのくらいかしら?」


 そろそろ日も暮れる。周囲には夜の帳が降り始めていた。 

 多分、彼等も俺の背にいる少女の様子が気になるのだろう。それ程速い行軍とはならない為、時間が掛かっている。


「もうそろそろだ。まあ、野宿するつもりだが、飯は期待しないでくれな。さっきの風で全部吹っ飛んじまったんだ」


 風、とは十中八九俺の所為だろう。声には出さず、謝罪しておく。


「大丈夫よ。私も1日くらいなら抜いても平気だし」


「すまねぇな」


 基本的に竜は食事を必要としない。世界に満ちている魔力を自然に取り込む事で、食事の変わりとしているらしい。

 俺もその限りではないのだが、この世界は日本の食物と形こそ違うが、味そのものは同じ物が多い。

 元々料理は一人暮らしが長かったので、それなりにできる。これについて母さんはまた驚いていたが、なんとか誤魔化している。


 外より大きい木の根元に、二人の人間が座っていた。こちらも男と女だ。


「遅かったね、どうだった?」


 話かけてきたのは、軽装の女。腰に短刀を挿し、結構露出の多い服を着ている。

 彼女がこのパーティーの眼なのだろう。


「てんでだめだ。俺は元からこういうのが苦手だし、ミレイも途中で使い物にならなくなった。ところで、起きたんだな、コール。具合はどうだ?」


 灰色のローブを身に纏い、杖を補助にして立ち上がる男。


 本当に魔術師らしい格好をしている。線は細く頼りなさげだが、魔術があるから、彼はそれでいいのだろう。


「すまなかった。迷惑をかけたようだ・・。」


「だから気にするなって言ってるでしょ。ほんとに面倒臭い男ね、コール」


「だが、ライム、この状況を作ったのは僕だ。やはり謝るのは当然だと思うが」


「あぁ、気にしてねぇよコール。今回はあの風の所為だろ。お前は関係ねぇさ」


「すまん、ありがとう、ガルド」


 コールの肩を叩いて笑みを浮かべるガルド。

 の、横で此方を凝視する軽装の女。視線が痛い。


「この子は?ミレイはどうしたの、これ」


 ガルドに問う女。頭をがしがしと掻き、嘆息しつつガルドも俺の方に向き直った。


「ファルミアっていうらしい。ちょっとした出会いってやつだよ。ミレイはな・・・こいつの趣味は知ってるだろ」


「あぁ・・」


 ガルドの感情が伝染したように嘆息する女。本当に息が合っている。

 とりあえず此方を認識してくれたようだ。自己紹介くらいはしておこう。


「えぇと、私はファルミア。ちょっと気になった事があって、この森に入っていたのよ」


「ふぅん、まあ、私はライム、よろしくね。それはいいとして、後ろの子はどうしたの?」


「拾った・・のよね。さっき言ってた風?の発生地に倒れていたの」


「あれの傍にいたのか・・・?よく、無事だったな・・」


 信じられない、といった表情でコールが声を上げる。


「コールと言ったわね。キミは魔術師っぽいし。やっぱり、魔力の余波で気を失ったと見ていいかしら?」


「・・ああ、あれ程の魔力、僕は今まで感じた事がない・・」


 顔を下げて話す彼の表情は、どことなく怯えている様な感情が見て取れた。

 無理もないだろう。竜種の魔力を近距離で受けたのだ。なまじ魔術を生業としているので、他のメンバーとは違い、彼の受けた精神的なダメージは測り知れないだろう。


「ま、まあそれは置いといて、そろそろ座ろうよ」


「そうだな、俺も少し疲れた」


 それぞれ、よっこいしょ、とその場に腰を下ろす。

 まさか、このままここで一夜を過ごすのだろうか?


「ねぇ、まさかこのままここで過ごすのかしら・・」


 と、言った瞬間、何言ってるんだこいつ?と言いたげな視線をミレイ以外の3人から感じる。


「いや、まあそうだな。テントも寝袋も全部飛ばされちまったからよ」


 ここでも俺の所為で自分の首を絞める。

 この状況を打開できるとしたら、まあそれも俺だけしかいないだろうし、ちょっとした提案を投げてみる。


「私の魔術で仮の拠点を作る。それなら、この周囲の魔物程度には、壊されない強度くらいはあるわ」


「程度・・いや、魔術で・・拠点?」


 それぞれ、またしても何言ってるんだろう、という視線と、首を傾げる動作がプラスされた。


「まあ、見てなさいな。」


 聖女をそっと地に降ろし、何もない場所に手を翳す。

 フッと眼を閉じて、イメージするのはログハウス。だけどそこまで精巧には作れない。何より材料は土なので、強度としては十分だろうが、あまり見栄えは良くないだろう。

 ほんの数秒で土は持ち上げられ、重なり合い、そこそこの大きさの小屋が作り上げられた。


「こんな感じね、これなら安心して眠る事ができるわ」


 と、振り返りながら言ってみるのだが、4人は呆然としている。


「あれ、どうしたの?」


 ハッ、と他より一足先に正気に戻ったのは、コール。

 先程まで杖を補助にしていたのとは違い、確りとした足取りで此方に向かってくる。


「今のは、なんだ?土の魔術の様だが、ここまでの量の土を一度に操り、それを使って家を作り上げるなんて・・」


「これ?アースクリエイションという魔術だけど。初級魔術の筈だし、そこまで、珍しいものじゃないでしょう?」


「ば、馬鹿を言っちゃいけない!初級魔術でこの家を作るだって!?それこそ信じられる事じゃない!!」


「ちょ、ちょっと、熱くならないでよ。それに、現にもう出来てるじゃない」


 顔が怖い。ちょっと、この魔術師さっきまでフラフラだったのに、元気になりすぎ。


「コール、コール!落ち着いて」


 横からミレイが止める。コールを引き剥がし、落ち着かせる。


「こんなもん、魔術で作れるんだな・・他では、見た事ねぇよ」


 と言うのはガルド。彼もまた、頭をガシガシ掻きながら近付いてくる。


「まあ、この中なら安全は保障するわ。じゃあ、私はこの子を寝かせてくるから」


 そろそろ寒くなってきたし、思いがけず薄着となってしまった聖女を外に置いたままには出来ない。


 再度聖女を背負い、小屋の扉を開ける。

 中はテーブルと椅子を中央に配置し、周囲を囲む様にベッドを置いた。まあ、土だから固いのが難点だが。


「・・やっぱり土魔法だから、少しほこりっぽいね。ちょっと待って」


 ベッドの一つに聖女を寝かせ、中央のテーブルの上で風の魔術を行使する。

 この魔術での目的は埃を失くす事、ようは空調だ。


「2属性・・。まあ、これ程の魔術が使えるのであれば、複数の属性を持つのも頷けるか・・」


 横でコールが何か言っているが、気にせずに進める。

 テーブルの上に、掌大の小さな翠色の魔力を伴った石を作る。ここに魔力を流せば起動する。

 魔力を少量流すと、ふわり、と風を一瞬感じるが、その後は特に感じる事はない。


「魔術ってこんな事もできるのね・・」


「いや、普通はできないと思う・・」


「まあ、こりゃ便利じゃねぇか。ありがとうな姉ちゃん」


「とりあえずは各自、自由に過ごして頂戴な」


 これで寒空の下で寝るという流れは回避できた。

 食事についてはどうしようもないが、ここで俺が食料を取りに出て行っても、それは聖女を残す事になるから、却下だな。

 空間生成によって生まれた空間内において、俺の想像した物はその全てが具現化する。

 異空間に自分の世界を生成する。世界を作るという事は、即ち、その世界の神になったと意識せざるを得ないのだろう。


「私は先に寝るよ。少し、今日は疲れたみたい」


「あぁ、俺達もすぐに寝る。明日は長くなるからな」


 聖女の横のベッドを使用し、横になる。

 よくよく考えてみると、母さんとの約束をいきなり破ってしまった。

 だが、今日は仕方ないだろう。さすがに行動を共にして半日すら経っていない人に聖女を預ける訳にもいかない。

 

 暫く眼を閉じていたが、この身体になって初めて長い距離を移動した為か、すんなりと眠りについた。




















「・・ん・・・・」


 気がつけば、外から少しだけ日の明かりが室内に入り込んでいる。少し寝て、聖女の様子を見ていようと思っていたのだが。

 上半身を起こし、目を擦りながら伸びをする。横の聖女は、未だに目を覚まさない様だ。


 周囲を見渡すと、冒険者はそれぞれのベッドで横になっている。簡易ではあったが、ちゃんと利用してくれている様で、何となく嬉しくなった。


 が、一人の姿が見当たらない。たしかシーフだった子だ。あの女の姿が無く、一つだけベッドが空いていた。


(シーフの子でしたら、主様の起きるより早く、外に行かれましたよ)


 ふむ、何をしに行ったのか。

 顔を洗うのも兼ねて、外に歩を進める。屋内、しかも周囲が元々は砂であった事から、水魔術の使用を避けた。 

 外に出ると、丁度女がどこかから帰ってきた様で、此方に向けて歩いていた。


「ん?ファルミアさんが一番か。おはよう」


「おはよう。たしか、ライムだったね。キミも顔を洗いに出たのかな?」


「違うよ、さすがに朝も抜いて長時間歩くのは厳しいからね。これこれ」


 小振りではあるが、そこそこの量が入りそうな皮袋を見せてくれる。

 口を開いて中を覗き込むと、木の実や果実等が入っていた。


「なるほど、これを採取していたのね」


「そゆこと、まあ、無いよりはいいかな、って程度だけどさ」


 確かに無いよりはマシだろう。

 聖教国に向けて移動しながら、道すがらでも食物を取っていった方が良さそうだ。


「とりあえず中に入ろうか。そろそろ仲間も起きるだろうしね」


「だといいけどね、ガルドは寝坊助だからさ」


 お互いに苦笑しつつ、小屋に入る。

 外は少し肌寒い様に思ったが、屋内に入ると、気持ち暖かく感じた。

 中に入ると、やはりミレイとコールは既に起きていた。ガルドはまだ夢の中なんだと思う。


「二人ともゆっくり眠れた?」


「すごい快適でした。まさか遠征中に、こんなに安心して眠れるとは、思いませんでしたよ」


「そうだね、僕も同感だよ。ありがとう」


 二人とも満足してくれたようだ。簡単な物であれ、感謝されるのは素直に嬉しい。


 聖女の方に目を向けると、ミレイがそれに気づいたのか声を掛けてくる。


「まだ、目は覚めないみたいですね。出発までもう暫く、様子を見ましょう」


「ありがとう。正直、今日は自分で歩いてくれると嬉しいんだけどね」


 これから聖教国への道を進むのであれば、背負ったままとなると、どうしても行動に制限をかける事になる。

 聖女の頭を撫でてみるが、特に反応を返す事も無い。


「ぶぇっくしょい!!」


 突然大音声のくしゃみが室内に響く。ガルドが起床と同時にしたようだ。


「おはよう、寒かったのガルド?」


「あぁ、いや、そういう訳じゃねぇんだ。おはようさん」


 正直、少々驚いたが、起床の挨拶をする程度には落ち着いているらしい。


「・・ん・・・」


 ガルドから視線を戻し、聖女を注視する。

 ベッドの上でもぞもぞと動き、頭に添えたままだった俺の手を握り、何故か安堵したような笑みを浮かべる。


「・・おか・・・さん・・」


 俺はお母さんではないが、とりあえず本人が安心するのであれば、と、そのまま手を預ける。


「起きたの?」


「いや、まあ起きれるんだろうけど、もう少しこのまま寝かせてあげよう」


「了解、じゃあ、私達は今日の予定立てるからさ、この子についててあげなよ」


 予定の話をするのであれば、俺も参加した方がいいのだろうと思うのだが。

 今回、彼女達のパーティーに同行する形になるので、お願いね、と答えた。


 聖女はまだ俺の手を握ったままだ。

 森の奥地に一人で居たのだが、聖女という肩書きがある以上、護衛もいた筈なのだが、その姿は無かった。


(単純に考えれば、オークに・・となります)


 確かにそうだ。だが、オーク程度に一国の聖女の護衛がやられるのか?

 それに、仮に護衛がいたとしても、何故聖女はこんな所にいるんだろう。

 昨日も考えたのだが、やはりそこは理由という理由が思い浮かばない。


「・・あ・・れ、此処は・・・」


 漸く気づいたようだ。目を何度か擦りつつ、ゆっくりと身体を起こした。


「おはよう。身体は大丈夫?」


「・・あ、はい。大丈夫、です。・・貴方は・・・?」


「私はファルミア。森に倒れていた貴方を運んできた者だよ」


「・・あの、ですがあの場には・・・竜が・・」


 記憶は正確なようだ。混濁して忘れてくれれば良かったのだが。


「竜?この森には多分、居ないと思うけど・・」


 首を傾げて、知らないです。をアピールしておく。

 竜の存在が在ったのを知るのは聖女だけだ。ここは惚けておくだけでいい。


「そう、ですか。助けて頂き、ありがとうございます。私はエリ・・・エリスです」


 やはり、聖女だという事は隠したいようだ。だが腹芸は不得手なようで、目が泳いでいる。


「これから、後ろにいる冒険者のパーティーと一緒に、聖教国に移動するわ。歩く事は出来そう?」 


「・・大丈夫です。私も少し、魔術が使えますので、出来る事があれば仰って下さい」


 聖女っていうのを隠したいのなら、もう少し口調も変えた方がいいと思うんだが・・。

 まあ、大丈夫だろう。俺がフォローしなくとも、どこかの貴族令嬢だと言えば済むだろうしな。


「そっか、それじゃあ、彼等に紹介するわ。少し、そのままでいてね」


 頭にそっと手を置いて柔らかく微笑むと、踵を返して4人の下に向かう。

 特にこれといって彼等に伝える事もない。ただ気がついた、と伝えるだけでいいだろう。


「ちょっといい?あの子が起きたわ」


「そうですか、良かった」


「此方の事情は伝えたわ。少し、彼女に紹介させてくれる?」


「おぉ、名前も知らない奴と一緒、ってよりはいいだろうしな。了解だ」


 ガルドが答えると、他のメンバーも意図を理解してくれたようだ。

 俺が先導して、聖女の傍に寄る。


「気がついたみたいね。私はミレイ。このメンバーのリーダーよ。よろしくね」


「俺ぁ、ガルドだ。よろしくな」


「ライムだよ。よろしくね」


「僕はコール。よろしく、お嬢さん」


「私は、エリス、です。よろしくお願いします」


 それぞれ挨拶を済ませ、聖女は頭を下げる。


「随分、丁寧な喋り方をするのね。どこかの貴族の御令嬢かしら?」


「あ、いえ、私は孤児院でシスターのお手伝いをしていますので、このような口調なのです」


「あぁ、なるほどね、それなら納得」


 どうやら皆、特に疑う事も無く信じたようだ。

 ミレイが一歩前に出て、これからの予定を伝えてくれる。


「私達はこれから、聖教国に向かうわ。そこまでの護衛ね。結構歩く事になると思うけど、辛くなったら言って?安全な場所を探して休憩を取るから」


「わかりました。すみませんが、よろしくお願いします」


 予定の方は大筋が既に定まっているようで、あとは聖女の状態によって変えるつもりなのだろう。


「でも、さすがにその格好のまま歩くのも変だよね。どうする?」


 ライムの言葉に、揃って首を傾げる。

 事実、聖女の衣服は所々が破れている。怪我こそ治してはあるが、見た目が既に痛々しい。


「そこは私がなんとかするわ。まあ、あまり良い物は用意できないと思うけれど」


「でも、ファルミアさんの荷物はその剣・・だけでは?」


「あぁ、ちょっと待ってね」


 確かに、俺の荷物というのは白水だけだ。

 だが、俺にはスキルがある。空間生成の方で想像すればいいのだが、それが此方の世界でも消えないという確証もないので、今回は別のスキルを使う事にする。


 神器生成


 名前からして、とんでもない物が出来る可能性があるが、そこまで魔力を込めさえしなければ、適度な物が出来るだろうと高をくくっていた。


 両手を胸の前で合わせ、それとなく魔術の発動の様に見せる。

 手先に魔力が集まり、白い光に包まれる。イメージ的に、先程の言葉の通り、シスターが着るようなもので良いだろう。

 魔力が形を成し、俺の手に、それが生まれた。


 光が収まり、そこにあるのは衣服。広げて見てみると、イメージ通りに、シンプルな黒と白のシスター服が生まれていた。


「・・・これは・・ど、どういう事・・・?」


「魔術で・・いや、確かに魔力は感じたけど、これは魔術じゃない・・多分」


「残念だけど、これについては秘密。ごめんね、コール」


 人差し指を唇に当てて、悪戯っぽく笑みを浮かべる。

 実際には男の俺がこの行動を取るのは、自分でも引いたが、必要な事だと思って我慢しよう。


 自分でも気にはなるので、衣服について鑑定をしてみる。



イグリースの法衣


アイテムランク:S


慈愛神イグリースの生前に着ていた法衣。

イグリースは聖教国に生まれ、最初の聖女となった。

戦いの嫌いな聖女は、その存在を疎まれ、謀略により、その身を奴隷に落とす。

彼女は世界に落胆した。戦いの終わらない世界に。

それでも彼女は愛した。世界ではなく、人々を。

奴隷となりつつも、救い手として、自身の全てを擲った。

彼女の想いこそ慈愛そのものであり、彼女の死後、月光神シルは彼女を導いた。



 そこまで魔力を篭めていないつもりだったのだが、出来上がった物はとんでもない物だ。

 顔が引き攣りそうになる。これ、国宝レベルの物なんじゃないか?


「じゃあ、これに着替えてね。私達は外にいるから、準備が出来たら出て来て。あ、手伝った方がいい?」


「は、はい。わかりました。大丈夫です。着慣れた物のように、わかります。このローブは・・」


 衣服をエリスに手渡し、私の言葉に合わせて、冒険者のメンバーも外に向かい、私もその後に続く。

 受け取った衣服を胸に当てて、眼を閉じる彼女は、とても嬉しそうに見えた。


お読み頂き、ありがとうございます。


次回は少し遅れるかもしれません。

明日中には、と思っています。

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