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竜の子とともに  作者: 眠々
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プロローグ

最近読んだ小説でNTR物があったので、悲しみに侵されながら

そうだ、ならハッピーエンドなものを書けばいいじゃないか、と書き始めたものです。

文は苦手で、読みにくい部分があるかと思いますが、よろしくお願いします。


今日もいつもと同じ、朝は早く、愛車で通勤する。

勤務開始の時間には1時間以上の余裕があるのだが、会社の門を開けたり、シャッターを開けたり、色々とする事はあるわけで

まあ、別にここまで早く出勤をする必要もないのだが、何事も余裕を持って動きたい俺自身の勝手だ。


季節は冬、路面は所々で凍結している様だ。

時間に余裕もあるし、こういう日はいつも以上に安全運転で行くとしよう。

とまあ、そう思っていたんだが。


「うおっ!」


突然の横断

犬猫の突拍子も無い行動

速度はそこまで出ていなかったのだが、まあ今日は運が悪い。

路面の凍結によるスリップ、速度が出ていないにしてもどうしようもない事だ。

ハンドルが取られる。北国の人はこの状態からでも立て直せるのだろうか、などと良くわからない程に余裕の思考をしてしまう。

呆けた思考のまま、車体がガードレールに当たり、横に回転しながら反対側の縁石に接触し、ちょっとした浮遊感を体感する。

横転する、しかし本当に運がない。本来この程度の速度なら避けた程度でハンドルを取られたりはしないだろう。運転が上手だとか、そういう事ではなく、10年も運転している者ならある程度立て直す事は可能だろう。


暫くそんな事を考えていると、衝撃と共に轟音。

車体が本来当たらない部分を路面に引き摺り、ガラスの割れる音と不快な金属音を響かせて、漸く停止する。


「く・・ぅ・・・」


激痛という程ではない。麻痺しているのだろうか。

ベルトを外そうにも腕が動かない。

心臓の鼓動が異常な程クリアに、直接鼓膜に響くかの様に聞こえる。

何時から呼吸をしていないのかという程、肺が圧迫される感覚を覚える。


「ま・・ぐぼ・・・い・・で・・・」


暗闇の中から帰還する。いつの間にか反射的に目を閉じていた様だ。

視覚の回復、所々ぼやけているが、確認をするには十分だった。

車体から内装を突き抜けて何かが胸に刺さっている様だ。


苦しい

呼吸をする度に喉奥から暖かいモノが溢れてくる。


赤い、普段はあまり見ることが無い血が、視界を赤く染めていく。


(マジか・・・俺こんな簡単に死ぬんか・・・)


ぼやけた視界に、少しずつ色々な物が映り込む。

ルームミラーに映る自分の姿、少しだけだが現状を理解するには十分過ぎた。

胸を貫く鉄の塊、吐血して真っ赤に染まった作業着、顔はガラス片だろうか、小さな傷が所々に確認出来た。

現状を把握した今、やれる事と言えば限られてくる。

諦めが脱力するという身体の動きと共に押し寄せてくる。


(親父、母さん、兄貴・・・)


ここ最近になって結婚をしろと執拗に言葉を重ねてきた親父。


(相手いないもんな、まあ歳も歳だし、そろそろやばいとは思ってたけどさ)


今年で三十路になったが、別段独身貴族とか言うものとは無縁だった。

給料は少ないし、ボーナスもない。正社員というモノにただ縋りついていただけかもしれない。


小言こそあったものの、俺の行動について特に言わなかった母さん。


(わり・・・なんもお返しとかできねぇわ、しかも先に逝く事になっちまった)


誕生日だの、母の日だの、忘れたことはなかった。

高価な物こそ買えなかったが、それでも忘れずに毎年プレゼントはしていた。

父親が帰るまで飯を食わなかったり、風呂は父親が一番最初だとか、何かと古風な考えをする母さん。

自分が結婚するだろう相手も、こんな考え方が出来る人だったら、と思ったものだ。


つい最近結婚して、一児の父になった兄貴


家に寄り付かず、たまに帰ってきたら俺や親父と喧嘩ばかりして、いきなり結婚するってなった時は驚愕したもんだ。

最近は親父とも良好な関係になってきたな。俺はあんまり喋らなかったけどさ。

仲良くやってくれよ。俺はもう、話が出来る状態で家に帰れないみたいだからさ。


ふと、そんなお別れみたいな考えを巡らせていると軽い足音と共に小さな動物が視界に入る。


(おぉ、お前無事だったか。さすが俺だわ)


この事故の原因とも言える小動物であり、避けて助けようともした相手だった。

それは猫だった。小さな猫。毛並みも良く、真っ白で綺麗なやつだ。

驚いたのはその猫の双眸だった。青と赤、オッドアイといえどあまり見ない色をしている瞳。


(綺麗な目してんなお前、拾えるんだったら家に持って帰りたかったわ)


家には7匹の猫がいた。

ふわふわした身体にいつも癒されたものだ。

しかしまあ、こんな状態となってはもうあの癒しも感じられないだろう。

そろそろ迎えも来るだろう。手足の感覚ももうほぼない。

動かせると言えば目だけだ。視界に猫以外にちらほらと人影が現れる。


(朝からすんません、お騒がせして)


もう声も、呼吸の音も、心臓の鼓動も曖昧になってきた。

あぁ、一つ心残りだな。パソコン、常日頃から言ってたから大丈夫かな。

母さん、ちゃんと壊してくれるかな。


一つ大きな息を吐けたかどうかわからないが、まあいい

下がり始めた瞼を受け入れて、俺はその意識を手放した。


視界が閉ざされる刹那、猫の泣き声が聞こえた気がした。

特にいつ更新しようとは考えていませんが、作者の妄想が止まるまでは

毎日更新していければと思います。

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