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偽装の仕方はマニュアルに


 バイト先の工場の朝礼、

 社長が社員とバイトに語ります。


「今日、親会社の人が視察に来ます」

「うちは内職を使っていますが、親会社はうちが内職を使ってると知らないです」

「なので、親会社の人達が視察に来てるときは『内職』という単語を口にしないでください」


 ということですよー、親会社さーん。


 これが今の日本の工場です。

 クレームが無ければいい。

 ばれなきゃいい。

 見つからなければいい。


 そして機械のセッティング。

 この機械は親会社から支給されている。

 されているけるど使い勝手が悪くて、扱える人がいないのでいつもは使ってない。


 親会社の人が視察に来るときだけ、

「いつもこの機械で仕事してますよー」

 というポーズをするために視察の時だけ稼働する機械。


 いつもはふざけていて先生が見回りに来たときだけまじめにしてるフリをする小学生みたい。


 そしてパートの作業机に置かれる作業手順と安全管理が書かれた紙。

 これもいつもは置いてない。

 視察の人が来たときだけ、机の上に登場します。作業机によけいなものがあると邪魔だから。


 で、問題は、働いている人。

 人件費を安くするためか外国人が何人か働いています。

 その人達は日本語が読めません。

 机の上の紙になんて書いてあるのかわかりません。


 親会社の視察の人はなんか頷きながら職場を一周していくけど、

 そこのパートさんはひらがなもカタカナも読めないから、作業手順書とか読めないんですけどねぇ。


 また別の会社のことだけど、

 ある日、キレた営業の人が辞めていきました。

 辞める前に客からのクレームの電話の応対をしてたんだけど、


「あんたんとこの製品、説明書どうりにやっても動かないんだけど」

「そりゃすいませんねぇ。でも仕方がないですね。だってうちで製品を作ってる人がうちの製品の説明書を読めないんですからね」


 あー、内部事情を暴露しちゃったー。


 部品検査の仕事。

 部品の耐久度検査で200MPaの圧力をかける。かけるんだけど、

 そのための治具が

『耐圧限界100MPa』

 と書いてある。

 金が無いので200MPa用の治具が無い。

 だけどその仕事を受けてしまったので、

 破裂しないように祈りながら耐圧検査をする。

 この部品が原発で使われたりするらしい。

 そりゃ爆発するかもなぁ。


 他には夜間の病院の清掃のバイト。

 先輩が丁寧に教えてくれます。

「このチェックシートを見ながら掃除して、終わったところにチェックを入れます」

 このチェックシートがけっこう細かい。

 そしてこの仕事は時間内に終わらせないといけないので、これ全部チェックするのか?


「これを全部チェックするのは時間が足りません。なので、1番から4番までは見なくていいです」

 先輩は1番から4番までサササッとチェックシートにポールペンを走らせる。

「なので、仕事はこの5番から始めていきます」

 なるほどー、勉強になるー。


 なんと言うか。


 すごいですねー、ニッポン。


 特に酷いのが小さな工場。

 昔はちゃんとした職人が造ってた製品。

 でも、その職人がいなくなって作れなくなった製品。

 その工場ではもう誰も作れない、作り方も解らない製品。

 そんなものでも注文が来たりして。


「昔やってたんだから作れるでしよ?」

 目先の金に飛び付く社長は、現状も省みずに答える。

「はい、できますよー」

 できるもんか、あほぅ。


 見た目が似てるだけでまともに使えないものを作って売り付ける。

「なんか、前のとぜんぜん動きが違うんだけど」

「あれぇ? おかしいなぁ?」

 おかしいのはお前の頭じゃないのか?


 なんでこんなことがビジネスとして成立しているんだ? 

 この国、なんだかおかしいよ?


 できないことをできませんと言えず

 わからないことをわかりませんと言えず

 知らないことを知りませんと言えず


 できるはずだ、と言われたら

 そうですね、と答え

 わかってるよね、と言われたら

 もちろんです、と答え

 知ってるでしょ、と言われたら

 当然です、と答え


 外面を取り繕うことにだけ小知恵がまわり、そろそろごまかしようの無いところにまで来てるんじゃないの?

 それともまだまだいけるっていうのか?


 なんだこのチキンレース?

 誰が得してるんだ?


 それとも、これが今の当たり前?


 なんかおかしいと思う私の頭がおかしいのか?


 今日も仕事で作業表の書き込み方を教えてもらう。

 半分は作業表の書き方、半分は誤魔化し方。


 不良品の数を偽装するために個数は書かないようにする、とか。

 最後に帳尻を合わせるとか。

 いつもの仕事の仕方と、親会社とか関連会社の人が来てるときの仕事の仕方との区別の仕方とか。


 まじめに良いもの作ろうとしてたのは、古い時代の職人魂。

 今は職人気取りの年寄りが、誤魔化すことに一生懸命。


 これが今のジャパニーズクオリティー




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