水銀の素敵な使い方
温度計で使われるもの、水銀。
世界でも公害のもととして扱いが厳しくなってきてると、
みなさん本当にそう思ってます?
こぼれた水銀はホウキとチリトリで集めて燃えないごみで。
産廃業者に頼むとお金がかかるからね。
コストダウン、コストダウン。
あと扱う人に知識が無い
温度計を作ってる工場で、机の上にあるのは蓋をちぎった粒ガムのボトル。
そこに水銀が入ってます。
もう何年も蓋をしたことがありません。
「水銀は沸点まで過熱しないと蒸発しないから大丈夫」
大丈夫じゃねぇよ。
常温気化について説明しても、信じてくれません。
逆に私のほうが間違ってる、頭おかしいこと言ってる、という扱い。
あれですよ、あれ。
地球はたいらで、そのまわりを太陽が回ってると信じてる人達に、
「地球は丸くて、太陽のまわりを地球が動いているんだ!」
と、説明しても誰も信じてくれないのとおんなじですよ。
そんなところだから温度計の部品つくりの水銀の使い方もかなり素敵なことに。
水銀の入った金属筒を真空ポンプに繋げてゴンゴンと真空ポンプを動かす。
真空蒸発…………。
あ、知らないのか。
なのでこの真空ポンプのオイル交換すると、古くなった薄茶色のオイルの中に水銀のつぶつぶがいっぱい。
オイルを捨てる箱の中にいれて、
『交換したオイルを入れたこの箱は燃えるごみで出せます』
と書いてあるので、
燃えるごみで出しちゃったよ。この工場。
正気か?
知識が無いって恐い。
他にも、水銀の入った金属筒を
バーナーで炙る。
「こうして暖めて、空気を追い出して、筒を水につけて冷やすと筒の中に水銀が入る」
自称ベテランのじいさんが得意気に語ります。
「これを繰り返して、筒の中の空気を全部出して、水銀で埋める」
「あ、ちょっと離れて」
今度はなに?
「(バーナーで)炙りすぎて、水銀が沸騰した」
年寄りだから、たまにやらかす。
慌てて窓を開けて、扇風機回して換気。
水銀蒸気を外に出す。
小さな工場なんてこんなもの。
ここまで読んで
「水銀を扱うには、毒劇物管理資格とか必要なんじゃないの?」
と、考えたあなた。
なかなかいいところを突いてます。
しかし、残念ながらメッキ等水銀を扱う仕事で毒劇物管理資格が必要な職種は、日本に4種類。
温度計の部品の製造販売は含まれていません。なので、材料と道具が揃ってやり方が解れば、誰でもできます。
ちょっと手先が器用なら、中学生でもできます。
プラモデルを説明書どおりに作れるなら、小学生にもできます。
どこもかしこも問題だらけ、
なのに危機感を感じてるのは私ひとりだけ。
役所も保健所も、私ひとりが相談に行っても、役所は保健所に行けって言うし、保健所は行政に行けって言うし、行政はその地区の役所に行けって言うし。
これをおかしい、と考える私のほうがおかしくて、みんな水銀蒸気を吸うことも、水銀をごみ袋に入れて捨てることも、
もしかして当たり前の普通のことなの?
役所も保健所も、なにもしないみたいなので、どうやら違法では無いようですね。
私ひとりが気をもんで心配して不安になったのも、杞憂という奴ですか。
ちなみにこの工場は東京都内の住宅街。
ガレージを改造したような小さなところ。
隣の民家に住んでる人も、ここで年寄りが水銀を蒸発させたりしてることは知らないだろう。
その隣の民家の二階のベランダでその家のおばさんが洗濯物を干していた。
で、すぐ下の道路でタバコ吸ってる人に怒鳴ってた。
「そんなところでタバコ吸ったら、洗濯物にタバコのにおいがついちゃうじゃない!」
安心してください奥さん。
タバコの煙よりも身体に悪そうな水銀の蒸気が洗濯物についてるだろうから。
風向きしだいだけど。