タイムカードの押し方
会社というものは、こうすれば良くなるだろうと上層部が思い込めば、それをするようになります。
狭いコミュニティの中で、それに疑問を感じる者が居なければ、居ても上に気遣って口にしなければ、それが習慣になります。
習慣になって、小さなコミュニティの当たり前になります。
私がバイトしていたところで変わったタイムカードの使い方をしているところがありました。
朝、出勤して朝礼を行います。
その日の仕事の確認などが伝達されます。
朝礼後、バイトは皆でタイムカードの機械の前に並びます。
出勤の時刻をタイムカードに押すために。
朝礼は仕事時間に含まれないので、朝礼後にタイムカードに出勤の時刻を押します。
昼の休憩は四十五分。
お昼になるとバイトはタイムカードの機械の前に並びます。
退勤の時刻をタイムカードに押すために。
お昼を食べて、午後の仕事が始まる前にタイムカードの機械の前に並びます。
午後の仕事の始まる前に出勤の時刻をタイムカードに押します。
午後の三時には十五分の休憩があります。
この休憩に入るときにも、退勤の時間をタイムカードに打刻します。
十五分の休憩が終わり、仕事の始まる前にまたタイムカードの機械の前に並びます。
出勤の時刻をタイムカードに押します。
一日の仕事が終わり、タイムカードの機械の前に並んで、退勤の時刻をタイムカードに押します。
退勤時刻をタイムカードに押したら皆で整列。
終礼が始まります。
社員が今日の仕事であった問題点、改善点などを語ります。
特に何も無ければこの終礼は十五分ほどで終わります。
ですが社員同士が何か議論を始めると、長くなります。
たいていは相手の仕事のやり方が気に入らないというもので、自分の言い分を語るだけものですが。
これが長引くときは、最長で一時間くらいに。
帰りのタイムカードも押したから、さっさと帰りたいのですが。
バイトはみんな気を付けの姿勢で社員の言うことが無くなるまで終礼は終わりません。
朝礼と終礼は仕事の時間では無いということで、時給は出ません。
なので朝礼の後に出勤のタイムカードを押して、終礼の前に退勤のタイムカードを押します。
この仕事、一日でバイトは六回タイムカードを押すことになります。
この時間とタイムカードの機械の前に並ぶ時間を削れば、職場の掃除の時間はできそうですね。
特に終礼で時給も出ないのに、ただ社員の話をだらだら聞かされるのは、労働意欲を削るのに効果的です。
その会社に長くいると、その小さなコミュニティの当たり前に慣らされて、おかしなこと、効率の悪いことに疑問を感じないようになってしまいます。
もしかしたら誰もが当たり前と思ってることでも、他所から見れば、
『え? 何やってんの?』
ということなるという。
仕事の時間をタイムカードでキッチリと管理したいのかもしれないけれど。
現場で働く者から見れば、
『この会社、アホじゃね?』
と、バカにされているという。
効率化を考えて工夫してみたら、非効率的になる、という悪い見本のような感じですかね。