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『羽川こりゅう作品集』

『羽川こりゅう作品』7.「こころぐらす(未公開)」

作者: 羽川こりゅう

みなさんは むしめがねを しっていますか?

それは ちいさな むしさんを みるときに つかう どうぐで、いちまいの おおきな れんずが ついています。

きょうは みなさんに ちいさな むしさんよりも もっと ずっと みえにくい ものを みるときに つかう どうぐを おみせしたいと おもいます。

かたちは むしめがねと かわりません。

れんずの まわりには くろいろの ふちが ついています。

おおきさは ひょっとすると みなさんが しっている むしめがね よりも おおきいかも しれません。

この どうぐの なまえは、こころめがね。

なまえの とおり、こころの なかを のぞくときに つかう どうぐです。

すこし つかって みましょうか。


あそこに おべんきょうを しない おとこのこを しかっている おとうさんが いますね。

あ。

こころめがねを つかう まえに、かんがえて みましょうか。

おとうさんは どうして おとこのこを しかっているのでしょうか。

おとこのこが おべんきょうを しないから でしょうか。

うーん。

それだと さんかく です。

では さっそく こころめがねを つかって おとうさんの こころの なかを のぞいて みましょう。

あらあら。

みえて きましたね。

おとうさんの こころの なかには おとなに なった おとこのこの すがたが みえます。

すーつを きて ねくたいを しめて きりっとした かおを しています。

となりに いるのは おくさん でしょうか。

とても きれいな おんなの ひとが よりそっています。

そして、おくさんの むねの なかで あんしんして ぐっすり ねむっている あかちゃん。

そうです。

これは おとこのこの みらい。

もっと いうと、おとうさんが おもい えがいている おとこのこの みらいです。

おとうさんは おとこのこが しょうらい、りっぱに おとなになって かぞくと いっしょに しあわせに くらしてほしいと おもっているのです。

せいかいは おとこのこに しょうらい しあわせに なってほしいから でした。

おべんきょうは あなたの こころを ゆたかにします。

いろいろな かんがえかたや ものの みかたを まなぶことは、とても じゅうような ことです。

ひとを いたわり あいし ゆるして、そして この おとうさんの ように ずっと さきの みらいを かんがえて ひとを しかる ことの できる おとなに なるための ものですから。

だから、おとうさんは おとこのこを しかったのです。


もうちょっと つかって みましょうか。

あそこに おんなのこに いじわるを する おとこのこが いますね。

さあ、また かんがえて みましょう。

どうして おとこのこは おんなのこを いじわるを するのでしょうか。

おんなのこの ことが きらい だから?

それは ふせいかい ですよ!

さあ、こころめがねを つかって おとこのこの こころの なかを のぞいて みましょう。

あらあら。

なにやら みえて きましたね。

おとこのこと おんなのこが なかよく てを つないで あそんでいます。

ふたりとも とても たのしそう。

そうです。

おとこのこは ほんとうは おんなのこの ことが だいすき なのです。

なのに いじわるして しまうのは なぜでしょうか。


じつは この こころめがねには みえないものが あります。

それは こころの なかの きもちと じっさいに くちに でてしまう ことばを つなぐ いとです。

にんげんは なにかを いう まえに、たのしいとか かなしいとか そういう きもちが あって はじめて ことばが でてくるのです。

さっきの おとうさんの こころを のぞいたとき、おとうさんの しあわせに なってほしい という きもちと、だから べんきょう、しなさい! という ことばは いっぽんの いとで つなぐ ことが できました。

ですが このおとこのこの きもちと ことばの いとは どうでしょうか。

みなさんが おべんきょうを して いろいろな かんがえかたや ものの みかたを まなぶのは、この おとこのこの ような きもちと ことばを いっぽんの いとで つなぐ ことが できない ひとの こころと こうどうを、じぶんで かんがえて こたえを だす ため なのです。

てすとの てんすうも もちろん だいじ ですが、もっと だいじな ことは ひとの きもちを わかる ように なる ことだと わたしは おもいます。

ですから みなさんも このほんを とじた あと、かんがえて みてください。

どうして? という ぎもんを じぶんで かんがえて じぶんで こたえを だして みましょう。

もちろん こたえは まちがって いても いいのです。

そのときは、きちんと あやまれば いいのです。

ごめんなさい、と。

そうして、そこから また あたらしい ことを まなべば いいのですから。


こころめがねは とても べんりな ものですが、すべてを みる ことは できません。

この よの なかには めに みえない ものが たくさん あります。

どんなに べんりに なっても みえない ものが たくさん あります。

だって どうぐを つかうのは にんげん ですから。

だから わたしたちは かんがえる ことを もっと もっと まなばないと いけないのです。

それでは さいごに かんがえて みてください。

どうして わたしは こんな ことを いっているのでしょうか。

せいかいは いいません。

みなさんが じぶんで かんがえて みてください。

そして その こたえは おとなに なったとき、あなたが こどもたちに おしえて あげてください。


(了)

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