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赤朱鷺色の空の下で 3


           *



「帝国皇家の血筋を引く男子、かあ」


「そも、三百年前、帝国の皇族たち十二名が、この島国に降り立った」


 悠太はそろりと人気のない雑居ビルの一階を覗き見る。

 階段とエレベーター、それにほこりの薄く積もった消火器が見えた。


「時の皇帝、ルーシャレット十三世はもともと八人兄弟の末っ子で、とうてい帝位の望めるような地位にはなかった。だから兄たちが帝位継承権争いという骨肉の戦いにおいて皆死に、帝位が巡ってきたとき、彼は三〇代半ばにして既に世捨て人の風情を持っていたそうだ」


「兄弟同士で殺しあっちゃあ、人間不信にもなるよね」


「さもありなん」

 リリナはうなずくと魔法を発動する。

 ぽう、と薄暗いエントランスであるからようやっと見えるほどの発光体が現出する。蛍のようだ。だが、明滅しないそれはやはり魔法の産物であった。


「帝位に執着がないからこそ、四王国の調停役も出来たし、また『帝国』の品格も保たれた。今でも四王家は帝国の血筋に国を譲るまでの『つなぎ』として存在しているにすぎない、と言う建前だ」

「へえ」

「ま、権威づけの一種だな。血塗られた玉座のすわり心地は悪い、という話しだ」

 悠太は大きくうなずく。

 確かにその通りなのだろう。

「上だ」

 発光体は上へ上へと昇り、何度も天井にぶつかってはリリナの胸前へと戻ってくる。


 リリナは颯爽さっそうと階段を上る。悠太は不承不承ふしょうぶしょうではあるが、いて行かないわけにもいかない。不法侵入。だが、ええい、どうなってもかまう物か!という破れかぶれの衝動に身を任せた。

 真昼の光が階段のスリット越しに降り注ぎ、前を行くリリナに複雑な陰影を与えた。

 ちょうど目の前にむき出しのすらっとしたふくらはぎが上下して、少年は強烈なコントラストを生じたその皮膚腱筋肉のリズミカルな動きに見とれつつ両脚を動かす。


「ぐへ」


 見とれていたから止まったのにも気づかず、悠太はリリナのひかがみに顔面をうずめることになった。

 少女は無言で悲鳴を上げると、いわゆる〈膝カックン〉の状態になってこけそうになったところを、手で階段の手すりを掴んで事なきを得た。


「何をする!危ないじゃないか!」


 リリナはごく小さな声で抗議の声を上げる。


「ごめん、ボーっとしてて」


 しかしそれ以上少女がなじらなかったのは確かに自分にも非があるのを認めたからだし、それどころか危険だとも思ったからだ。

 階段の半ば、五階と四階の間。というよりはリリナの目から上だけが五階に到達している姿勢である。彼女はきょろきょろと周囲をうかがい、ひとけがないことを確認すると、魔法の蛍が水平移動しているのを見て取り、狼の革から作ったモカシン状の靴。これだけは彼女が「フォーダーン」から来た時のままだが、現代日本人の目から見てもまったく違和感のないデザインのそれで、音を立てずに五階に立つ。

 魔法の蛍は少女の胸元で浮遊し、彼女をいざなう。悠太もせいぜい足音を立てないようにアディダスのスニーカー(スニーカーの語義は「こそこそする者」だ)さばきに気を付けながら残りの数段を上りきった。


 蛍はゆらゆらと、一室のドアの前にたゆたっていた。


「ここのようだな」


 少女は臆することなくドアノブを回すが、しかし閉まっている。

 まあ予想の範囲内だ。小さく何事かを呟くと、リズミカルにドアノブを指先で叩きだした。

 開錠の魔法。

 既に何度も見ている彼女の魔法の力。

 たおやかな指先のタップにシリンダー錠は苦も無く白旗を上げた。

 かしゃん、と静かな金属音を立ててロックが外れる。

 リリナは何事もなかったようにドアを勢いよく開ける。

 開けて、舌打ちをする。

 その部屋には、誰も、あるいは何もなかったからだ。

 

 冷気はあるから。誰かが今しがたまでエアコンを使っていたのだろう。入れ違いなのか、それとも――。


「こちらの動きが見られているということなのか?」

 少女はほぞを噛む。



       4


 前の席の女子高生たちは部活帰りか、それとも午後の腹ごしらえなのか、旺盛な食欲でハンバーガーに齧り付いている。ベリーショートに白い肌。その上で平均より高い身長とくれば、バスケかバレーというところだろう。


――伽奈は中学でもバスケをやるのかな?


 と、ふと悠太は疑問に思った。

 妹の伽奈はミニバスの選手で、夏休みも男の子に交じって虫取りをしたりするような男勝りであるのだが、ここのところすっかり感化されて、普段は決してはかないスカートを引っ張り出してきて「うふふ」などと笑う。

 彼はその妹のしぐさに渋い顔をせざるを得ない。

 なるほど残念ながら、これが「お育ちの差」と言う物だろう。

 ニッポンに住むごく普通の小学五年生なのだから仕方がないとはいえ、その気取った笑い方はリリナの自然体の気品とは真逆の、ある種の婀娜あだっぽさしか見えない。あえて例えるのならマスコミで取り上げる水商売の女の物腰でしかなかった。


――まあしょうがないか、そもそもお姫様の侍女、それも魔法使い、なんだもんなあ。


 その現実的とは言えない事実に、悠太は苦笑するしかない。


 だが、苦笑と言う穏やかな表情を作っている余裕は今やなかった。 

 その気品にあふれているリリナの総身に怒りが満ちているからだ。


「逃げ回られている!」


 静かに激しく、リリナはそう断言した。


 彼女の身になってみれば当然だろう、事ここに至るまですべて空振り。しかも単なる盲滅法めくらめっぽうではなく、探知魔法による決め打ちだというのにすべてスカされている。

 プリンターで打ち出した地図に焼印をつけてアタリを取り、更に縮尺の細かい地図を水晶のペンダントをかざし正確な番地を見つける。その上で探知魔法の人工精霊を作り出して探し出しているというのに、行く先にことごとくひとけがない。

 この迂遠うえんな方法を取るのには、やはり「魔法の若枝」の喪失という事態があげられるだろう。探知魔法を「起動」させるのにも一苦労なのだ。


「そもそも――」

 悠太はフライドポテトを指揮棒のように振って眼前の少女に問いただす。

「探知魔法は正しいの?」

 その質問を口に出した直後、悠太は失敗を悟った。ぎらり、と抜き身の刃物みたいな目でリリナに睨みつけられたからだ。

 口の周りについたハンバーガーソースを紙で拭き取ってから、少女は悠太を正面からはっしと見据える。その美しい緑がかった灰色の瞳は吸い込まれそうなほど澄んでいた。


「そうだな―――魔法は『地上に棲まう者ども』との混血によって使える人間が減っていった、ということを話したはずだ」

 悠太はコクリとうなずく。

「現在フォーダーンに人口がどれだけいるのかは正確には分からないが、おおざっぱに言って二千五百万人から三千万人の間。その中で魔術師協会の会員は二千人強」

「一万人に一人?」

「もちろん協会に入っていない魔術師も多いが、協会が五十年かけて行った調査だと魔法使いは九千五百人に一人生まれるそうだから、だいたいそんなものだろう」

 少女はそこでいったん息をつぎ、喉の渇きを覚えたのか、黒褐色の液体をストローで口にする。直後、衝撃を受けた顔になり、そっと悠太にグラスを差し出した。

 悠太は苦笑すると自身の口をつけていないオレンジジュースと交換してやる。口直しにと果汁をすするリリナを見やりながら、あれ、と気づく。このコーラのグラスに刺さっているストローはリリナが使ったそのままだ、と。


「協会員は魔法使いでさえあれば犯罪者でも入れる学術集団だ。ありとあらゆる職業、階層に魔法の光は存在し、人々を迷信の暗がりから解き放っている」


 ゴクリ、と固唾かたずをのんで悠太はストローの先端をにらむ。


「では魔法とは何か?ここが問題だ」

 リリナは人差し指を立てた。

「まず言えることは、魔法使い以外はどれほど学んでも魔法は使えない」

 もう一本立てる。

「そして魔法使いであるならば、修練を積めば段階的に誰でも魔法は習得できるものだということ」

 Vサインを作ってリリナはその右手を左手の人差し指手一つ一つ「どちらにしようかな」のように触れる。

「そしてこの二つは相矛盾している」

 ちゃんと聞いているのか?といぶかしげにリリナは悠太を見る。


 悠太はこくこくと頷いて、先をうながす。


「純粋な技術であったなら誰でも魔法は使えるはずだ。それこそ数学や楽器の演奏のようにな。そして生得の能力であったなら、学ぶことなんて必要ないはずだ。鳥の翼や人の言葉のように」

「でもそれは」

「もちろん、人はおろか鳥だって親鳥に教えられて飛べるようになるということは知っている。でもそうじゃない、『魔法使いは、魔法を教わらなければ、髪の毛一本動かすことが出来ない』んだよ」

 なるほど。

 赤ん坊はなん語を「話す」し、雛はパタパタと翼を動かす。もちろんそれも習得途中の行為と観ることはできるだろうが、魔法使いにはそれすらない、ということか。


「そして魔法学の権威であっても、魔法使いの才能がなければ同じく髪の毛一本動かすことはできない」


 なるほど、そんなものか。


 悠太は分かったような分からなかったような気分で、コーラをすする。すすってから気付く。

――しまった!なんの気なしに飲んでしまった!

 と。


「どうした?」

 リリナは後悔とも何ともつかない表情の悠太を不思議そうな顔で見やった。


 「いやなんでもないから続けて」と、『いやまあリリナは確かにかわいいけれども間接キスとか小学生ではないのだからあんまり気にすることではないしそもそも女の子の唾液の味を味わおうとか明らかな変態行為じゃないか俺はそんなことがしたかったのかいやいやいやそうではないそうではないよ、つまり今やるべきことはとりあえず、とりあえずやるべきことはつまり、つまりここは、……落ち着こう……』そう思考しつつ悠太は返答した。


 変な奴だな、とリリナは毒気を抜かれて形でフライドオニオンを口の中に入れる。

「ま、とにかく魔法使いであることは生得的な何事かではあるのだが、魔法を使うということは所与しょよの能力ではないということだ。さて、ここで問題になるのは魔法使いの見分け方になる」


 答えを待つ教師のような目で見つめられた悠太はしばらく考えたが、あ、と気づいた。


「そうだ、魔法使いを探す魔法を使えばいい。もちろんその魔法を打ち消す魔法もあるがな。しかし魔法を学んでいない者は魔法を使えないのだから必ず見つかる。ほとんどの地域で三歳になると魔法使いかそうでないかの査定が行われるものだ。その様な場合は額を触って個別に見分けるのだけれど、時には広域で探知したりもする。それはどんな場合だと思う?……そう、戦争だよ。魔術師は兵士であり兵器で兵站へいたんでもある。重要という言葉では言い表せないぐらい戦場の趨勢すうせいを決定づける要因なんだ」

 つまりだ、とリリナはどんとハンバーガーのトレイと籠の乗った卓を拳で叩いた。隣の客がぎょっとした目でこちらを見る。

「魔法の探知は生死にかかわる。間違うはずがない。そしてこの私の魔法をかいくぐるほどの魔法使いが地上にいるはずもない!」


 随分な自信だ、と思ったが悠太は感心したようにうなずいて見せた。

「そしてそのことから導き出される答えは一つ……」

 可憐な少女は鹿爪しかつめらしく腕を組んだ。


「私たちに敵対している勢力がある。その勢力が『囮』を使って私たちをひきずりまわしている」


「理由は?」

「地上世界に私以上の魔法使いがいない理由と同じだ」

 少女は頬に氷のような微笑を作る。

「魔法使いは己の中にある魔法力を使って魔法を行使している。有限の力ではあるが、フォーダーンでは魔法力が横溢おういつしているから一晩寝ればすっかり元に戻る。しかし地上界では魔法力が希薄だ。こうやって栄養を取ったり、休息によって一時的に回復したりはするが、その総量は常に目減りして行っているんだ。現にわたしの今日の魔法量は、おとといの八割程度と言ったところだ」

 なるほど、古くなった充電池のような状態になるのか。

 悠太は父親が古い携帯電話を買い換えたいと母親と交渉していた際の会話を思い出していた。


「とはいえ完全に使えなくなる物でもない。そして今はまだ問題なくどの魔法も使える。まあ、そこら辺を含め、魔法とは未だに謎が多い代物だよ」

「ふーん」

 とコーラを、正確にはコーラ風味の解けた氷水をすすりながら、悠太ははっと思い出した。

「『敵対している勢力』って、あれ、君がコーヒーをぶっかけた、あの『帰還社』ってところ?」

 悠太の問いにリリナは面白くもなさそうな顔で「……だろうな」と呟くと、一瞬遠くを睨んでから何事かをぶつぶつと呟き始めた。

 この少女はこうやって、自分の思考に沈潜する時が日に二度ほどあるのに少年は気付いていたから、静かにコーラの香りがする水をすするのみだ。


 リリナの思考は続く。

 何が目的なのか?

 ただの嫌がらせにしては手が込んでいる。

 偶然?

 その可能性も捨てるべきではないだろうが、逆にそれだけでは説明がつかない。

 どうするにせよ向こうの話を聞かねばならない。

しかし、正面から、というのは下策というモノだろう。下っ端を捕まえて、となったところであのクドイ顔の男がすべてを伝えているとも思えない。

 だが、相手の狙いは分かった。

 リリナの思考はそこまで進む。

 これは一種の兵糧ひょうろう攻めなのだ。

 であるのならば容疑者は一つか。――少女は目の前にいる少年を見据える。急に見つめられた少年はどぎまぎして挙動不審になる。

 その様子に少女の目はふっと微笑んだ。微笑んでから今度は冷たい思考が少女の瞳に湛えられる。

 相手の目的は分からない。分からないなりにしかし分かったことがある。

戦いは避けられないのだ。そしてそれならばコトは早い方がいい。


 だとしたら――この少年や、あの善良な家族を巻き込むわけにはいかないな。

 

 少女の目に決意が灯った。



          5



 既に時刻は夕方の五時を過ぎている。昼食をとってから二件あたり、もはや当たり前のようにはずれであった。

 二人は並んで河川敷の遊歩道を歩いている。電車やバスを使うよりも家に戻るのにはこちらを歩いた方が早い。


「今日は、母さんがから揚げだって言ってたよ」

「ほう、から揚げ。――揚げ鳥か。美味そうだ」

「母さんのから揚げはちょっとだけカレー粉が入っていてね、おいしいんだよ」

「ふむ、カレー粉がどんなものかは知らんが、ますます楽しみだな」

 少女はちょっとだけ微笑む。彼女の口に母の手料理は合ったようで、毎食ごとに「こんなに美味い物は初めてだ!」を連発している。

 だが、その微笑には陰がある。――疲れているのか、無理もないな、と悠太は見て取った。彼自身も疲れ、傷ついている身だ。その様なことは鼻が利く。

 

 会話は無い。

 無いが、気まずいというわけでもない。リリナが思案に暮れているからだ。そのことはむしろ若輩者の少年にとって有り難いとさえいえた。


――地上世界は汚濁に満ちた不浄の地であると教えられてきたけれど。


 フォーダーンに住まう者にとってそれは常識だ。だからこそ帝国の皇族は地上堕ちを選んだのだ。それは生きながら地獄に落ちるのと等しいことであるから。

 しかし。

 少女は傍らの少年を見やる。

 黒い髪に茶色の瞳。この国の人間の平均的な見た目だ。そしてエデバールと何ら変わりはない。

 もしこの少年が邪悪なのだということになれば、フォーダーンに住まうすべての人間が邪悪なのだ。魔法の件も含め、彼女とてフォーダーンについては何も知らないに等しい。

 そもそも常に頭上にあって輝く水晶のもり、これからして本当の謎だ。かの地に足を踏み入れた人間の話ですら寝物語に聞かされるような「おはなし」しかない。学術的に価値のある報告は皆無に等しい。

 地上世界の実情は彼女の知識とは違っていた。ではそれ以外も違っているのではないのだろうか?

 

 不意にリリナの足が止まる。

 悠太は一歩二歩行き過ぎて、そのことに気付いて振り向いた。


――やはり「あの件」が今回の事件に暗く影を落としている。


 少女の胸に刺さるトゲがずきりと疼いた。

 悠太には話さなかった、話すこともないと思っていたあの件が、だ。


――天意があるとして、


 リリナは足を完全に止める。

「?」

 悠太は不思議そうに振り向いた。

 リリナはつん、と鼻の奥に痛みを感じた。


――天意があるとして、それが我々主従を破滅させよと思っているのなら、それにどう抗えばいいのだろうか?


 少女は両拳を握りしめ、下唇を噛みしめる。

 風がびょうと吹き、土手に生える夏草を揺らす。

 川を渡った風は温度を一度二度奪われ、涼やかに少女と少年の髪をなぶる。リリナは髪を押さえるようなふりをして顔を隠した。

 川原でサッカーに興じる子供たちの嬌声きょうせい、マイペースにジョギングする壮年男性の視線、毛の長い小型犬を散歩させている老婆が愛犬に語りかける言葉。

 隣のサイクリングコースではカラフルな服装の自転車乗りたちが目の覚めるようなスピードで疾走している。

 地平に沈まんとする太陽の赤く染まった光に照らされて、少女は自分の孤独をひしと感じた。

 何もかもが赤く染まるこの光景。

 巨大な建物や、映像を受信する機械と言ったいわゆる「地上界文明」は彼女も知識として知っていたから、驚きこそすれそれは想像外の出来事ではない。それに大体の事は魔法で同じことが出来る。だがしかし、太陽が上空はるかに消えゆくフォーダーンの人間にとって、太陽が地平に沈むこの光景、そして見る物すべてを赤く染めあげる夕陽はどうしても慣れるものではない。


 もしも、と思う。


 もしもこの地で一人、探索をしていたのならばここまでの孤独は感じていなかったはずだ。

 きょとんとした瞳の少年をほとんど腹立たしいくらいの思いで見つめると、彼女の足は動くことが無かった。

 だから、悠太もその場にじっとしているしかない。

 物言わぬ美しい少女が煩悶はんもんしているのに、声をかけられるほどの勇気も経験も彼は所有していない。

 だが、逃げずにその場に居るだけの分別は持っていた。

 ただ、その場で一緒に立ち尽くすだけの思いやりを。

 

 夕焼けはいよいよ凄まじく、空は赤とピンクに染まる。それに青空の残りと、藍色の夜空とが入り混じり、複雑なグラデーションを見せる。

 暮れゆく色彩。

 二人はその中で物も言わずに立ち尽くしている。

 

 赤朱鷺あかとき色の空の下で。



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