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第84話 全ての主人公の在るべき姿

あとは最終話とエピローグのみとなりました


ここまで読んでいただきありがとうございます

「……はい?」


まずディアナが声を漏らす

素っ頓狂な顔をしたディアナにやれやれと言った感じでトオルは繰り返す


「だから、何度もいうが俺は雷神トオ」


「気持ち悪いんだけどそれ…」


「えぇ!!?」



どうやらトオルはこの固まった空気がわかってないようだ

敵であるロキも目を見開いて呆然としているというのに


痛々しいものを見るような視線を送られトオルは恥ずかしそうに口元をを隠す


「え…え?これすごく良」



トオルの言葉を遮るように地面からロキの姿が現れる



(分身か!?)


首元に手を伸ばしてくる腕をガードしようとしたが


「ガッ…!?」


防御しようとした腕をロキの腕が"すり抜け"、トオルの首をがっちり"掴んで"締め付ける


(どんな魔法だよ…!)


首を絞める腕を引きはがそうとするがロキの腕には触れずにすり抜けるだけだ


「これ…は…」



「そうだよ、不知火の干渉の能力だよ」


ゴホゴホとむせながら立ち上がるロキ


「でもあれは構造が難しすぎる。解析と構築にすごい時間がかかった」



起き上がるロキにディアナが襲いかかる


大剣を振り上げ、首を切り離そうとするが



ガギッ、


鈍い音が響き、大剣が吹き飛ぶ


ロキの首は無傷



「今のは君たちのとこのアヌビスの能力だよ」


アヌビスのそのままの状態で保ち続ける能力

しかしなぜそれをロキが使えるのだ



「見よう見まねの魔法は時間がかかる。発動までかなりの時間がかかったよ。こんなことなら最初から使った状態で来ればよかった」




「ほいほいパクってんじゃねぇよ!」


トオルの体から電気が弾ける

放電によって分身は消え去る


「トールがお前を嫌ってる理由がよーくわかるわ」


トオルは眉間にしわを寄せてロキを睨みつける


そらをロキも睨み返す


「《ジャミング》程度で図に乗るな。二対一で図に乗るな。神になったからって図に乗るな。限定解除で図に乗るな」


「お前ら忘れてないだろうな」


「僕がまだ限定解除をしていないということを」




「限定解除!!」




ロキの目の下の紋章が消え、金髪だった髪が紫へと変色する


「言ってもお前らにはどうしようもないから言ってやる。僕の限定解除の力は《詠唱破棄》それだけだ」


ロキが腕を真上に上げる

その上に一瞬で黒い玉が現れる


ロキが腕を下ろすとそれに合わせて、黒い玉も動き始める



「任せて!」


ディアナが周りの植物を操る



「馬鹿!!早く逃げろ!!」


トオルの悲鳴が聞こえると同時に、ディアナから見たら瞬間移動したように黒い玉は目の前に現れ、黒い玉はディアナを包む



「一回一回説明してやろう。説明してもなお無理だということをわからせてやる」



「今のはディアナに幻覚の魔法をかけただけ。普通の玉の速さより遅いように見せかけただけ。なーに簡単なことだよ。そしてこの黒い玉の正体は…」



「…洗脳魔法でした」




ディアナがトオルに襲いかかる



「ちょ、待」


トオルの声など聞き入れずに拳を振るうディアナ


振るう拳の一つ一つが圧倒的な破壊力を持ち、一度でも当たれば重傷はまぬがれられない

幸いなことに大剣両方とも遠くへ吹き飛び消えていた


(大剣の方が遅くてよかったかな…)


ディアナの速さは、体に電流を流した今のトオルと五分五分である


しかも、相手はディアナだけじゃない

ロキが魔法を発動させる


甲高い音があたりに鳴り響く


「うぐ…」


トオルの鼓膜が破裂した

見たところディアナは無事なようだが、音を封じられた


(まさかこのまま五感を奪って…)



突然ぐらりとトオルの視界が歪んだ


「は?」



縦に生えていたはずの木々が横向きに変わる


「さっきの音は幻覚作用のある超音波だよ。それの音を増幅させる魔法を重ねてかけて鼓膜を破って幻覚にハメる。って説明しても聞こえてないのか」


ロキは楽しそうに笑う




「ゴハッ…!」


自分が倒れているのだとわかった瞬間に横腹に重い衝撃が突き抜ける


吹き飛ぶはずのトオルの体はディアナによって引っ張られ、その場に止まる

そして二発目が入る

もう一度横腹に

依然として逃げ出せない

ディアナの拳を受けて意識が朦朧としている以前にめまいがする


(ロキ…か…)


視界の端にチラリとディアナが腕を振り上げる姿が見える





泣いていた





トオルは体中から放電し、ディアナを怯ませる


そこから一気にロキに近付き、思い切り殴る

朦朧としていた意識は覚醒し、目を見開き、瞳孔すら開いていた


ディアナの真似をするようにロキを掴んで引き寄せる


体中にありったけの電気を流し、拳に電流を溜めて殴りとばす

殴る度に雷がロキを貫き、ロキを焼いていく


動けるようになったディアナの拳を受けてが後ろに迫る


「もういい…」



腕を振り上げて迫るディアナを力強く抱き留める


ピタリとディアナの動きは止まるが、少し経って抱きつくトオルを力任せに振り解く



「ディアナ…」


悔しそうに歯噛みするトオル



「洗脳がそう簡単に解けるわけないだろ」


ロキが爪をトオルに突き立てる


背中を切り裂かれよろめくトオルに周りの草木が追い討ちを掛ける

傷だらけのトオルの体を乱打し吹き飛ばす


吹き飛ばされたトオルは気に叩きつけられ、ズルズルと倒れる


ディアナの拳を二発受けているのだ

衝撃でショック死してもおかしくはなかった


内蔵は潰され、骨はボロボロ

だがトオルは立ち上がる

理由は簡単だ



「仲間を…俺の女を泣かすな…殺すぞ」


目をギラつかせてトオルは立ち上がる


動機が不純?

今までのシリアスが台無しだ?

そんなもの知らない

いつだってそんな理由のはずだ

どうせそんなもんなのだ


女の子を泣かすやつを許せておけるか

否だ、


どこぞの物語のツンツン頭のかっこ悪い少年も、

どこぞの物語のおちゃらけた例外少年も、

どこぞの物語の冷めきった白髪の少年も、

どこぞの物語の弱きを助ける優しい少年も


みんな全てそんなものだろう


主人公

まぁ例外的な者もいるが

みんなそんな不純な理由で動いているはずだ

そうじゃないなんてありえない

そんなの全然つまらないじゃないか

自分のヒロインを助けるために頑張るのが


「主人公ってもんだろ」


トオルは小さく呟く


かつて、少年はただの高校生だった

普通を望み、目立つことを嫌い、

主人公となるのを嫌った


しかし、ちょっとした気まぐれと、そうあるべきだった運命によって少年は変わっていった


脇役を望んだはずの少年は今や

一つの物語の

いや、



一つの神話の主人公となる




トオルは駆け出した

軋む体にムチをうち、流れる血を気にもせず


彼女を泣かせたクソ野郎に向かって一直線に


「死にに来たのか?最後は狂って終わるのか。つまんない」


ロキは両腕を狼に変える

錯乱した相手に魔法を使うまでもない



「ディアナ!やれ!!」



トオルが突然叫ぶ


「あいよ」


ロキに背を向けて立っていたディアナはロキの方を振り向き、能力を発動させる


ロキの足元から木が生えてロキを固定する



「な…洗脳はどうした!?」


ロキは焦って喚く


「《ジャミング》。忘れた?」


ディアナがにっこり笑う


トオルは抱きついた時にジャミングをかけ、ディアナを開放してそのまま演技を続けるよう耳打ちした


「そういうことだ」


ヒロインを助けたが、

泣かせたという事実の借りは返していない


かつてない程の電気を右手に溜める

今となってはヤールングレイプも必要ない



足を踏み込み腕を振り上げる










(やはり、雷神はこぞって馬鹿のようだ!!)


ロキは内心喜んでいた


(《アイギスの肩当て》!!体をバラバラにされようがこれだけは死守してきた!もしもこんな状況になるかもしれないと予想してな!!)




シュル…


木の枝がロキに伸びていき、服を引き裂き肩当てを引きちぎって奪う



「なぁ!!!!??」



「あんたと違って私は忘れてないわよ」


ディアナは再び笑う



「く…クソがああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」


ロキが悲鳴をあげて、それをトオルの咆哮が打ち消す


「はあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」



「これで終わりだああああ!!!!!」



森の中を光が埋め尽くし、

雷が弾けて、それもやがて収束していき







聖戦終了の合図が鳴る




ラスボスなのに呆気ないとか、


実は高橋戦、後ろにアヌビスとアフロディテがいたとか


そういうことは気にしなくていいんですごめんなさい


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