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第81話 vsロキ その⑥

「図に乗るなよクソアマがッ!!!」


バラバラにされたロキがヒステリックに喚き散らす


しかし見ての通りバラバラにされているのでただの負け惜しみにしか聞こえない


「あんたまだ生きてんの…」


呆れの中に恐怖が混ざったような表情でロキを見下ろす


「僕を見下ろすな!!」



その瞬間、ロキの体が繋がり元に戻って、ディアナから一気に離れる


「僕は直接頭を潰さない限り死なないんだよ!覚えとけババァ!」


ロキが逃げながらそう叫ぶ


「誰が貧乳だって!!?」


「んなこと言ってねぇよ!!?」


ディアナがキレて大剣を投げつける


(来た…!)


ロキは逃げるのをやめて、飛んでくる大剣に向き合う


「な!」


予想外のロキの動きに驚くディアナ


ロキは飛んでくる大剣を止めようとするが



「あ……」


止めようとした腕が大剣に巻き込まれ、切り飛ばされる


すぐさま腕を再生させるがロキは驚愕の表情を浮かべ呆然と立っていた


「なんて重さだよ……」


ボソリと心の声が漏れる


そこそこの重さの大剣なら余裕で止められる

しかしディアナの大剣は無理だった

ありえない程の重さの大剣

それをあいつは片手で投げ…


空気を割くような音が背後から聞こえ、ほぼ反射で横に飛び退く


ターンしてもどってきた大剣が、ロキがいたはずの空間を切り裂く

そして戻ってくる大剣を片手で受け止めるディアナ


「化け物かよ…」



ロキは全身回復で魔力の半分以上を使っている

"全身"を"あの速さ"で回復するのは膨大な魔力を要する

しかしやらなければ殺されていた


(勝てないことはない、だが時間がかかる)


時間がかかると困ることがある

それは…



(トールが何をするかだ)



あいつはまだ生きていた

何をするのかわからない

不安を今すぐぬぐい去りたい

どう仕様も無いこの不安を、

この胸騒ぎを…



「さっさと潰すか…」


ロキの両腕が変化し始める

五本の指先の爪がミシミシと尖っていき、手の甲から腕にかけて銀色の毛が生え、伸びていく

金髪の髪の毛の間からは犬のような銀色の耳が生え、犬歯が伸びて鋭くなる



「コロス」



ググッ、と足に力を溜め、一気に蹴り出す


木と木を抉るようにして飛び回り、ディアナの後ろに回り込んで、その爪を振り上げる


しかし、突然ディアナの周りに木が生え、ディアナを守るようにドーム型に絡み合う

爪はその木を抉っただけでディアナには届かなかった


その木の膜の中から大剣が伸びてくる

身をかがめてそれをかわし、一点に集中して木を抉りとる

その作業を妨害するように周りの木々がロキに向かって伸び、巻き付こうとする


ディアナへの攻撃は諦め、後ろに下がって獣のように低く身構える


「変身能力かしら」


木の中からディアナが姿を出す

身構えるロキは猛獣のように鋭い目つきをしていて、両手の爪は地面に深くめり込んでいる


「ヨク気づいたナ。クソアマにシテは頭が回るな」


「あんたに言われたくないわよ」


大剣を両手で同時に投げつける


「馬鹿が…」


軽々とその大剣をかわし、一気にディアナへ走り出そうとした



瞬間

ロキは鼻を押さえて、ディアナからさらに遠くへ距離を置く


「気付かれちゃったか…」


残念そうな顔でため息をつくディアナ



「トールの幻覚もこレの仕業カ」


鼻を押さえたままディアナを睨みつける


「ご名答。幻覚作用のある花粉を飛ばす植物を私の周りに生やしてるわ」


よく見ると、ディアナの周りには変わった色の花がいくつも咲いている

多分それから花粉が飛んでいるのだろう


「鼻が効いてその姿。犬…いや、狼ね」


ピクリとロキの耳が動く

どうやら図星のようだ


ロキの大元の能力は《変身》

動物に変身することができる能力だ

それと合わせてロキは特殊な魔法をいくつも使っている

元からある魔法に手を加えて、オリジナルの魔法を作っている

更にはレーヴァテインという神器と、オーディンから盗んだドラウプニルとアテナのアイギスの肩当て


これらを全て楽々と使いこなすロキがトリックスターと呼ばれる所以である



「まぁ、私に近づけないんならいいんだけどね」


ロキの足元に図太いツタが生える

ものすごい成長スピードでロキに絡みつき、下半身をがっちり固定する


これが何を意味するのかわかっているロキは慌ててツタを切り裂こうとするが、爪が全く歯がたたない


「ッ!!」


木々を切り裂き何かがこっちに向かってくる

それが何かをロキは知っている

だから焦って抜け出そうとする


肉眼でそれが見えた次の瞬間にはロキの眼前に迫っていた


ディアナの大剣はある一定の距離を過ぎるとターンして戻ってくる


ロキによけられた大剣は距離の限界に達して、ターンして戻ってくる

ツタに捕まったロキはそれをよける術がない



ギリギリで一つ目の大剣はかわせた、しかし二つ目は…



「ガァッ!!!」


爪を無理やり飛んでくる大剣に押し当て、いなす


大剣はほんの僅かにそれて、ロキの頬を引きずって耳を吹き飛ばした


ボトボトと血が流れる頬と耳を押さえてディアナを睨むロキ


「遠距離攻撃なら得意なのよ」


大剣を受け止め、再び振りかぶるディアナ

ロキの額に一筋の汗が流れる

ディアナが大剣を投げた瞬間

ロキの体が変形していく

グググ、と鼻が伸び、全身がどんどん毛深くなっていく


完全に狼に変身したロキはするりとツタから抜け出し、軽々と大剣をかわして一瞬でディアナに飛びかかる

慌てて腕でガードするが、腕の鎧を噛みちぎって、腕に噛み付く


「うぐっ…」


無理やり腕を振り回し、噛み付いたロキを引きはがす


銀の鎧は吹き出した血で所々赤く染まっている

ロキは幻覚にかかり、見えない何かに向かって爪を振り回したり噛み付いたりしている


「くそ…」


ディアナは血が流れる腕を睨んで悪態をつく


そんなディアナの状態もつゆ知らず

投げた大剣が戻ってくる


「はぁっ!!」


飛んできた一つ目の大剣の側面を殴って地面に叩きつける

そしてもう一つを無理やり掴み取る


もう大剣を二つ使うのは無理だ

しかし、ロキは幻覚にかかっている

後は頭を狙って投げるだけ


無事である方の右腕に大剣を握り締め、大きく振り上げる



「ッ…」


振り上げた途端胸に激痛が走り、喉の奥から熱いものがこみ上げる


「ガハッ…」


こみ上げてきたものを吐き出し、むせる


目の前には真っ赤な光景が広がっている


「まさか……毒…?」


苦しそうに顔を歪めながら再び血を吐く

たった一度噛まれただけで吐血する意味がわからない

ありえる可能性としては毒のみ


ぐしゃりと地面に膝をつき、ゴホゴホとむせる


血は流れるように吐き出され

その度にディアナは衰弱していく


ディアナ自身、回復魔法の知識はある

あるのはあるが、現状全く意味をなしていない

その証拠に回復している兆しはなく、ただただ弱っている



「終わりのようだね」


徐々に重たくなってきた瞼を押し上げ、首を上げると、目の前には元の姿に戻ったロキの姿があった

いや、腕は獣のように鋭い爪をギラつかせている


「ローマ神話の神ごときが僕相手によくここまでやれたと思うよ。いや、それ以前に僕をここまで追い詰めたのはトールとオーディン以外にいなかったと思うよ」



「でも残念。もう少しだったのにね」


ロキはニッコリと笑って腕を振り抜く

これ以上の無駄を過ごす気は無いと

何の慈悲もなく狼の腕を振り下ろす


しかしディアナはそんなものどうとも思わなかった




わかっているからだ

何もかも全て

これは経験から来ている


どんな絶望的な状況でも、

どんなに苦しい戦いでも、


あいつはいつも助けに来て、私を救ってくれた

今は私の最大のピンチだ


あいつはきっと来てくれる

自分がどんな状態だろうと来てくれる

そう、前回の聖戦のように…

今回の聖戦のように…




「おい」


振り下ろすロキの腕を誰かが掴んだ

慌ててロキはその手を振り解き、後ろへ飛び退く




ディアナは、ロキの手を掴んだのが誰か知っている

全部、全て知っている


黄金に光る髪の毛に、黄金の瞳


体に雷を纏う彼は…



「毎度毎度…遅すぎるのよ」


「わりぃ、また遅れた」



ディアナにそう言って笑いかけ、【雷神】は宿敵に向かい合う












狼に変身して一度全裸になってるのに、姿が戻ったとき服を来ているのは仕様です

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