第55話 それじゃぁ困る
「不知火 飛鳥を見つけた」
悪魔派閥のリーダー
ルシファーはどす黒く笑う
「不知火…、あれはまた聖戦に絡んでるのですか?」
ミカエルが呆れたような表情を見せる
「前回、彼にはしてやられました。私としても借りがありますしね」
ミカエルが呟く
「待て、あれは俺の獲物だぜ?とるんじゃねェよ」
ルシファーの周りに光の玉が浮かぶ
「俺新しく魔法作ったんだよね」
ケラケラ笑いながら玉を操る
「それも自信作さ」
玉が一つに合わさる
「消えな!」
全ての玉が集まり大きくなった光の玉からレーザーが放たれる
「これがそうですか?しょうもないですね」
軽々とかわすミカエルとラファエル
「まず1人」
ドスッ、
ラファエルの胸をルシファーの腕が貫く
闇を纏ったその腕は、ラファエルの魔力を根こそぎ吸い取る
「カッ…、ガハッ……」
腕が引き抜かれ、回復する魔力も失ったラファエルは地面に倒れる
「やっぱ使えるな、この魔法」
そう言って腕に付いた血を舐める
「何をしましたか?」
穏やかに言葉では言うが行動は違った
ミカエルは腕に刻まれた紋章にレイピアを突き立てる
「限定解除」
辺りを覆い尽くす光と共に
真っ白な翼を生やしたミカエルが姿を現す
「限定解除したってお前は弱いんだよォ!!」
両手に闇を纏いミカエルに突っ込む
「死ね、単細胞が…」
目にも止まらぬスピードでルシファーの首をかっさばく
「ざーんねん、ハズレ☆」
首の無くなったルシファーの後ろからニタリと笑ったルシファーが顔を出す
そのまま闇の手を伸ばし、
触れる直前でレイピアで腕ごとたたっ斬られる
そのまま距離を置くミカエル
「それが新作ですか」
「あぁ、そうだ。《何かの裏に転移する魔法》ってやつだ」
腕が徐々に戻っていく
「お前の背中、俺から見たら裏側にあるよな」
ニヤッと笑うルシファー
次の瞬間には目の前のルシファーは消えていた
「あは」
新作でミカエルの背中に回り込み、闇を纏わせた拳を放つ
しかし、
ズ……
拳が届く前に地面が裂け、溶岩が吹き出す
「焼け死になさい」
次々と周りに火柱が上がり、溶岩の中のルシファーに襲いかかる
「あなたのような外道には血の制裁を。ラファエル達の敵は取らせてもらいます」
溶岩が急激に冷え、岩石の柱に変化する
そのままビシビシと圧縮されるように柱が悲鳴を上げる
ミカエルは周りに何体もの溶岩のゴーレムを作り上げる
岩石の柱は圧縮を繰り返し、細い枝のようになっている
レイピアで合図し、ゴーレムが柱を襲う
津波のように溶岩が押し寄せ、全てを溶かしつくす
「全然ぬるいぞ」
溶岩の中から闇を纏ったルシファーが現れる
「全然序の口ですよ、こんなの」
ミカエルがレイピアを構える
「不知火に借りを返しに行くという新たな目的もできましたし。宣言通り聖戦を終わらせるつもりですので、終わらせましょう」
「あ?何を言って」
「周りが見えてないのはあなたの弱点ですね」
カツンとレイピアを地面に突き刺す
「っ!!!?魔法陣!?」
地面には綺麗な六芒星が描かれていた
「お願いします、【天照大神】よ」
「オーケー!やっちゃうよ!」
アキが両手に書かれた魔法陣を地面の魔法陣に当てる
激しい地鳴りと共に、魔法陣が白く光り出す
「封印魔法か!!?」
ルシファーの体から闇が引き剥がされていく
「今回は天使派閥の勝利ですよ」
膝をついて座り込むルシファーにレイピアを向ける
「お前ら、同盟組んでたのかよ」
「えぇ、人間派閥とも組んでますよ。今回の聖戦、負け戦でしたね。お勤めご苦労」
ミカエルがレイピアを構える
「ちょっと待ってよ、これじゃぁ俺の目的が達成出来ない」
魔法陣の光が消え、黒いファーコートの人間が歩いてくる
「……不知火、あなたが何のようですか」
ミカエルの表情が曇る
「ここで終わっちゃったら困るんだよ。次の聖戦まで待てないし、まだ決着はいいから俺とまた遊ぼうぜ」
ヘラヘラと笑いながら近付いてくる不知火
「そうですね、あなたには借りがありますし。この死にぞこないはいつでも殺れますし」
「誰が死にぞこないだと?」
ルシファーが再び闇を纏い、立ち上がる
「まだそんな力が残ってたのですか」
「ラファエルの魔力が残ってンだよ。俺に止めを刺せる唯一のチャンスを逃すとはなァ!!だが今はこっちが先だ」
完全復活のルシファーが不知火を睨む
「クハハ、2人ともそんなに睨まないでくれよ。それに天照大神も、一緒に遊ぼうぜ」
「言われなくてもやりますよ!よくもウチの派閥にちょっかいかけまくってくれましたね!」
アキがミカエルの横に立つ
「ところでミカエル、お前んとこの【ラミエル】はどこにいる?」
不知火のその問いにミカエルが目を見開く
「………あなたの目的がやっとわかりました」
ミカエルの声のトーンが変わる
「ですが、ラミエルの能力については私しか知らないはずですが?」
「さぁ?なんでだろうな」
ヘラッと笑って茶化す不知火
「“アカシックレコード”。そしてそれを守護する《ウロボロス》。あなたの狙いはこの2つですね?」
「……さぁてね」
「誤魔化しても無駄ですよ。あなたにラミエルは渡しません。それ以前にここで死んでもらいます。あなたの目的は我が命に代えても阻止します」
ミカエルがレイピアを構える
「《ウロボロス》。またおもしれェ単語が出てきたもんだなァ!おい!ベルゼブブ!ベルフェゴール!お前らも来い!!」
ルシファーが怒声を放ち
2人がすぐ駆けつける
それにつられて、ガブリエルとウリエルも戻ってくる
「阿修羅!持月!出てきて!あいつに借りを返すわよ!」
不知火は高らかに笑う
「クハハハハ!3派閥連盟か!面白い!だが…」
「全て無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄、無駄なんだよ」
ここの不知火は
人間派閥戦を終えています
シヴァの能力を使って、
『傷』を壊し、回復しています