第49話 天使vs悪魔
始まりました
お得意の一話一話交互に進んでいくパターン
とある古城
「意味わかんねぇこと言ってんじゃねーよ」
城の中で一番大きな部屋、その最奥の玉座に悠然と座す青年が1人
「ごまかすのはやめてください」
青年と対峙するのは白銀の髪をなびかせ、綺麗な顔立ちをした若い男
その頭には薄く輝く輪が浮いている
「わざわざ部下連れて敵地に乗り込んでくるとはいい度胸だなァ!ミカエル!!」
玉座から立ち上がり、眉間にしわを寄せ怒鳴る青年
どす黒い魔力を身にまとい、オールバックの漆黒の髪に、赤黒く濁った目で若い男を睨む
彼は悪魔派閥のリーダーであり、傲慢を司る悪魔【ルシファー】
「それはこちらのセリフです。私の部下を誘拐しといてよくそんな飄々としていられますね」
静かな殺意を放ち、覚めたような目でルシファーを見る
彼は天使派閥のリーダー【ミカエル】
「だから知らねェっつってんだろ!!!」
ルシファーの手から闇が放たれる
放たれた闇はまっすぐミカエルに向かって伸び
紅蓮の炎によってかき消された
「大丈夫ですか?ミカエル様」
手に炎を纏い、ミカエルを守るように前に出る白髪で坊主の30代の男
「【ウリエル】、私は大丈夫です。下がってよいですよ」
言われるがまま後ろに下がるウリエル
「ンだよそれ、ムカつくなぁ。おい!お前らも見てねェでさっさ降りてこい!」
天井に向かって喚き散らすルシファー
その叫びに答えるように2人の悪魔が降りてくる
怠惰を司る悪魔【ベルフェゴール】
暴食を司る悪魔【ベルゼブブ】
「そもそもなァ、俺もお前らに聞きてェことがあるんだよ。お前ら、人間派閥と手を組んでるらしいな。お前らあいつらに何を仕込んだ?」
これでもかというくらい眉間にしわを寄せてミカエルを睨みつける
「何のことですか?」
「とぼけんじゃねェよ!人間派閥に悪魔が3人もやられてんだ!人間ごときにやられるはずがねェんだよ!!」
「それは単にあなた達が弱いだけなんじゃないんですか?」
ふんと鼻を鳴らして小馬鹿にする
「……今まで一勝一敗、そろそろだろう?」
ルシファーが嬉しそうに笑う
黒く荒んだ笑みを浮かべる
「天使と悪魔。決着をつけようや」
瞬間、ベルフェゴールが動く
ミカエルに触れ、能力を発動させるために瞬足で詰め寄る
ベルフェゴールの弱点操作
触れた相手の弱点を自由自在に書き換える事が出来る能力
弱点を「光」に書き換えてしまえば、光に当たるだけで死んでしまう。それが弱点になったから
怠惰を司っているとは思えない軽快な動きでミカエルとの間合いを詰める
しかし、気がついた時には元いた位置に戻っている
「あれ、」
おかしいと思ってもう一度距離を詰めようとしても元に戻される
「この現象なんか見たことあるなぁ」
やる気がなくなったのか、座り込んで頭をかくベルフェゴール
「《神の人》。私の能力はご存知よね?」
ベルフェゴールの前に歩み寄る長身の女性
彼女は【ガブリエル】
白髪のロングヘアーで170をゆうに超える長身
すらっとした手足は長く美しい
「あんたの相手は私がしてあげる」
つんざく轟音と閃光のあと、壁ごとベルフェゴールが爆発する
「今のはウガリット神話【バアル】の裁きの雷」
いくつもの壁を突き破り吹き飛ぶベルフェゴール
「あいててて…」
頭を抑えながら呻く
反撃しようと顔をあげると目の前にはガブリエルが立ちはだかっていた
「今のはご存知、ギリシャ神話【カオス】の隙間操作」
目の前に立っているガブリエルに腕を伸ばす
ベルフェゴールからすれば触れれば勝ちが決定するのだ
しかし、
「それで次が…」
ベルフェゴールの体が地面に張り付き、ミシミシと軋み出す
「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
さっきまで食らっていた攻撃とは明らかに違う叫び声を上げるベルフェゴール
「ギリシャ神話【ガイア】の重力操作ね」
ガブリエルの能力は《神の人》
一度見た神の能力をコピーすることが出来る能力
一応言っておくが、彼女は天使派閥全ての能力をコピーしている
彼女と戦う=天使派閥の全ての神と戦うと思っていいだろう
「へぇ、この距離はあんたの弱点なのね」
ベルフェゴールの今の弱点は、「近距離攻撃以外では死ぬことが出来ない」というもの
普段頑丈なベルフェゴールでも、弱点をつかれればダメージを受ける
「このまま押し潰しちゃおうかしら☆」
目の前でひれ伏すベルフェゴールを踏みつぶし、重力をさらに強化する
しかし、パタリとベルフェゴールの悲鳴が止まり、何もなかったように立ち上がる
「ハァ…ハァ…、《弱点操作》……!」
立ち上がったことに唖然とする彼女に手を伸ばす
しかし、触れるギリギリのところで目の前から忽然と彼女の姿が消えさった
ベルフェゴールがやったことは単純、自分の弱点を書き換えただけのこと
「形のない攻撃では死ぬことが出来ない」というものに書き換えた
なぜ死ぬことが出来ない。が弱点になるのか
これも単純、ベルフェゴールが死にたがりだからだ
死にたいから、死ぬことが出来ないのは弱点のようなものだからだ
死にたがりが今、死にかけたのに弱点を書き換えたのは、プライドが許さなかったからだろう
彼からすればそんな矛盾もそんな感じで片付けられる
自分の弱点を書き換え続ければ無敵じゃないかと思うが、そうコロコロと書き換えることは魔力量から考えても大変である
いわばこれは奥の手である
ベルフェゴールはケタケタと笑って辺りを見渡す
「あいつなら僕のこと殺してくれそうだけど、死ぬなら相打ちだよねぇえエエ」
目を見開いて無気味に笑う
ガブリエルを探して歩き出す
それじゃ、修学旅行ってきます