第26話 戦争
「アキちゃん!?どうしてここに?」
ドアを突き破って入ってきたのはトオルのお隣さんである、大神 天昭であった
服装は相変わらずの裸Yシャツ
だが、表情がいつもと全く違う
怒りと悲しみが混ざったような、そんな顔をしていた
「あ、アキちゃん?どうしたの?」
そんな表情を浮かべるアキに対して焦りを隠せないトオル
なぜここにいるのか?
なぜそんな顔をしているのか?
「あ、あの…こちらの方は知り合いか何かで?」
アフロディテがはてなマークわを頭に浮かべてトオルに尋ねる
「あぁ、そういえばアフロディテは知らなかったっけ?この子が第四勢力のリーダーの大神 天昭だよ」
トオルに変わって、ディアナが答える
「そうなんですか…。え?じゃぁこの状況不味いんじゃ」
アフロディテがオロオロし始める
カオス戦も端に隠れてオロオロしていた
「なんなんですか…」
話を遮るようにアキが呟く
その目には涙が浮かぶ
「わ、私はトオルさんっていい人だなーって思ってたけど…なのに…トオルさんは…」
目から涙が溢れだしそうになる
それを拭って、トオルを睨んで叫んだ
「なんで悪魔なんかと手を組んだんですかっ!!!!!」
………え?
「なんでまた悪魔なんかと!トオルさんは、私達に協力してくれるって言いましたよね!私はそれを聞いて嬉しかったのに…なんで…」
アキの顔が再びクシャリと歪んで、目には涙が溜まる
………え?
ちょっと待って、意味がわらからない
「ちょ、ちょ!ちょっと待ってくれよアキちゃん!俺達は悪魔となんて…」
「この後に及んで言い訳ですか!!」
アキがヒステリックに叫ぶ
もう涙は溢れ、流れ、赤くなった頬を濡らしていた
その表情は儚く、何かを諦めたような
「こうなっては仕方ありません。結局はこうするしかなかったんですね」
そういって、優しく微笑み、右手をあげる
それを合図にしたかのように、ホールの天井が爆発し炎が上がる
そしてそこから
「あいつは!」
トオルが目を丸くする
天井からは第四勢力のメンバー、計三人が降りてきた
その内の一人が、あのふざけたお面の…
「また会ったな」
ホルスだった
「前に言った通り、潰しに来た。覚悟しろアヌビス!!」
ホルスがアヌビスに向かって走る
アヌビスもそれに呼応するかのようにアンクを取り出し、走り出す
しかしそれを止めるかのようにして、アヌビスを突き飛ばす高橋
「お前じゃ無理なんだろ?」
アヌビスにそう呟いて、カオス戦と同様に虚栄の魔槍を召喚する
虚栄の魔槍を握り締め、走ってくるホルスに向ける
「座標融解!!」
が、しかし…
これまたカオス戦同様、何も起きない
プツンッ
何かが切れたような音がした
それと同時に高橋が右腕に巻き付けていた紫の包帯を引きちぎる
巻かれていた腕には、仰々しい紫の紋章が描かれていた
そしてその紋章が鈍く光り出す
「まっずいぃ!!!!」
それを見るやいなや、八橋が変な声を上げて、高橋に向かって走る
「お前の相手は俺だ」
その行方を遮るように第四勢力のメンバーの一人が立ちはだかる
「皆!分かれたね!」
突如アキが叫ぶ
そう言うと同時に
全員に白い魔法陣が描かれる
バラバラに分断するつもりのようだ
「全員逃げ…」
トオルの叫びも虚しく、ホール内が真っ白な光で埋め尽くされた
□■□■□■□
背中への衝撃で目が覚めたトオル
どうやら気絶していたようだ
いや、それよりも
「お前は蹴る以外の考えがないのか?」
背中への衝撃はディアナの蹴りだった
「いいからは早く起きなさい!ヤバイわよこの状況」
ディアナに言われて起き上がり周りを見渡すと、どこかの廃工場のようだった
そして奥には、アキが立っていた
やはりちゃんと伝えなくちゃな
この子とは仲良くしたいから
この状況でこの考えは甘いのかもしれないけど
俺はアキちゃんは傷付けない
可愛いから
「始めましょうか」
アキが悲しく呟く
□■□■□■□
俺こと八橋はどっかの学校の体育館らしいところに飛ばされていた
アフロディテと一緒に。だ
で、目の前にいるのが敵
なんか中国チックな服装をしたコイツ
歳はあまり変わらないように見える
ホールで俺を止めたやつだ
「宣言通り、お前の相手は俺だ」
啖呵を切ったのは相手だった
「俺と当たるなんてお前も運がないな」
やれやれと行った感じで喋る八橋
俺が得意なのは口喧嘩だぜ?
相手を挑発して隙を突く
「挑発か。まぁ、いい。お前はここで死ぬんだからな」
そういって構えるチャイナ野郎
(そーいうのを死亡フラグっていうんだぜ)
「アフロディテ!下がってな!」
「言われずとも!」
アフロディテは既に端の方に避難していた
悲しいが、自分が無力だということは分かっているようだ
「始めるぞ」
八橋が拳を握る
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「いよっす!俺の名前は富永 高大」
富永と名乗るそいつはチャラチャラした感じで話す
「お前じゃ役不足だ。消えろ」
高橋は吐き捨てる
俺は今、虫の居所が悪い
「殺されたくなければさっさと消えてホルスを差し出せ」
そう、二度も座標融解が効かなかったからだ
もうなぜ効かなかったのかとか、そんなことはどうでもいい
ただ、イライラする
「お前が俺を殺す?ご冗談を。
お前の能力は俺にも効かないぜ?分かってるよ、お前のイライラの理由。二度も能力が効かなかったからだろ?」
「俺で三度目だぜ?」
は不敵に笑う
「戯言を...」
高橋の腕の紋章が輝き始める
□■□■□■□
まともに戦えば俺は死ぬ
俺はホルスには勝てない
そんなことは嫌な程分かっている
俺はイシスを生き返らせるまで死ねない
だからこの場も生き延びる
負けてももう悔しくない
イシスを失った悔しさに勝るものなどない
「アヌビス。お前は過去に取り憑かれている。いい加減現実と向き合え」
「それはイシスを侮辱してんのか?そんなやつ忘れろと?」
アヌビスはホルスを睨む
こいついちいちムカつく言い方するな
力があっても、こいつは無能だ
力があっても、イシスを救えなかったホルス
殺してやりたい
「そういうことを言ってるんじゃない。割り切れと言ってるんだ!」
ホルスもイラつきからか声を荒らげている
うるさい...
うるさいんだよお前
邪魔だ
邪魔なんだよオマエ
「俺の邪魔をするんじゃねぇよ」
第四勢力との戦争が始まる
○○sideに、別れたバトルになりますね