第25話 隙間操作
もうすぐ試験
「俺の座標融解が効かない…?」
さっきから何発も放ってる筈なのだが
一発も当たらない
当たらないどころかどんどん精度が落ちている
人間派閥のメンバーはカオスから距離を置き、様子を見ている
座標融解で周りの床などが抉られる中で、カオスは涼しい顔でんーと唸る
「これじゃ時間がかかりそうだな。一人ずつやるか」
どれにしようかな〜と選ぶカオス
「よし、お前な。」
そう言ってトオルを指さす
「え!俺かよ!!」
叫ぶ瞬間、目の前にカオスがいた
(速ッ…!!?)
慌てて雷を纏わせた右腕を振るう
しかし難なくかわされる
(もういっちょ!!)
右腕を引き戻し、左腕を振りかぶろうとする
が、
それが出来ない
スローモーションのように動き、
振り抜いた右腕が戻らない
違う、戻せない
「言ったであろう。私は隙を操ると。攻撃したあとに隙ができないやつなんて存在しない。私は攻撃の後の隙を伸ばしているだけだ。要は攻撃を当てないと死ぬということなんだが、心配するでないぞ?殺しはしない」
ドスッ
そう言いつつトオルの鳩尾に右アッパーを決める
真上に吹き飛ぶトオル
「ガッ……あ…」
ドスッ
再び鳩尾を殴られた
(!!!!??)
トオルは間違いなく、ホールの天井まで吹き飛んだ
しかし、吹き飛ばされたはずのトオルはカオスの目の前に浮いていた
そしてそのまま殴られた
もう一度天井まで吹き飛ぶトオル
しかしまた…
気づいた頃にはカオスの目の前にいた
今度は鳩尾ではなく、顔面を殴られ、壁まで吹き飛ぶトオル
「貴殿らは人の話、いや、神の話を聞いてないのか?言ったであろう?《隙》と《間》を操ると。単純な話、私とトールの間を操り、縮めただけだ。要はどれだけ距離を開けようが一瞬でその距離を埋めることだって出来るということである」
「つーことはあれか。俺の座標融解もお前と溶かす所の間を広げられて見当違いな所にいくわけか」
高橋は悔しそうに歯噛みする
「うむ。ちゃんとわかるやつがおるではないか。だが、能力がわかったところでどうしようもないがな。私の能力はそういうものなのでな。」
高橋の目の前にカオスが移動する
カオスが高橋との間を埋めたのだ
「忠告しておこう。私の能力は一撃喰らうと負けと思え」
カオスの右の拳が顔めがけて飛んでくる
虚栄の魔槍で拳をガードする
反撃しようとした瞬間
顔に衝撃が走る
カオスの右拳が高橋の顔にめり込む
めり込んだと思った次の瞬間には、もう一発右拳が高橋の顔に振り抜かれる
それが何度も何度も繰り返される
「隙の操作はもちろん自分にも適用出来る。自分が殴ったあとの隙をなくすことだってできる。それに対して相手の殴られた後の隙を引き延ばすことも出来るということである。意味がわかるな?要は一撃喰らうと永遠に殴り続けられるということだ」
喋りながらも殴り続ける
高橋は辛うじて虚栄の魔槍でガード出来ていた
これは高橋の戦闘センスの賜物だろう
「ほぉ、驚いたな。この攻撃をガードするとは。だが、守るだけでは何も変わらないぞ」
カオスの左手が動く
隙の無い右手だけでも精一杯なのに、左手まで使われたらいよいよガードできない
「くっ…」
後ろに飛び退いたとしても、間を埋められて意味がない
(ここは!)
「トール!八橋!やれ!!」
高橋が叫ぶ、と同時に
「言われなくてもやってるよ!」
トオルと八橋は左右に分かれ
、高橋がガードしている間、雷を溜めていたのだ
「そろそろMAXだ!いくぜええ!!!」
溜めに溜めた雷を、カオスめがけて放つ二人
「うむ。中々にいい攻撃じゃないか?」
雷はカオスに当たる寸前で両手で止められていた
手の平には雷は当たっていない
「原理はわかるかな?まぁ、三日三晩考えれば答えは出るであろうが。答えは、私に向かってくる雷との間を空け続けている。でした」
「だがお前の負けだ」
カオスの喉元に槍を構える高橋
「お前はここで死ぬ」
虚栄の魔槍が紅に染まる
「いくぜ。《神殺し》!」
カオスの喉に紅に染まった虚栄の魔槍を突き刺す
刺された所から赤い紋章がカオスの顔に広がる
カオスはガクガクと痙攣しだし
止めていた雷が動き出して、カオスに命中する
激しい閃光に包まれ、カオスの身体は焼け焦げ、炭になる
「いやー。いいコンビネーションだった!貴殿ら、中々に強いではないか。いやはや、恐れ入ったのだよ」
黒焦げになったカオスは別に何もなかったかのように喋っている
「むむむ?どうした?鳩が豆鉄砲を食らったような顔をして。いやいや、わかっておるぞ、なぜ生きているのか。であろう?」
「私はこの程度では死なぬ。そもそも、この程度ではダメージにもならぬのであるよ。惜しかったであるな」
「いや、惜しくもないのか。全然だ。貴殿らはまだまだまだまだまだまだ、全然であるぞ。だが、しかしだ。これからに期待はできるな。ふむ、強さはまぁまぁまぁまぁであるがまだまだであるな。これでは簡単に死んでしまうぞ?」
「んんん?そういえば貴殿らはアスモデウスに傷を負わせたのだったかね?いやはや、あの程度で勝ち誇ってはならぬ。あれはいわゆる雑魚というやつだな。でもあいつは後が面倒臭いのでな。下手に殺せんのである」
「おっと、話が逸れた。失敬。本題というか、この戦いの目的というか、同盟だが」
「有り。であるだろうな」
黒焦げでどんな表情をしているかわからないが、多分笑ってるんじゃないか
これはとてもラッキーなんじゃないか?
俺らは弱いし、天使派閥と同盟なんてありがたすぎる
が、
「誰がお前らなんかと組むかよ」
人間派閥のリーダーさんがひねくれた
全然通用しなかったのがよっぽど腹立つようだ
「ちょ!おま!」
トオルが慌てふためく
せっかくのチャンスを無駄にする気か!?
「…頼むリーダー。同盟組んでくれ」
アヌビスがそう言った
その目は真剣そのものだった
「天使派閥にはラファエルってやつがいる。そいつに会うには同盟しかない。頼む、同盟を組んでくれ」
「いいだろう」
呆気なくOKする高橋
「いいのかよ!」
ツッコミを入れるトオル
「ハッハッハァ。中々に面白いな貴殿らは。私としても気に入ったよ。ラファエル殿に会いたいと?あいや、承った。ラファエル殿には言っておこうか。だが貴殿らは勘違いしておるぞ?まだ同盟が決まったわけではない」
「貴殿らにはしんどいと思う。貴殿らには苦しいと思う。貴殿らには厳しいと思う。が、」
「"次が"最終ステップである」
「貴殿らには一度死にかけてもらう」
「そして、アヌビス神よ。ケリをつけろ」
それだけ言って、言いたいことを全て言って、やりたいことをやるだけやって、
カオスは消えた
やつが消えたと同時に、ホールのドアが突き破られる
そこには見覚えのある裸Yシャツの少女が立っていた
〝最終ステップSTART〟
お願いです
乾燥を…
乾燥を下さい!
乾燥が励みになるんです!
あ、
もうすぐ乾燥した季節になりますね
化膿しづらくなって嬉しい季節です
梨もおいしい季節ですし(・∀・)
私、梨大好物