第10話 アスモデウスと限定解除 ◆
目が覚めると自分の部屋のベットに寝ていて
アフロディテが覗き込んでいた
「うわ!?」
慌てて起き上がる
「ごめんなさい!起こしちゃった?」
申し訳ない感じで謝ってくる
「いや、いいんだけど。みんないるんだな...」
テーブルを囲んでみんな神妙な顔つきをしている
「あれ、ディアナは怪我大丈夫なのか?」
ディアナは普通に無傷で胡座をかいて座っている
相変わらず女の子らしさは欠片も無い
「気安く話しかけるな!それよりアンタ、倒れたんですってね。シャルヴィがいなかったらどうなってたことやら。敵討ちなーんて言っちゃって、バカみたいね(笑)」
馬鹿にした表情とやれやれといった感じで話しかける
しかし、下を向いて
「...真面目に頼った私がバカみたいじゃない」
「あ?何だって?」
「うるさいわね!バカ!」
「なんでキレるんだよ...」
「夫婦喧嘩はいいから、話を始めるぞ」
机の椅子に座っている高橋が地雷を踏む
「「誰が夫婦だ!!!」」
タイミング完璧で二人見事にハモる
「そういうところとか、ねぇ」
アフロディテがニッコニコしながら呟く
すごい満面の笑みだ
「さて、今回の戦闘についてだが」
高橋が切り出す
「重要な点は二つ。"アスモデウス"と"限定解除"についてだ」
「何なの?それ」
シヴァが目をキラキラさせながら聞いている
「アスモデウスに関しては謎。悪魔だという事しかわからない」
次にシャルヴィが説明を始める
「限定解除については私が説明しましょう。細かい所はまだよくわかりませんが、恐らく神の力の覚醒といった類いのものでしょう。限定解除した途端オシリスの魔力が跳ね上がっていましたから」
「ちょっといいか?」
トオルが手を挙げ高橋に問いかける
「そこで寝ているやつは起こさなくていいのか?」
テーブルに伏して爆睡しているアヌビスを指差す
「こいつは後で言っておくから放っといていい」
完全に見捨てられているようだ
後で話すこともないんじゃないかと心配になる
(俺が言っといてやろう)
「さて、戦果というか今回の戦闘で悪魔派閥の立場が少し悪くなっている。」
「それはそうと聖戦はいつ始まるのかしらね」
それは全員思っていることだろう
〈聖戦はあと13秒後ですよ〉
不意に声が聞こえてテーブルの上に白くて丸い野球ボールくらいの大きさの玉が現れた
その玉から続いて声が聞こえる
〈人間派閥の皆様こんばんわ。ワタシは【カミ】といいましてこの聖戦の管理をさせてもらいます。あ、聖戦始まりました。今回の聖戦はミカエル率いる天使派閥、ルシファー率いる悪魔派閥、高橋 裕也率いる人間派閥の三つの派閥による戦争です。それじゃぁ皆様、自分が死なないようにブチ殺しあって下さい〉
そうして白い玉は消えた
「最後、何を言ってたんだ?」
トオルが一番に口を開く
どうしようもない事実に向き合わないように
それを認識してしまってはいけないと紛らわせるように
まだ今ならきっとひきかえせると心の奥で願うように
「聖戦始まったみたいね。なんか軽いわ」
ディアナは平然とした感じでため息をつく
「それじゃ、アスモデウスの対策でも立てますか?」
アフロディテが提案する
(なんで皆こんなに普通なんだ)
『面白そうな話してんじゃん』
今、最も聞きたくない声がさざみね荘の201号室に響く
【アスモデウス】
窓の外から中を見渡しニッコリ笑う
「昼のお礼をしにきたよ」
ニッコリ笑顔に殺意がこもる
その瞬間
201号室が爆発する
爆風で吹き飛ばされる七人
しかし
爆風の中から銀の槍をかまえた高橋がアスモデウスめがけて突っ込む
「君は厄介だから退席してもらうよ」
アスモデウスが手を上げると
高橋を囲うようにして赤色の魔方陣が展開される
「こんなもので俺を抑えられるとでも」
「それはアルクスガウスの魔道書の四十二章、エウローラの転移魔法だよ。君にはウルラモスの次元の狭間に閉じ込めさせてもらうよ」
「な!?アルクスガウスだと!」
赤い光と共に高橋と魔法陣は姿を消した
「君の能力はかなり強力だけどカラクリが分かれば扱いやすいんだよ【業炎哨戒】高橋裕也君」
高橋 裕也
彼自体には特殊な能力はない
しかし特殊な病気を持っている
それは誰もが中学二年で発病するであろう病気
そう、《中二病》である
彼は中一ではやくもその病気を発病し、現在(中三)もその病に侵されている
そして彼のその病気は彼の武器との相性が最高だった
虚栄の魔槍
それが彼の武器
その力は
"思い込みを現実にする力"
一見普通に強そうな能力だが
一般の人間には使えない
中途半端な思い込みでは
たかがしれているのである
そして
この能力に上手くマッチングするのが中二病である
強すぎる自分設定
どれだけ他人に忌み嫌われようとも構わず続けるその思い込み
それが虚栄の魔槍には抜群の相性をもつのである
「だから、高橋君には適当にカタカナを並べたセリフを言っておけば勝手に思い込むんだよね。だから極端な話、砂を投げてそれらしい事を言えばそれだけで殺すことだって出来る」
「ってどこかで説明を求められていると予想してなんとなくの説明をしてみた。って君は言うんだったよね」
長々と話してアスモデウスは半壊しているさざみね荘の201号室を眺める
爆煙が風に流されそこには一人の少年が立っていた
「そうだよね?"トオル"君。君はこの数日でがらりと変わったよ」
アスモデウスはトオルにニッコリ笑いかける
「...なんで殺し合いなんかしなくちゃなんねーんだよ」
トオルの髪が黄色に、そして白に変わる
「なんで俺なんだよ」
足元に黄色の魔法陣が展開される
「なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで」
「俺が変わったのはお前らのせいだろーが。はっきりとした理由もなく巻き込みやがって」
「俺の平和を返せよ」
アスモデウスを睨みつけ
トオルはミョルニルを握りしめた
今回も挿絵を入れましたが
時間が無かったのでかなり適当になってしまいました
服の襟とか肌色残っちゃってますしw
時間があれば書き直しますけども
これからちょっと長めのバトルに入ります