第9話 vsオシリス その②
シャルヴィはタバコを咥えてオシリスに向かって走り出す
オシリスは歩みを止めて
シャルヴィに向かって翼を伸ばす
羽を全てかわして
オシリスに詰め寄り
シャルヴィはポケットからナイフを取り出す
そしてそれをオシリスの左肩につきさす
しかし、肩を貫く事は出来ずナイフの方が砕ける
そして
バランスを崩したところに翼が叩き込まれる
全身に翼の攻撃を受けたシャルヴィだが
何事もなかったように立ち上がる
「やはり使わないとキツイですね」
そう呟いて咥えていたタバコを"噛み砕いた"
これはタバコではない
タバコの様に加工されたヤギの骨である
噛み砕いたシャルヴィの体に異変が起きる
整えられた黒髪が光り輝く白髪に変わり
その間から
渦を巻いた黄色の角が生える
その角にはビリビリと白い電気が弾けている
「この姿になるのはちょっと気が引けるけど仕方ない」
瞬きをした瞬間シャルヴィはオシリスの目の前に立っていた
翼の攻撃をくらい吹き飛ばされた15m程の距離を一瞬の間に埋めた
オシリスはその速度に反応出来ず、遅れて距離をとろうとする
「二連撃」
そう呟いて
オシリスの鳩尾を殴りつる
大きく後ろに仰け反りながらもその場で耐えるオシリス
反撃しようと翼を操ろうとするが
腹に再び衝撃が走る
シャルヴィは動いていない
不意の衝撃で通常よりも大きなダメージを受け、大きく後ろに吹き飛ぶ
シャルヴィ、彼の能力は
一度の攻撃で数回分の攻撃を繰り出せるという能力
追加連撃
だがこれが彼の能力の真髄ではない
吹き飛ばされたオシリスの目の色が変わる
それと同時に棒状だった翼が刃物の様に尖り、平たくなる
グラリと起き上がり
形が変わった翼を伸ばす
先程よりも格段にスピードが上がっている
反応が間に合わず右手を
肩ごと切り取られる
噴水の如く湧き上がる血液
間髪入れずに
左も肘から下も切り裂かれる
両腕が宙を舞い、グラウンドに赤いラインを引く
シャルヴィは涼しい顔をしていた
腕がなくなった事など気に掛けてすらないようだ
シャルヴィの姿が消える
オシリスの後ろに移動する
「三連撃」
オシリスの後頭部を"あるはずのない右腕"でぶち抜く
そう、彼のもう一つの能力は
雷羊の祝福
タングリスニの骨を食べる事によりタングリスニの特性である超回復を自分で使う事が出来る
超回復。それがシャルヴィの能力の真髄
我が主人を身を呈して守り続けるための力
何度傷つこうとも立ち上がり壁となる力
とまぁ、こんな建前があるが実際は仕える主人が強いため守る必要も無いのだ
この力のおかげで腕は元通りになっている
オシリスは不意打ちの三連撃を頭にくらい地面に突っ伏す
しかしすぐさまゆっくりと立ち上がり
シャルヴィを睨みつける
「お前、神じゃないな?」
「そうですが何か?」
「なら大丈夫か」
目の下のタトゥーに触れて呟いた
「"限定解除"」
オシリスの足元に直径10m程の魔法陣が現れる
シャルヴィはすぐさま魔法陣の外に移動する
オシリスの背中の包帯包帯の翼がシュルシュルとほどけていき、何百枚もの布切れになっていく
さらにその布一枚一枚が細い糸になっていく
全身に黒いオーラを纏い
体の形も変わっていく
「あの、ちょっとシャルヴィさん?なんかヤバイ気配がビンビンきてるんですけど」
首が動かせず壊れた校舎を凝視し続けるトオル
「はい。かなりヤバイですね。なんか怒らせたようです」
オシリスの周りの地面が盛り上がり、土の塊が幾つも浮かぶ
『その辺にしときなよ』
声が聞こえると同時にオシリスの魔法陣がグニャリと歪み、消え去る
その声は突如空から聞こえた
そこには
黒い翼を生やした青年が飛んでいた
オシリスの翼が元の様に戻り、周りの土の塊も地面に落ちる
黒い翼の青年がオシリスの元に降り立つ
「やぁ、オシリス。聖戦が始まっていないのに何をしてるのかな?」
ニッコリ笑って
チャラチャラした感じの口調で喋る。声が大きくシャルヴィとトオルにも聞こえる
「ただ様子見に来ただけだ。勝手に奴等が襲いかかってきただけだ」
「...適当な事言うなよ?雑魚」
声色が変わる
小動物を食い殺すようなドスの効いた声
「お前の動きは全部見てたんだよ。神ごときが俺たちの命令を無視して勝手に動き回っていいのかよ?あ?」
青年はオシリスを押すとオシリスは受け身もとらず地面に背中から倒れる
白目を剥いて気絶しているようだった。ビクビクと痙攣している
その姿を一瞥してシャルヴィの方を向く
「いやーウチの者がご迷惑を」
口調が戻り、顔もニコニコ貼り付けたような笑みを浮かべている
(今、何をした?)
ちょっと押しただけで神が気絶ってかなりヤバイ
「あーあー。そう身構えなくていいよ。そうだなぁ...せっかくだから自己紹介させてもらうね」
「僕の名前はアスモデウス。悪魔派閥の幹部だよ」
アスモデウス
七つの大罪の《色欲》を司る悪魔
何人もの神を従える悪魔派閥の幹部
その事実を知っただけで体が動かない
下手な事をすれば一瞬で命を摘まれる
圧倒的な力
神すら敵わない
シャルヴィは絶望する
「だから、何もする気は無いって。てゆーか出来ない。聖戦始まってないし。あと戻さなきゃいけないしね」
そう言ってパチンと指を鳴らす
「後ろ見てみてよ」
言われるがまま振り向くと
壊れていたはずの校舎が元通りになっていた
「それじゃぁ用も済んだから帰るね」
アスモデウスは黒い翼を大きく広げてオシリスを抱えてどこかへ飛んでいった