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何度も言うが俺は雷神トールじゃない!  作者: ビタミンA
第1章 お前今から雷神な
11/92

第6話 転校生

テストェエ

ーーーピピピピピピピピ


「う...」


ーーーピピピピピピピピピピ


「う...あ....」


ピピピピピピピピピピピピピピピピ


「うるせええええええ!!」


朝一番で目覚まし時計に喚く男子高校生


「あ、朝か」



目覚まし時計を止め

のそりとベットから這い出て

冷蔵庫へ向かう

朝食である唐揚げの冷凍食品と昨日余って冷凍しといたご飯を電子レンジにぶち込みタイマーをセット

その間に顔を洗いに洗面所へ這いながら移動

床に張り付いて、離れたくない!起き上がりたくない!と叫ぶ体を起こし顔を洗う

顔を洗い終わると同時に

電子レンジがビービーと鳴る

手早く朝食を済ませ

制服に着替えて

カバンを持ち部屋を出る


ここで思い出す


「あれ、俺って死んだんじゃなかったっけ?」


確か昨日レスクヴァの金属バットの錆になったんじゃ...


「まぁ、どうでもいいや」


部屋の鍵をかけて念入りに確かめて階段を降りる

トオルの部屋、201号室は二階にある

下まで降りて管理人さんに挨拶をして門へ向かう


門の外には姫裡と真広が待っていた


「トオルぅ!おっはよ〜」


「あぁ」


いつも通り幼馴染みは朝からうるさい


二人と一緒に学校へ向かう

これがトオルのいつも通りで

今までもこれから先も続くはずだったのだが


こんな平穏がこれで最後になるとはまだ誰も知らない






□■□教室□■□


「ねぇねぇトオル!昨日のニュース見た?すごかったよねー!」


「あ?見てねぇよ」


となりでキャピキャピと学校やら爆発やらわけのわからんことを喚く幼馴染みを軽くあしらい机に突っ伏す


(はぁー...)


通学途中に全てを思い出したトオルは朝からテンションが低かった


(俺がトールねぇ)


あまりにもいつも通りの朝で全部忘れてたのに全てを思い出した


(神の側近ごときに殺されかけたのに俺、死ぬんじゃねーかなー)


天使とか悪魔とか、いかにもヤバそうな連中といきなり戦えとか理不尽にも程がある

いくら武器を貰ったとしても

人間であることには変わりない

しかも仲間があれじゃ...


「絶対死ぬよな...」


机に突っ伏し一人呟く

ため息をつき起き上がろうとした瞬間


バシーンと背中をはたかれる


「どうしたよトオルー。朝から元気ないぞー?もっと元気だせやー!」


優しい幼馴染みはトオルの心配をしてくれる


「うるせぇよ。少し眠いだけだ」


トオルは親切心を払いのける


「ふっふっふ、そんなトオルに耳寄りな情報だよー!」


(今度は一体何を言い出すかな)


「今日ね、うちのクラスに転校生が来るんだってよ!二人も!」


それを聞いて三秒と経たずに

トオルは一つの結論に辿り着く


(なんだ、ディアナとアヌビスか)


どこかの誰かさんよ

あなた方もわかるだろう

これはあれだ

朝、可愛い女子とぶつかって少し言い合いになって学校に行って転校生がきますーとかなってそいつが朝ぶつかった可愛い子で

「あ!なんであんたがここにいんのよ!」「ハァ?お前こそなんで!」

とかアホらしいラブコメチックな展開と同じ原理だよ

昨日奴らと会って口論して次の日転校生とかベタすぎるだろアホか丸わかりだ

テンプレなラブコメなんて

この俺がそんなアホな事すると思ったら大間違いだぞ

フラグはへし折っとかないとな

こっちが理解しとけば問題はない

何か言ってきたら無視すればいい

そうすればフラグは回収されないはずだよ

きっとな



あ?

他の神はどうかって?


アフロディテは大人っぽいから高校は無理だろう

シヴァは幼稚園か、良くても小学生だな


ならおのずと答えは出てくる

さすが俺、テンションは低くても頭は冴えてる


「ちょっとトオル、何ニヤついてんのよ。まだニヤつくのははやいでしょ!」


「はやいってなにが?」


「その転校生二人とも女の子なんだよ!はいニヤけて!」


(なん...だと!?アヌビスはどうした!まさかあいつ女...いやそれはない。それじゃぁ知らない普通の転校生か?)


「なんにせよあのツンツン女が来ないならいいやー」


「何の話?」


「気にすんな」


「気になるなー」



「はい。全員席につけー」


先生が来て全員席につくのが

いつも通りなのだが


いつもと先生が違う

その先生は漆黒の白衣を纏い

グラサンをかけて頭にはなんと

クワガタの角が二本、天に向かって生えていた


「どうしたお前ら。席につけよ」


全員クワガタ先生を見つめて静止している

トオルも同じだった

机に肘をついて目を見開き

その謎のクワガタを見る


「あ、俺は持月(もちつき) 慎太郎(しんたろう)。最近飛び入りで来た新任教師ってところだ。今回はお前らの担任が出張で朝からいないから俺が任されたわけ」


全員ここに来た理由には納得し席につくが外見には理解しきれていないようだ


「野郎共に朗報だぞ。このクラスに二人、女子の転校生が来る」


その言葉を聞き歓喜する男子生徒


「んじゃ、入って来てー」


ドアに向かって大きめの声で呼びかける

それに呼応するようにガラリとドアが開く


ラブコメ展開は嫌いだが

ラブコメの神様はこういう時

かなり可愛い子を召喚するものだ

一人は可愛くもう一人は美人!

そう相場は決まっているのだよ



ん?なんでテンションが高くなってるかって?

俺も一応、恋愛は高校の内にしておきたい

ごくごく普通のな

だがしかし、もう根暗のイメージを拭う事は出来ない

ならば!

何も知らない転校生はどうだろうか!

顔も中々なこの俺の事くらい意識してくれるのではないだろうか?

しかも転入生は可愛いと決まってるのだしな


少し暴走しかけているトオルであった



はたして髪の色は!長さは!顔は!身長は!胸は!一体どうなのか!と期待に胸筋を膨らませ、ガヤガヤと騒ぎ立てる男子


そして運命の時が来る



フワリと風になびく金髪のロングヘアー

美の神アフロディテも裸足で逃げ出す凛と整った美しい顔つき

スラリと白く伸びる長い手脚

歩みを進める度に揺れる胸!


あまりの美しさに言葉を失う男子共は自然と視線が顔から胸へシフトチェンジしていた


一方その時

トオルは絶望していた

(無理です無理無理。あんな美人が来るとは聞いてないよ!)


「はじめまして。四季崎(しきざき) 琴音(ことね)と申します。これからよろしくお願いしますね」


透き通っているがしっかりと芯のある美しい声に美しい名前

そして皆に微笑むその笑顔はもはや女神!

全世界の女はこの人には勝てない!

そう確信が持てるほどに美しかった


(笑顔......グフゥ...やっぱり俺には無理)


やはり根暗は治らない

再び机に突っ伏し呻き声をあげる










ーーーー刹那


教室の空気が一瞬で変わった

周りを見らずともトオルは背中で確かに感じた


(男子共の歓喜が止まった!?一体どういう...)


バッと顔を上げると

そこには






見覚えのあるオレンジのショートヘアーに見覚えのある顔

見覚えのある残念な胸とスタイル

そう、美しき四季崎さんともう一人の転校生とは


「はじめまして!ローマから来ました、ディアナといいます」


ローマ神話の神【ディアナ】であった



「.......」


「ちょっとトオル?どした?顔色悪いぞ?っていうか白目剥いてんじゃん」


隣に座る姫裡はトオルの顔の前でひらひらと手を振る

しかし反応は無い


トオルは口を半開きにして白目を剥いている


(フ.....フェイントだ...と...)


四季崎さんともう一人は

黒髪のショートヘアーで

童顔でメガネをかけていて

決して大きいわけでもなく小さすぎるわけでもなく控えめな一方しっかりと存在感のある健康的な胸に

小さく儚く守ってやりたいと思えるような可憐な体つきで

性格は大人しくもの凄い天然な女の子....

というやけに胸に関して詳しい妄想を膨らませていた矢先にこの様である



ディアナがトオルを見つける

瞬間ディアナの顔が引きつる

何が言いたいかもトオルにはわかる


(なんでアンタがここにいんのよ、ってところか)


ディアナはまっすぐトオルを睨みつける


(こっちからしたら、はぁ?お前こそなんでここにいるんだよって言いたいね)


キッチリとフラグを拾い上げるトオル君だったのでした


さらに追い打ちをかけるように


「よし。お前ら仲良くしてやってくれよー。四季崎は本岡の隣の席に。ディアナは...小鳥遊の隣だな」


その瞬間

トオルは真っ白な灰になった

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