アヒル
醜いアヒルの子は最終的にきれいな白鳥になった。
つまりそれは最後には報われるって話。
醜いアヒルの子は幼少時代酷くいじめられる。
でも醜いアヒルの子は抵抗しない。醜いアヒルの子は黙って旅に出る。
それが正しいとは思えない。
私なら絶対最後にド派手に嫌がらせして逃げる。
醜いアヒルの子はただ逃げただけ。
なのに最後には報われた。
じゃあ、私は。
最後には報われるかな。
「よお……。」
クラスに来た彼は面白いぐらい緊張していた。そして、私も面白いぐらい緊張していた。
そのまま二人で歩き出す。見知った人に会ったらどうしよう。
落ち着け私。ここは見知った人ばかりだ。
そんなに噂になったりはしない…よね!多分。
「なあ…。」
「ん?」
「…なんか話してくれ…。」
話題提供してくれるんじゃなかったのか。
「昨日、珍しく男らしかったね。」
「…友達がいたから。」
「友達?」
「俺の携帯のぞかれて、彼女がいるのがばれて、一緒に帰ればってことになって、その場で誘ったんだ。」
「つまり、自分の意志ではなかったと?」
「違うッ!」
焦って目を見開いている彼は可愛い。でも、これで許すのは違う。逃げることになる。
私だって彼を責めるのは楽しくないんだ。
「じゃあ何。」
「……う……。」
「私はメールをもらって嬉しかったな。なのに、そのメールは友達に言われて仕方がなく打っただけだったのね。」
自分の攻め方が容赦ないのは自覚してる。
「違……。」
「じゃあ、私の返信も友達と見たのね。」
「……うん。」
彼がとっさのことに反応できない性格なのも知ってる。
「私が嫌がると思わなかった?」
「……ごめん。」
「うん、そうだね。辞めてほしい。」
「…ごめん!俺もうしない。絶対しない。でも本当に一緒に帰りたかったんだよ。会いたかったんだ。お前に会いたかったんだ。」
そしてちゃんと謝れる彼の性格が好き。
「私もごめん。帰ろ?」
「うん!」
「醜いアヒルの子」は大人にまで執拗にいじめられる。
大人は気づいてた。醜いアヒルの子が自分より美しくなること。
…なんてね。