ハト
通学路の途中に公園がある。そこには毎朝暇を持て余したおじいさんたちがやってきて、パンの耳をばらまく。群がるハト。ハト。ハト。どこを見てもハトしかいない。
そしてそのハトを蹴散らしながら強引に歩を進めていくのが私の日課。
別にハトを蹴るのが好きだとか変態な理由じゃなくて、私はハトが飛ぶさまを見るが好きなだけ。
隙あらば歩こうとするハトたちをせっついて、飛ばせる。
周りが飛ぶと飛び上がりちょっと進んだぐらいの所に着地するハトは、人間によく似てると思う。
そんなところが大好き。
新しい教室に入ったら、気の合う友達がハイテンションで近づいてきた。
「同じクラスになれたね!」
「やったね!一回一緒なりたかったの!」
喜ぶべきだよね。友達みたいにハイテンションになってもおかしくない。
しかしクラスのどこを見渡しても彼はいない。別に同じ学校にいるからすれ違ったりとかはあるんだろうけど、こっそり授業中に眺めるとかなんでもない事でしきりに話しかけるとかが出来なくなる。
きついなぁ。
「どうしたの?早く教室行こうよ!」
「…うん。」
席についても彼がいないのが気になる。
なんで私の目線の先には全然知らない男子がいるんだろう。私が見たいのは彼なのに。
そういえばこの時期はまだ彼のこと好きでもなんでもなかったから、見てなかったなぁ。自己紹介の記憶とか全然ない。もっと早く好きになっておけばよかった。もっと近くにいる間に好きになれば…。
「さっきからぼーっとしちゃってどうしたの?」
「いや、イケメンいないなぁって思ってさ。」
「はぁ!?あんた心配してやってんのに男チェックしてたの!」
彼氏のことを思ってました、って言うのもなんだしね。
「いいじゃん。1年間このクラスなんだよ。イケメンは重要」
私にとって重要なイケメンはここにいないけど?
「言えてる。彼氏欲しい!もう誰でもいいから付き合いたい!」
そういえばこの子に彼氏出来たって言ってないや。
今言ったら怒られそう。黙っとこう。
「そーだねぇ」
でも黙っていたら余計後でボコられそうだ…。今言うかな。
「実は私、」
「はい!ホームルーム始めるぞ!」
なんてタイミングのいい教師なんだろう。尊敬する。
友達は『?』みたいな顔をしながら振り当てられた席に着いた。
私は彼を見つめれない代わりに真面目に先生の話を聞くことにした。
これは「光」という作品の続編となっております。
別にこちらから読んでも大丈夫なように書こうと頑張ってますが、一応「光」から読んだほうが良いかもしれません。
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