作戦会議!
「さて、第一回マスター生存会議。どこで迎え撃つかだが、はっきり言って雑木林しかない。あそこなら、マスターが呼び出せるすべての戦力が十分に使える。地縛霊とか結構いたしな」
「質問。電車とかタクシーで遠くまで逃げるってのは?」
「相手がこちらより速い交通手段を持っていたらアウトだな」
「人目の絶えない場所にずっといるってのは?」
「難しいだろうぜ。人避けの術が使えれば、そんな場所はどこにも存在しない。たとえ都心部だろうと、無人の戦場にしてしまえるのが悪魔使いだ」
「質問。精神防壁って解除までどれくらいかかると思う?」
「最悪の場合、お前が死ぬまで解除されない。だが俺の力を通して揺さぶり続ければ、いずれ綻ぶ可能性はある。だから決して諦めずに説得を続ければ、チャンスはあるかもしれない」
「質問。僕って今、すごくピンチじゃない?」
「絶体絶命一歩手前だな。まだ絶命してないってのはいいことだぜ。生きている限りいつだって可能性は無限大だ」
「なんかいいこと言ってるっぽいが騙されないぞ!」
「で、どうする? 俺もできる限り方策は考えるが、正直分が悪いどころの話じゃないぞ」
「そうか。悪魔の意見は分かった。では、天使はどう思う?」
「詰んでますねえ。ダメ元で色仕掛けとかどうでしょうか」
「誰がやるんだよ!」
「ご主人様と悪魔様以外に誰がいますか!」
「駄目だ。わかってたけど、天使は全然役に立たない!」
「む! じゃあご主人様はなにか案があるんですか!? ていうか一番ヤバイのはご主人様であって、私たちはいわば巻き添えですよ!?」
「ああ、まあ、一応ないわけじゃあないんだけど。名付けてトモダチ作戦」
「うわぁ……なんだか嫌な予感しかしませんね。悪魔の作戦って感じがします。で、内容は?」
「悪魔の力で、今から友達を増やしまくって、友情バリヤーで相手の攻撃を防ぐ。できれば彼女の関係者がその中にいればいいんだけど、相手の名前も知らないのにそこまで期待はできないから、とりあえず今学校に残ってる人全員を友達にして、雑木林で待ち構えるってのはどうだろう」
「最悪です。ご主人様、人として間違ってます」
「悪魔使いとしては正しいが、その作戦はちょっと無理だな。さすがに今の俺の力じゃあ、そう多い人数は操れない。せいぜい二、三人だ。焼け石に水だな」
「それに、そんなことしたら絶対に説得に応じてくれなくなりますよ。あの人、なんか結構潔癖っていうか、良い人そうでしたもん」
「その良い人に殺されそうになってるのが今の僕だ」
「ああ、そりゃ自業自得だな。間違いない」
「で。悲観的な話はそろそろいいとして、彼女は言ったね。朝日を拝ませないとかなんとか。実際僕は、あれが彼女の精神防壁のタイムリミットなんじゃないかと楽観的予測をたてているんだけど、どう思う?」
「ああ、そうだといいな、位の話でしかないが、彼女の性格からしてみればあり得るな。となると、俺としても都合がいい。俺の力が最も強まるのが、明けの明星が登る頃だ。その時期に防壁が弱まってくれれば、説得は十分に可能だぜ」
「それまでどう生き延びるかは、その時にならないと正直どうにもなりませんねえ」
「ああ。でも、死ぬわけにはいかないんだ。なんたって僕は、友達を70億人も作らなきゃならないんだから」
「俺も、契約を果たせずに契約者を死なせたとあっちゃあ、他のモンに示しが付かないからな。なんとしてでもマスターを守りぬくぜ」
「マスターさえ無事なら、私たち霊格は何度でも呼び出せますから、壁として遠慮なく使ってくださいね。最も気を付けなければならないのは、当然ですがマスターが追い詰められることです。相手が最初から殺す気でくるなら、チェックメイトを返す手はありません」
「乙女のパンティを覗き見ただけじゃ止まらないってわけだね」
「俺も、マスターさえ無事なら契約を辿って何度でも召喚されることができる。とはいえ、霊格構成には魔力を使う。俺はあまり死なない方がいいだろう。自分で言うのも何だが、そこの天使なんかとはコストが桁違いだぜ」
「どうせ私は髪の毛一本くらいの依代で再生できますよーだ」
「ま、なんにせよ出来る準備はすべてやっておこう。時間稼ぎなら、天使が頑張ってくれればそこそこいいところまでいけるんじゃないかな? じゃ、行こうか」
「まずは何処へ行くんだ?」
「呉服店。僕と天使は見た目が一緒だから、同じ服装なら少しは騙せるかと思ってね」
「つまり囮とか特攻要員とかそういった感じですか。なんか泣けてきます」
「しっかり僕を守護してくれよ」
「あいあいさー」