修行完了 ……え、もう終わったの?
修行七日目。
健司は幾つかの低級霊を呼び出し、制御に苦労したり、魔力切れで疲労困憊になりながらも急ピッチで実力をつけていた。悪魔と守護天使の全面的協力があるとはいえ、ほとんどスパルタな修行にもともと根性のない健司は限界であった。
「神は六日で世界を作り、七日目で休息したという。僕らもそれに習うべきじゃないかな」
「いいんじゃないか? この一週間で結構な力を引き出せるようになったしな」
「あら意外です。悪魔様がそんな甘いことをおっしゃるなんて」
「悪魔はいつだって人間に甘いもんだぜ。ま、それはおいといても、マスターは才能あるぜ。そもそも俺を呼び出して使役してるってだけで才能は超一流なんだけどな」
「というか僕、食事以外の全時間をここで過ごしてるよね。夜もほとんど眠らず、っていうか寝ながらも修行だったよね。悪魔のどこが甘いっていうのかな」
「これが天使だったら死ぬまでやらせてるぜ。食事も睡眠も抜きでな」
「それは悪魔が悪魔でよかったというべきなのか?」
「そもそも俺を呼ばなければこんな事態にはならなかったが、俺を呼ばなければ願いを叶えるチャンスもなかったわけだ。どっちがよかったかはマスター次第だぜ?」
「ああ、そのとおりだな。僕は呼んでよかったと思ってるよ」
「そりゃよかった」
「ご主人様と悪魔様の仲がよろしいのは私としても大変結構なことなのですが、ところで私、いつまで全裸なんですかね」
「え、全裸じゃ駄目なの?」
「いやまあ、改めて聞かれると全裸でいいような気分になってくることなきにしもあらずなのですが。でもほら、人前に出るときとか不便ですよ?」
「人前に出すときは実体化を解除するし、そもそも服を着せた所で実体化を解除したら服が台無しになるじゃないか。それに目の保養にもなるし」
「じゃあみなさんも全裸になって私の目の保養になってくださいよ!」
「なんでだよ。嫌だよ寒い。風邪引くだろ」
「俺も全裸はパス。服って文明人の証拠って感じだよな。まあ俺のは魔力で作り出してるんだけど」
「私、原始人扱いですか!?」
「それより、悪魔の力が使えるようになったってんなら試しに行こうよ」
「お、ついにやるか。友達70億人計画の第一歩だな」
「いや、第二歩目さ。僕にはもう、悪魔と天使という友達がいるからね」
健司は悪魔以外の顕界させていた霊体をすべて解除する。今まで圧迫されていた霊力の回路が一気にクリアされ、そこに悪魔の力が流れこむ。
膨大な力だ。そして、それでもまだ、悪魔の持つ本来の力と比べれば、大海から汲み出したコップ一杯分にすぎないのだった。
「じゃあ、学校に行ってみようか」
彼らはまだ、キスティが学校にいることを知らない。