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彼の修行


 修行一日目。

 健司は悪魔を召喚した雑木林に再び訪れていた。


「なあ悪魔。どうやったら悪魔を呼べるんだ?」

「おいおい、俺を呼んだ奴がなにいってやがる。だが、そうだな。とりあえずお前の守護天使でも呼んでみるか。髪の毛を一本よこせ」

「ほらよ。で、次は?」

「あらほらさっさーってな」


 悪魔は、受け取った髪を無造作に放る。

 次の瞬間、二人の目の前には一対の翼を生やした全裸の女が降臨していた。


「おい! 全裸だぞ全裸! 悪魔すげえ、いや悪魔さんマジありがてえ!」


「落ち着け。そいつの顔をよく見てみな。お前と同じ顔してるだろ。いうなりゃ自分自身の裸見て興奮してるようなもんだ」


「あ、ほんとだ。いやでもちょっと女っぽいしやっぱり女の子だよ。僕に姉か妹でもいたらこんな感じなのかな。ていうか全裸なんだけどこれ大丈夫? 僕たち今、人に見られたら逮捕されない?」

「そうなったら俺が誤魔化す。それくらいはできるさ。で、守護天使さんよ、あんた喋れるかい?」


「……はい。貴方様のお声を聞けて幸せでございます」


 鈴の音を転がしたような綺麗な声だ。

 悪魔の男臭いダミ声とは大きく違う、と健司は思った。


「よせよ。今の俺にはたいした力もない。マスターの守護してるあんたの方が今はむしろ力があるくらいだ」

「じゃあ悪魔、脱げ。その裸体を見せろ。たくましい男根してんだろ、ああん?」

「どういった変り身の速さだよ!?」


「だって、理不尽じゃあないですか。私だけ全裸ですよ。まるで私だけが変態みたいじゃないですか」


 守護天使は、自分が全裸であるというよりも、全員が全裸でないことに不満を抱いているようだ。

 ふと、お互いが既知であるかのような悪魔と守護天使の会話に、健司は不信を抱いた。


「なんなの? 悪魔ってもしかして僕の守護天使と知り合いとかそういうの? 友達なの?」

「いや、俺が有名すぎるってだけだ。それに、俺とマスターは魔的に繋がっていて、マスターと守護天使は霊的に繋がっているからな。俺の正体は一目瞭然、生まれてからそう経ってない守護天使風情じゃあ格が違いすぎるってことさ」

「でも力はいまのところ私が上ですよ? 下手なこと言うとご主人様の守護って名目で殴り飛ばしますよ? もしくは裸にひんむきますよ?」

「ほんっとに変わり身早いなお前の守護天使。普通、守護天使ってのはもうちょっとマシな性格してるもんなんだけどな。そもそも守護する者の善性っていう立場だから、そんなクズみたいな奴はなかなか居ないんだが」


「それはもしかして僕が性根から腐れた人間のクズだと言っているのかな」

「直接言わなくてもわかってくれる頭の良さは好きだぜ」

「私もご主人様のことは大好きですよ。なんたって、自分自身ですから」


 にこやかな守護天使の笑顔。


「じゃあ、守護天使は僕の友達第二号だね。呼び方は天使でいいかな」

「ええ。お好きなように、ご主人様」


「よろしく、天使。それに、悪魔も」

「おうよ」

「はい」


 その後、何もしない時間が続いた。初日にこれ以上の召喚は身体に負担が大きいし、呼び出した霊的存在を二体顕界させておくこと自体が修行になるのだと悪魔は言った。


 暇になった健司たちはとりとめのない話をしていた。


「ご主人様は、例えば女の子と女の子が組んず解れついやらしいことをしていたら、興奮するでしょう」


「勿論さ!」


「それと同じで、私は男の人と男の人がいやらしいことをしていたら興奮いたします」


「なぜ悪魔と僕を見比べながらそれを言った!」


「いえいえ、他意はございませんが」


「先に言っておくが俺は嫌だぞ。確かに俺は悪魔だが、同性愛は俺の領分じゃないんだ。そっちが好きな奴は別にいてね」


「では近親姦は?」


「ああ、うん、それも俺じゃないなあ。やりたいなら勝手にやっててくれ。別に止めないから。ていうか近親ってあの御方が作ったのに後に禁止するってどういったことなんだろうなあ。禁止したのは人間だけど」


「流石に僕も自分と同じ顔の相手とはちょっと嫌だな」


「つまりセックスして時間を潰すのはダメってことでよろしいですか?」


「おいマスター。おまえの守護天使ほんとに天使かよ」

「おまえに付いていったダメ天使の数考えれば天使の大勢はダメな奴だってわかるだろう悪魔」

「いや、でも、守護天使はまた別なんだがなあ。人の誕生ごとに増えるし。やっぱマスターの性格が」


「おっと、ご主人様をバカにすることは間接的に私をバカにすることですから許せませんよ?」

「いや、直接おまえを馬鹿にしているんだが。マスターのほうが間接的だなこの場合」

「なおさら許せねえですよ」

「仕方ないじゃねえか事実なんだから。それより、暇ならトランプでもしようぜ」


 悪魔の何気ない一言に、健司と守護天使の二人は凍りついた。


「と、とらんぷ? いったいなんでしょうかその楽しげな響きは」


「……ソリティアかい? それともタワー? 結構好きだぜ、僕。ルール知らないけど」


「天使の方が、ちょっとばかり素直なのな。いやまあ、友達ゼロってのは本当だったんだなあ。でも、今は俺がいるだろう?」


「おおう、イケメンじゃ……ここにイケメン様がおるぞぉ!」

「流石は明けの……なんか通称がチャルメラおじさんみたいだなあなんて思っててすんませんでした!」


「馬鹿にしてんのか、それとも馬鹿なのかお前ら」

「馬鹿にしてなんて無いですよ! ただ、ご主人様なんて一人神経衰弱以外の遊び方知らないんですよ! もちろん私もです!」


「ルールなら教えてやるから、とりあえず座れよ」


「負けたら服脱ぎましょうよ服! 定番ですよね!」

「おまえもう全裸じゃねえか!」

「じゃあ股開けって言うんですか!?」

「言ってねえよ!?」


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