子供部屋
ブルーベルの青を道標に、カーラはその友達と初めて出会った。六歳の誕生日のことである。花の絨毯に身を横たえてすやすや眠る姿は儚げで、先月に大好きな祖母と永遠のお別れをしたカーラは、この幻想的な寝顔に安堵し、すっかり魅了され、決して手放したくはなかった。
朝露が白い光を湛えて、薄絹の羽をするりと滑っていく。本当に愛おしい友達。小さな寝息がおもむろに止み、やがて瞼が開く瞬間をカーラはじっと待っていた。
森の中の一軒家であることが災いしてか、レイモンド・マッキーンは妖精の仕業としか思えない超常的な出来事にたびたび悩まされてきた。例えばフォークが一本失せる程度ならかわいらしい悪戯と笑い飛ばせるが、朝目覚めると髭が青に染められていたり、茅葺屋根の一部が取り払われて代わりに羊毛がうずたかく積まれていたり、飼い犬が突然空中歩行したり、屋内に迷い込んだ蛾が暖炉で爆発したりと、ときに悪質な、悪戯と呼ぶには目に余る実害が彼の身に降りかかった。
六歳になる娘のことも、また気がかりである。娘のカーラがよく家に招待する友達の姿が、レイモンドの目には見えなかった。
恥ずかしがり屋で父親の陰に隠れ指を咥えていた子供が、この頃は町の若者が使うようなスラングを覚えて狂ったように繰り返す。友達と子供部屋に入ったきり、三日間籠城したこともあった。巌のように動かなくなった扉の向こう側で声を静め、次の作戦を話し合っているのか、もしかしたら父親の悪口でも言っているのかと、レイモンドは囁き声に肝を冷やした。
悪い遊びばかり吹き込む忌まわしい友達を追い払いたいと思えど、見えない敵に対抗する手段はない。止むを得ずカーラを椅子に縛りつけ自由を奪ったが、少しでも目を離せばたちまち縄が解かれ、機嫌を損ねた鶏のように家中を縦横に走り回った。
カーラの人格が変じてから半年ほど経ってのことである。
「ねぇ、パパ、もうすぐハロウィンでしょう。私ね、パパにとっておきの贈り物を考えてるのよ」カーラの笑顔は挑発的な色を帯びている。レイモンドはわずか六歳の娘の前途を案じ、天使よりも愛くるしい以前のカーラに戻ってほしいと神に祈らずにはいられなかった。
しかし娘の未来は、誰にでも起こり得る不運によってその存続を絶たれた。車に轢かれて絶命した彼女の顔には、いつまでも挑発の色が残り続けた。
子供部屋で遺品の整理が始まると、数奇な運命によって狂わされるまでのカーラの面影が、そこかしこに散らばっていた。クマのぬいぐるみ、お姫様の絵本、優しげなグランマの似顔絵。クローゼットの洋服は綺麗なグラデーションをつくるように並べられ、繊細な一面があった彼女の少しぎこちない笑顔が脳裏に蘇る。
「パパ、ねぇ、パパ」
娘の甘える声が反響し、子供部屋に宿ったその声は何年も彼を苦しめた。