プロポーズ後
一旦完結したお話で蛇足っぽいのですが、語り部を爽子に変更して少し続編を書いてみることにしました。
よろしければお付き合いください。
プロポーズまでしてくれるなんて、奇襲は私の予想もはるかに上回る戦果を挙げた。昔二人でお参りした東郷神社のご祭神、東郷平八郎元帥がバルチック艦隊を打ち破った対馬沖海戦並みの完全勝利だ。
それにしても、豪くんは、良く私を許してくれたものだ。
十年前のあの一夜のことは、豪くんの同意の上のこととは言い難い。特に、紗理奈はともかく、私とのことは準強姦罪と言われてもあながち間違いではない。しかも輪姦である。さらに、彼女になってもその事実を隠し続けた確信犯なのだ。
やはり、自分に自信がある人って、めったなことでは傷ついたり、他人に対して腹を立てたりしないものなのかな。私は、相手が豪くんであったことに心の底から感謝した。
さて、過去の過ちをすべてを不問にしてプロポーズしてくれた豪くんの寛大さのおかげで、ようやく私たち二人にもリア充の日々が訪れると思った矢先、ダメな私はまたやらかしてしまった。
豪クンとの仲が進展しなかった時期に、職場の先輩から「いい人がいるので紹介してあげる」と言われた。私は、豪くんに完全にフラれてしまった時の保険になれば思ってとその人と会った。
豪くんとは真逆の中背・小太りで、私はひそかに彼を「豚まん」さんと名付けた。正直全くときめかなかったけど、話してみるといい人っぽいので、その後誘われるままにデートを繰り返した。
これがとことん裏目に出てしまった。
豪くんとは違ってデートでは指一本私に触れなかった彼だが、いたく私を気に入ってくれたようで、豪くんのプロポーズと時を前後して、結婚を前提にお付き合いをということになってしまった。
二股をかけていたことは伏せて「断りたい」と先輩に相談すると、「私は紹介しただけ。大人同士なのだから自分で解決して」と言われてしまった。まあ、それも当然だろう。
「好きな人がいるので、ごめんなさい」
仕方なく当人に電話で謝ると、豚まんさんは態度を豹変させた。
「嘘だ。そんなこと、今まで一度も聞いていない。当人に会わないと信用できない」
時が解決するかもとしばし放置したが、これがまた逆効果だった。
「そいつに会わせろ」のメールが頻繁に来るようになった。さらに放置すると行為は徐々にエスカレート、このままだとより悪質なストーカーに変貌する可能性さえ見せ始めた。
職場の先輩の紹介の上に、今回の件はどう考えても私に落ち度があるので、警察に通報するわけにもいかない。
そこへもってきて、予定日になっても生理が来ない。思い当たることは、ある。あの新宿の夜だ。ホテルに備え付けの避妊具が二つしかなくて、三回目の時に私が思いっきり胴締めをしてしまったので、彼、外に出せなかったのだ。
二股トラブルと妊娠疑惑のダブルパンチである。
「妊娠したかも」と母親に相談したところ、母も大いに動揺しそれをそのまま父に伝えてしまった。
父は、父親としてしごく当然と思われる反応をした。
「一度、その彼をうちに連れてきなさい」
私は、泣きながら豪くんに電話を架けた。
「心配いらない。僕がすべて何とかするから。ちょうど、爽子のご両親にも挨拶に伺わなきゃと思ってたところだし」
こともなげにそう言って私を安心させてくれた豪くんは、颯爽としたスーツ姿でその週末に私の住む町に現れた。




