真夏のから騒ぎ2
時間の経過とともに、会話はさらにエスカレートしていった。
「一晩の回数の最高記録」だの、「初対面で顔射した最低男」だの、とんでもない体験談が猿じいを中心に次々と披露され、僕たちの合コンにおける下ネタの限界という概念は吹き飛び、宴は大いに盛り上がった。
二時間くらいたった時、猫娘が「しーっ」と唇に指をたてた。かすかに壁の向こう側からくぐもった声が聞こえる。どうやら隣の部屋のカップルがベッドインしたようだ。
しばし皆で聞き耳を立てていると、今度は我々の部屋の中でなまめかしい吐息が聞こえた。
ベッドに腰かけた一八三センチの御堂の膝の上に、小柄な猫娘が手乗りの小動物っぽく跨がり、御堂の手が彼女のTシャツの下に侵入していた。隣の部屋の声に刺激され、こちらもどうやら戦闘態勢に入ったようだ。
これを潮に、「私たちも部屋へ行こうか」と猿じいから声がかかった。僕は緊張しつつもうなずいて立ち上がった。
ふと気が付くと、小幡が部屋にいない。
三人で室内を捜索すると、彼はトイレで便器を抱えていた。宿のおいしいディナーをはじめ胃の内容物をすべて吐いてしまったようで、便器の中の大量の吐しゃ物の匂いがツンと鼻を衝いた。
濡れタオルで口の周りに付着したゲロをぬぐい、すでに半裸になってベッドで睦み合う御堂と猫姫を横目に、三人で小幡を担いでエキストラベッドに寝かせた。この様子では今夜は戦闘不能、おそらく朝まで目を覚まさないだろう。
「牛姫、あんたもこっちの部屋においでよ」
猿じいの一言で、僕たちは三人で女性の部屋へ移動した。
「男一人に女性二人が同室、ということは、もしかして、僕の筆おろしは延期?」と思ったら、全然そうはならなかった。
部屋に入るなり、猿じいは、Tシャツとトランクスを脱ぎ捨て、花柄の下着姿になった。
「豪くん、こっちを見て」
語尾にハートマークがつくような声で僕を呼んだ猿じいは、ブラのホックを外すと、左手でその美乳を隠しながらベッドに放り投げた。小麦色に焼けた肌の下の、水着で隠されていた白い肌がなんとも夏らしくなまめかしい。
なんと猿じいはストリップ・ショーもどきのことを始めた。右手で下着をゆっくりとずり下げていく。
唖然としつつも目を離せない僕に、彼女の命令が飛んだ。
「豪くんも一緒に脱いで」
大いにとまどいつつも、覚悟を決めて、彼女に言われるままに、彼女と同時に最後の一枚を足から抜きとった。
その刹那、彼女が抱き着いてきて、僕はそのままベッドに押し倒されてしまった。
彼女は、僕を仰向けに組み敷くと、馬乗りになった。生まれて初めてのナマの女性の下半身の感触に、僕の分身はたまらずに鎌首をもたげた。
自分のバッグからコンドームを取り出すと、猿じいは慣れた手つきでそれを僕のものに装着し、いきなりそのまま自分の腰を沈めてきた。
何とも言えない初めての感触が僕のものを包み込んだ。
やがて猿じいが激しく僕の上で身体を弾ませると、一分もかからずに、僕はあえなく暴発した。我ながら実にあっけない、感慨も何もない童貞喪失劇だった。
しかしこれで今夜はゲームオーバー、ということになるはずもない。猿じいは、これまた慣れた手つきでゴムを外すと縛ってゴミ箱に抛り投げ、硬度を失いかけた僕のものを口に含んだ。
熟練の舌技にほどなく元気を取り戻した僕に、猿じいは再びゴムを装着すると、牛姫とハイタッチをかわした。
「やったぜ!」のハイタッチではない、これは選手交代のタッチだった。