泊まり先は
「おぉい、そろそろ話終わったげて、ブランシュ。天、そろそろキャパオーバーしそう」
「あっ、ごめんなさい天さん!えっと、つまり……。ぼく、天さんにずっと憧れてたんです!良かったら、ぼくとお友達になってください!」
真剣な目で天を見つめるブランシュ。何とか情報を処理しきった天は、小さく頷いた。
「ええ、勿論。それにしても、あの子がブランシュさんでしたか」
にこにこと笑い合う二人を見て、年上女子ふたりは顔を見合わせて、こちらも笑顔になった。
「そういや、花の精霊って何やるの?花乙女とおんなじ?」
まだ大はしゃぎしているブランシュに問いかけるリア。しかし、ブランシュは全く聞いていない。
そんな弟の様子を見て、ミッシェルが助け船を出した。
「ええ、花乙女と役割は一緒よ。名前が変わっただけ」
「と言うことは、ブランシュさんは創世劇と花舞をやるんですか。観たことがありますが、かなり大変そうですね」
「うん、大変。だけど、とっても楽しいよ!ぼく頑張るから、絶対観に来てね」
ブランシュは天とリアの手を交互にとって、その手にチケットを握らせた。
「よし、それじゃあ私は宿取りに行くけど」
「え、うちに泊まってよ。どうせもう宿なんていっぱいに決まってるんだから」
どうやらふたりを泊まらせる気まんまんだったミッシェル。もう部屋も準備して貰ってるのに、と口を尖らせる。
「そうだよ、泊まっていって!ぼく、友達と一緒にいたい!」
「別にブランシュ、友達他にいっぱいいるでしょ」
「いないよ、ブランシュ・キティの友達はリアと天さんだけ!だからね、お願い!お金も浮くし、良いでしょ?」
胸の前で手を組み、捨てられた子犬を思い出させるような瞳でブランシュとミッシェルが見つめてくる。
「そ・れ・に!うちに泊まれば、明日の晴れ衣装だって用意してあげる!リアの分はもっと可愛くするし、天くんの分は用意するから、ね?ね!?」
「あーっもう、しつこい!泊まれば良いんでしょ、泊まれば!天もそれで良い?」
リアの勢いに押されて天が頷くと、キティ姉弟の顔が輝いた。
「本当!?やったあ、姉さんもアンナも、きっと喜ぶわ!それじゃ、五時頃になったら案内するから、ここに戻って来てね。それまでは自由でいいから!」
「あ、分かってると思うけど、まだぼくのこと誰にも言わないでね!当日まで、家族以外には花の精霊役は誰か内緒なんだから!」
「え?……分かりました。秘密にしておきます」
「うん、よろしく~」
「……リアさん」
「うん、分かってる。あのおっさん、何者なんだろう……。もしかして、祭りの関係者なのかな」
「だとしても、明らかに部外者の私達に情報を出してしまうのはどうかと……。ミッシェルさん経由は仕方無いとしても」
「そうだねぇ。後であのおっさんの素性調べないと」
「そこまでやります?」
「ごめん、職業病かも。今はいらないよね。それじゃ、気持ち切り替えて買い物でもしよっか?」
「……そうですね、行きましょうか」